木蔦(キヅタ)
2019-09-15 10:56:31
7301文字
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女性に恋してしまった長義の話【ちょぎくに】※ちょぎ→女審神者表現あり ※女体化注意


ちょぎくに
※女体化注意
※ちょぎ→女審神者表現あり注意
※男審神者(=長義の主)が出張ります。

長義はまんばに恋をしてたんだけど、こんなこといけない、写しなんかを好きになるべきじゃない、男同士だし、そもそも物だしって自分の想いを抑え付けてた。
そんなある日演練で見かけた審神者に一目惚れしてしまう。清楚な身なりで、お淑やかな仕草、女性らしい愛らしさで、長義は目が離せなくなる。小柄で華奢、髪はロングでふわふわしてる。目はぱっちりで頬はほんのり赤みがさしてる。
今までまんばのことばかり考えていて、他の女性になんか目も向けなかった。まさにドストライクだった。
不慣れな様子でキョロキョロと辺りを見渡していたので話しかけた。
「どうしたのかな?」
「ひっ」
女審神者は怯えた様子で後退る。
「い、いや、べつになんでもない……です
可愛らしく緊張気味の声で返事が返ってくる。驚かせてしまったらしい。
「すまない、急に話しかけたりして。困っている様子だったから気になってね。俺はここに何度も来てるし、道に迷ったのかなって思ってね」
「あ、ああ。心配いら……ありません。私も何度もこちらに来ていますので」
「じゃあどうかした?」
「いえ、少し人と待ち合わせというか……
女審神者は少し曖昧に答える。あまり言えないことなのかと思う。
「え!?あれ!?ひろちゃーん!何やってんの!」
「え!?ある……!えとえと、知り合いの審神者さん!」
「なんでそんなに説明口調なんだい?」
「へ!?いやその!」
「それに主、こちらの女性とは知り合いなの?」
「ああ、ひろちゃんは知り合いだよ。もう、探したんだから、こんな所で油売って」
「すま、ごめんなさい!」
「いいよ、ほらほら急ごう」
審神者がひろちゃんと呼ばれた女審神者を急かす。
「長義は演練に行って!もうすぐだろ?なんでこんなとこにいるの!」
「主こそ、自分の本丸の部隊に付いてなくていいのかい?それにその女性とどこへ行くのかな?」
「え、それはその」
「ひろちゃんは黙ってて。俺とこの子は政府から呼び出されてるの!演練はお前たち慣れてるだろ?俺が付いてなきゃいけない頼りなーい部隊に育てた覚えはない!さ、行って行って!」
そう言って審神者達はその場を去ってしまう。長義は腑に落ちない。しかし演練の時間がもうすぐなのも確かなので渋々自分の仲間達の元へ向かう。
さて、演練を始めよう、としたところで、長義は『ひろちゃん』と呼ばれた女審神者を人混みの中見かける。確か自分の主と共にいるはずなのに、なぜここに戻ってきたのか疑問に思う。さらに彼女は見知らぬ男に肩を抱かれていた。
「長義?ちょーぎ〜〜!」
ぼんやりしている長義を心配して仲間が話しかける。
「すまない、抜ける」
「へ?抜けるって!え!?ちょっと今からもう始まる!」
長義は彼女の向かった先に走っていく。

彼女はどんどん男と共に人気のない方に進んでいく。男が親しげな様子でベタベタ触る。彼女は少し困った様子だが拒否はしない。
(なんなんだ、一体どういう関係だ?何にしても彼女は嫌そうだ……
そして二人はある個室に入った。そこは政府管理下の施設で、研修セミナーなどで審神者が宿泊できるようになっている宿泊可能な部屋だった。
(そこに男女で入って行った……?まさか)
長義はドアにへばりつき、耳を済ます。よく聞き取れないが、微かな話し声と女性の嫌がる声が聞き取れた。
カッとなって本体を取り出し、ドアを斬る。

「そこで何をしてる!」

部屋に踏み込むとベッドで衣服の乱れた女性とそれに覆い被さる男性の姿があった。
「ちょ、長義!ま、待て!」
「貴様その人に何してる!答え次第ではタダでは済まさんぞ……!!」
「待て、これじゃ作戦が!」
男が長義を押し退け逃げようとする。それを柄で殴り、蹴り飛ばした。
すると突然自分の主がすっ飛んできた。ちなみに男はそのまま逃げ出した。
「ひぇぇぇ!長義なにしてるの!」
「そうだ、長義何してるんだ!!」
「は?」

