木蔦(キヅタ)
2019-12-03 20:54:47
5055文字
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酒に弱い長義【ちょぎくに】


まんばは長義が好き。
ある日徳美組から長義が酒に弱いこと、酔うと本音をベラベラ喋ることを聞かされる。ちょうどタイミングよく本丸の忘年会が開かれる。まんばは長義が自分のことをどう思ってるのか知りたくて、ほろ酔いくらいの時を見計らい、長義に近づく。本当に自分のことを嫌ってるのか、それとも足利で面倒を見てくれたまんばへの優しい気持ちが残ってるのか

ほろ酔いの長義は隣に来たのが誰なのかわかってないらしい。ただまだ理性はあるのか口数は多くない。とりあえずお酌する。長義は勧められるがまま飲み干す。
長義に問いかける。
「山姥切国広のことだけど
「偽物くん?」
「お前はどう思ってるんだ?」
「ん〜………
そのまま黙り込んでしまう。まだ酔いが足らないらしい。もう少し酔わせれば喋り始めるだろうか。まんばは酒を足す。長義はまた飲み干した。
「長義、国広のことなんだが
「ん〜
喋り始める気配はない。さらに酒を注ぐ。長義は飲み干してまんばに目を向ける。じっと見つめられる。まるで先程問いかけた事の意図を探ってるようだ。
「ほら、まだ酒はあるから」
注ぐとまた一気に飲み干す。弱いと聞いていたが、まだ足らないんだろうか?
すると長義がまんばの肩にもたれかかってきた。酔ってる、これはイケる!とまんばは勝利を確信する。
「長義、山姥切く……
「き……
「き?」
「きもちわるい……
「え!」
せ、洗面器!!とまんばが叫んだ。




(視点変わります)

長義は忘年会で酒をセーブしていた。酔いやすい体質なのはわかってる。酔うと多弁になるようで徳美組に散々からかわれた。
しかし途中で何度も酒を注がれ、ついつい飲み過ぎてしまった。その後のことはよく覚えていない。
目を覚ますと目の前にキラキラしたものが見えた。

光り輝く金髪の髪、真っ白な肌、長い睫毛、整った顔。瞳は閉じられてその色はわからない。
「てんしさま?」
あまりに幻想的で手を伸ばして髪に触れる。サラサラとした心地のいい感触。
頭の下に柔らかい感触がある。天使様に膝枕されているらしい。
次に頬に触れる。暖かい。
「きれいだな。おれのだいじなこににてる」
感触を確かめるように唇、首、胸、膝に触れ、再び襲ってきた眠気に抗うことなく意識を手放した。

「ん〝ん〝……

変な声が聞こえた気がした。





(視点変わります)

あの後大変だった。長義はまあ、その、いろいろあり、結局倒れた。自分の責任でもあるので介抱していたのだが、ついつい自分も寝てしまった。
恐らくその後みんなは酔い潰れてその辺に転がったり、各部屋に戻ったのだろう。静かになっていた。
まんばが起きたキッカケは長義がまんばに触れた事だ。長義がまんばの頬、唇、首、胸、足に触れた感触で起きた。しかし目を閉じたまま狸寝入りをしていた。
「おれのだいじなこににてる」
(大事な子って誰だー!!!///)
自分に似た顔なんて自分か長義しか心当たりがなくて、思わず変な声が出た。
翌朝、長義がみんなに話してる。
「俺は見たんだ!酔って寝てしまった俺を美しい女性が介抱していた!さながら海で溺れた王子を助けた人魚姫のようだった!」
天使から人魚姫に変わっていた。
みんなまんばがお世話していたのを知ってるからチラチラ見てる。まんばは居たたまれなくて顔を伏せる。
次の日はシンデレラに変わっていた。魔法が解けていなくなってしまった灰被りを探し出すんだと言っていた。
さらに次の日は妖精になっていた。普通の人には見えない妖精を探し出すのは困難だと捜査が難航している事を話していた。

みんな全て知っていてニヤニヤまんばと長義のことを見てる。
まんばは頭を抱えた。長義からどう思われてるか知りたかっただけなのに、なんでこんなことになってるんだ。すれ違いざまにみんなに「よ!灰被り!」とか「人魚姫!向こうで王子様が探してたぜ!」とかからかわれる。