実はある事件の犯人を追っていて、審神者に政府から協力依頼が来た。そこで怪しい男を絞るところまでは辿り着いたのだが、証拠がない。そこで囮として抜擢されたのが彼女だった。彼女が上手く自白させるか事件の未遂までいけば捕まえられるという算段だった。
「もう!長義は演練もサボって!」
「だって彼女が怪しげな男といたら心配するじゃないか!」
「その気持ちはわからなくもないけど!」
「そうだろ!?」
「とりあえず別件で検挙して今取調べ中だから良いけどさ〜!もうー俺達の努力を無にしてくれちゃってー💢」
「それは悪かったって!」
本丸に戻ってきて、審神者の執務室でこってり怒られていた。ちなみに彼女とは演練会場で別れた。
「と、ところで主、あの女性とは一体どういう関係なんだ?」
ずっと気になっていたことを聞く。ふたりは親しげな様子だった。
「ひろちゃんとはただの知り合いだよ」
「こ、恋人とか、好きな人とかじゃなく?」
「じゃないじゃない!」
長義の視界が急に晴れる。
「そうか!ところで彼女に恋人はいるのかな!?」
「えええ?そこまで考えてなかったけど、いないんじゃないかな??」
「『考えてなかった』?」
「いやいや!『聞いたことなかった!』」
「そっかいないのか」
長義は思わず顔がニヤついてしまう。自分はちゃんと女性を好きになれるんだなとか、もう好きだって気持ちを抑えなくていいんだなって、実感するとそわそわしていてもたってもいられない。
すぐに彼女に会いたいと思ってしまう。
「ところで主、彼女とはどうすればまた会えるのかな!?」
「あ、いや、あの子は今回の特例任務で審神者役として来てもらっただけだから、もう会えないよ。本当は審神者じゃないんだ」
「え!?」
「もう元のすが……元の世界に戻ったから、演練とか政府施設とかで会うこともない」
長義は審神者の手を握る。
「頼む主!俺はどーっしても!あの人に会いたいんだ!」
「え!?え!?なんで!?なんか問題でもあった?伝言なら俺伝えとくよ!」
「違う!俺が直接あの人に会いたいんだ!ここまで言えば主もわかるだろ!?」
審神者はようやく察して、えええ!と驚く。そしてすぐに「でもあの子」とか「そんなつもりじゃ」などと戸惑いの表情を見せる。
「あの人に恋してしまったんだ、主、もちろん協力してくれるよね?」
「え」
「してくれるよね??」
「は、はい
力押しで審神者に言質を取る。そこに近侍がやってくる。
「主、政府から例の件の書類を預かってきたぞ」
「あ、国広、ありがと〜!お使い頼んでごめんね」
「いやこれくらい」
長義はまんばを見て得意げになる。自分は他に好きな人ができたのだから、まんばにはもうときめいたり、胸を焦がしたりしない。もうまんばに振り回されることはない、と思う。
しかしまんばと目が合った瞬間、胸が高まる。まんばがキラキラ輝いてみえる。ドキドキするし顔も熱くなるので、悟られないようにするため顔を逸らした。
「ふん、偽物くんなんて初恋もまだのような顔して!」
「??? 一体何の話だ?」
「いや何でもないよ!」
「俺は恋をしてしまったんだ、ある女性に!!」
「あわわわわ
「女性?」
「今日会ったあの可憐で清楚な女性に!」
「今日会った
「ああああ
なんだかまんばの様子がおかしい。ショックを受けているようだ。本歌に好きな人が出来てそんなに悲しいか!と長義はなんだか気が大きくなる。
「そ、そんな女性やめておけ!人間だろ!人間と付喪神じゃ隔たりがある!」
「お前にそんなこと言われる筋合いはないね」
「それにそんな価値もないだろ!」
人間だからと彼女を馬鹿にされ、むっとなる。
「偽物くん、人を貶すのもいい加減にしないか。失礼だぞ」
「いやその
「その辺にしとこう?ふたりとも、喧嘩しないで。それにもうあの子とは会えないから、長義ももう諦めて。国広もこの事は忘れて。ね。」
長義は審神者の仲裁で渋々引き下がる。まんばも不服そうだが黙る。
しかし長義はどうしても女性のことが忘れられない。正確にはその女性の事を考えてない時は、まんばのことを考えてしまうので、それを振り切るように彼女の事を思い出す。華奢な肩や大きな膨らみの胸、翠色の澄んだ瞳に、サラサラフワフワした金色の長い髪、長義よりも頭一つ分小さな身長
見た目は長義の好みで、性格はわからないが、あの数分でのやり取りから察するに健気で、真面目で、純粋なのだろうと感じた。まるで幻想のような不確かさで、守ってあげたくなるそんな印象だった。