「俺の女神は、どこにいるんだ……

今日は女神になっていた。ある意味一番近いかもしれない。付喪神だから。
「おいおい、長義、灯台下暗しかもしれないぜ?」
おいやめろ。
「どういうことだ?」
「お前の女神は探して見つかるもんじゃなく、すぐそばにいるかもしれないってことだ!」
変なこと吹き込むな。
「そうか、もしかして……!」
長義が何かに気づいたような顔つきになる。
「女神は守護霊のように俺に憑いている!?」
どうしてそうなった。
「俺の事を側で見守っていてくれたんだな!」
まんばはこっそり聞いていて脱力する。明後日の方向へ向かってる。
「でも付喪神や人間じゃないならいいんだ」
付喪神や人間だと問題あるのか、と疑問に思う。

そんな時新年会が本丸で行われる。年が明けて目出度い、とおせち料理や雑煮、さらに寿司や天ぷらなど豪華な和食まで出される。もちろん酒も振舞われて、酒好きは料理もそこそこに一杯やってる。
まんばは忘年会で痛い目にあったので(いまだにからかわれる)長義には近づかず、普段有り付けない料理に舌鼓を打っていた。そこに長義が現れる。まんばの横はちょうど空いていて(いたが酒飲みに呼ばれて捕まってる)そこにどかっと座る。まんばは姿を見た瞬間、ひぇと驚き、緊張する。

長義はまんばをじぃ……と見つめる。
「綺麗だな」
「は!?」
「さすが俺の写しだ、美しい。見た目ももちろんだが、凛とした雰囲気もあるのに愛らしさもある。自分を曲げない強気な性格がある反面、すぐに自信をなくすのも庇護欲をそそられる。落ち込んでたら慰めたい。嗚呼、俺はなんて罪深いんだ。こんなにかわいい写しがいるだなんて」
「お、おい、どうしたんだ?」
訝しげに顔を覗き込むが、逆にずいと顔を近づけられる。腕も引かれて逃げられない。
「透き通った瞳も綺麗だ。その目を見つめていると引き込まれる。ずっと見ていたい」
うっとりとした顔で長義がどんどん近づいてくる。
「何言ってるんだ!さっきからおかしいぞ!?」
距離を取ろうと長義の腕を引き剥がそうとするがびくともしない。
「ぐぬぬ!なんでこんな馬鹿力!」
「嫌がる素振りもかわいいよ、まるで子猫がじゃれついてるかのようだ」
「誰が子猫だ」
「このまま攫ってしまいたいよ」
「身代金でも要求する気か」
「出た!長義さんの絡み酒!」
「はぁ!?」
「それ顔には出てないけど酔ってますよ」
鯰尾が笑いながら教えてくれる。笑っている場合ではないんだが??
どうやら顔はまったく赤くないが、酔ってるらしい。
「俺がだいっっっっじに育てるつもりだったのに、まさか離れ離れになるなんて」
本人は昔話に花を咲かせている。さっきからキャラ違いすぎないか。多弁になるだけじゃなかったのか。
「かわいいかわいい写しをどこにもやるつもりはなかったのに、物の立場はどうしようもないな。しかし!今は人の身を得たのだから何でもできるぞ!さあ部屋で飲み直すか!」
「いや遠慮しておく!」
「かわい。かわい。これ俺の」
なぜかぎゅうぎゅう抱きしめられる。まんばは目を白黒させてる。周りは囃し立てる。
「お、おれのことがきらいなんだろ!なんでこんなことするんだ!」
「きらいだなんて一言も言ってないよ?ただ号の件が許せないだけだ。お前には勘違いをさせてしまったかな?」
「いやぁ、長義さん、飲むと話が長いんですよね〜、写し自慢の」
「はぁ!?」
「だから僕たち、まんばさんの事が耳タコですよ」
うんうんと南泉も頷いてる。まんばのせいじゃないが、申し訳なくなってくる。
「なんだ!やらないぞ!」
「いりませんよ」
「なんだと!こいつのどこが好かないというんだ!」
面倒くさい。非常に面倒くさい。まんばはぎゅぅと抱かれた腕に力を込められる。
「まんばさんの事は僕たちも大好きですが、長義さんのなんでしょう?僕達がもらってもいいんですか?」
「だめだ!」
「ほら!」
「これは俺のだ」
鯰尾、長義の扱いに慣れてる。ぎゅぅぎゅぅされてる。
「もうねる」
「は!?自由すぎないか!?」
「ねむい」
「待て待てここで寝るな!風邪引く!」
「てんしさまがついてるから大丈夫だ」
「天使様(笑)」
「笑うなァァ!!///」
前はみんな寝こけてたけど、今は大注目を浴びてるし、こんなところで膝枕とか恥ずかしすぎてできないから、長義を自室に向かわせようとする。
「やだ、てんしさまも一緒じゃないと、いかない。」
「ほら、俺も一緒に行ってやるから」
「俺のくにひろは?」

<<<突然の言葉の暴力>>>

確かにさっきまで「俺の」発言はしていたが、いきなりの国広呼びに戸惑う。
「お、俺も行くから……///」
「ならいこうかな」
「そら立て」
周りはニヤニヤして二人を見守ってる。
ほろ酔いのはずだが、足元がおぼつかなくて、何度かまんばが支えた。支えるとくっつくのが嬉しいみたいで、にこーと微笑まれる。いつもの小憎たらしい笑みではない。
部屋までたどり着き、布団を敷いてあげる。本人をそこに寝かせて、さあ戻ろうと腰を上げると、長義が悲しげな顔で見上げてくる。
「てんしさま、どこかいくのか?」
「いや、えーと
鯰尾みたいに上手い言葉が出てこない。
「てんしさま、俺を見捨てるのか?」
「見捨てるとか人聞きが悪い
「俺のくにひろはどこだ?」
「え」
「そういえば俺のくにひろがいない!」
「ええっと
「てんしさま、しってるか?一緒に部屋に来たはずなのにいない」
まんばは困り果てる。そして思いつく。
「国広は今、厨に水を取りに行ってる!遅いから俺が見てくるな!」
そして部屋から出ることに成功する。
「大変だった、なんなんだ
とりあえずあれだけ眠そうにしてたし、布団に入れたからそのうち待ち疲れて寝るだろ、と思う。しかし長義は追いかけてきた。
「よかった、いた!偽物くーん!」
「げ」
「どこ行ってたの、迷子になっちゃったの?お前は俺がいないとだめだね?」
迷子になるわけないだろ、住み慣れた本丸だぞ、と思う。しかし呼び名が偽物くんに戻ってるから正気に戻ったのでは、と思う。しかし
「さあ俺の部屋に行こ。俺のくにひろ」
orz

そして長義の部屋に連れてこられ、結局布団の中に引きずり込まれる。何をするでもなく、抱き込まれてスヤァされる。まんばはたじたじ。ただ酒で体温が高くなった長義に抱きしめられてると自分もうとうとしてきて、まんばも寝てしまう。

「あ!」
朝、長義の声で目がさめる。まんばは「しまった、長義より早く起きて抜け出すべきだった!」と気づくがもう遅い。
「なんで、偽物くんがここに……?」
「いやその、昨日
「まさか
一年間良い子にしてた俺への遅れてきたクリスマスプレゼント?」
「は?」
「昨日天使様を見た気がするが、あれは実はサンタだった?俺の欲しいものを届けに来てくれた?」
「待て待て……どういう解釈だ……
「偽物くんには後でちゃんと説明してあげるから黙ってて」
「なんでお前が真実を知ってるていなんだ。お前が酔いつぶれてたんだろ!」
「俺が酔ってる間にサンタが?」
「都合がいいところだけ抜粋するな!」
長義はしばらく黙り込む。
「俺の本意ではないけどね、サンタからのプレゼントだから仕方なくもらってやるよ。俺が望んだわけじゃないんだけどね、ほらサンタの厚意を無下にするわけにはいかないからね!」
「建前並べてるが、全部バレてるからな!?」
「持ち主が主から俺に変わったから、お前の事は俺が管理するよ」
「何さりげなく俺の自由奪おうとしてるんだ!俺は主の刀だぞ!?」
「極でもないお前が何言ってるんだ。」
「メタ発言!」


この後長義が朝ご飯の場で、「偽物くんは俺の刀になったから」発言をし、みんなが「あ、昨日お楽しみだったんですね(察し)」「昨夜送り届けて帰ってこなかったし」って勘違いし、長義とまんばは恋刀扱いになりました。

ちょぎくにハピエンー!お付き合いありがとうございました!お疲れ様でした!


■どうでもいい設定
・付喪神や人間の場合困ると思ってたのは、「自分に好意を向けてもらってるようだけど、自分には大事な写しがいるから、振らないといけないなぁ」と思ってた。