やはり自分には彼女しかいない、そう考えた長義はしつこく審神者に詰め寄る。

「あ〜〜!もうわかったってば!一回だけだよ!?その後はぜぇぇぇったいダメだからね!」
「ありがとう主!」
あまりにしつこいので審神者が折れた。与えられたチャンスは一回。だからその一回で彼女に好いてもらわねばならない。彼女の方から望んでもらえれば二度三度会う事ができる可能性がある。
「今はえんせ……お出かけしてるみたいだから、ひろちゃんがおうちに帰ってくるまで待って!」
「別にそんなに急がないよ、女性を急かすなんて失礼じゃないか」

明日には来るということで気分良く待つ。すると早朝、審神者の執務室から声が聞こえた。

「そんな勝手に約束……!」
「悪かったって!ただすっごく会いたいみたいだからさ、これが最後だから!ほら盛大に振ってもらえればいいからさ」
「ふ……!?俺にそんなこと言えと!?絶対傷つくだろ!」
「いや付き合えませんって言うだけだよ!そこまでこっ酷く言わなくていいからさ!」
振られるのか俺は。
長義はそう思う。しかしそれならそれで考えがある。



念願叶って女性と引き合わされる。
しかし焦って想いは告げない。むしろ告げてしまったら断られるから、とりあえず今を楽しむことにする。
「えっと、長義………さん、お、私もう……
「デートしよう」
「ええ!?」
断りの言葉なんて言わせない。


そして散々連れ回した後、答えなんかわかってる告白をする。


「いや、お、私は、もうこれ以上会えな……
「君の答えはわかってるよ、だから……
彼女の手を取って引き寄せる。華奢な身体は簡単に傾いた。耳元で囁く。
「攫ってしまおう」
付喪神にとって審神者は格下の存在で、しかもただの人間ともなれば神域に連れ去るなど容易い。



自分の領域に連れてきた。
強引なのはあまり好まないが、これ以上会えないとなればこうする他ない。
「ちょ、な!」
「ふふふ」
突然の事で困惑しているようだ。
「待て待て、さすがに本歌の霊力には勝てないぞそれにこの姿じゃ本来の力も出せないし、本体もないし
「?? 何を呟いてるのかな?」
「主にどうやって状況を伝えたら……。頼むから俺達が消えたこと気づいてくれ!いや気づいたとしてもさすがに主もここを壊せないな
「混乱してる?」
顔を覗き込む。

「うわっ!ちょ、長義!」
びっくりしたようでバランスを崩したので、すぐさま腰を抱く。
「大丈夫?」
「あ、ああ」
「気をつけてね」
「それよりも、ここから出せ!」
口調が男言葉になってるが、彼女の素がそちらなのは審神者との会話でわかっている。自分の前でもそのままの姿を曝け出してくれて嬉しい。
「駄目だよ、なんでこんなことしたかわかるでしょ?」
「長義、お前は誤解してる!」
「誤解? 俺を振る算段を主としてたことかな?」
「な!」
「君と主が俺に内緒にしてたことなんて、とーっくに知ってるんだよ」
彼女はびっくりした後、眉を寄せ俯く。カタカタ震え視線を彷徨わせる。

「誤解も何も、本物の事知ってるんだよ」
「そうか、知ってたのか……
彼女は顔を上げて、目を合わせた後頭を下げる。
「すまない、騙すつもりはなかったんだ。こちらにも事情があってこうするしかなかった。あんたを傷つけた報いは受けよう。この通り謝る。だから帰してほしい」
「駄目だ」
「何故だ!知ってるならこんなこと意味ないだろ!」
意味ないわけない。ここにいればずっと一緒にいれるし、ずっと彼女のことだけ考えていられる。まんばのことなんて忘れてしまうくらいに、充実した日々を過ごせる。
「そうだな、もし帰っても俺と会ってくれるならいいよ」
「会ってるだろ!毎日!」




「は?」




長義の作った神域。ふたりで過ごせるようにと本丸と同じような建物を生成していた。彼女が喜ぶだろうと庭付きで景色もいい。
畳の部屋にふたりで向かい合って座っている。お互い顔が引きつってる。
「じゃあ、これは、主の術で女性体になった偽物くんだと?」
「はい
まんばは顔を上げない。
確かによく見るとまんばに似ている。所々パーツが同じだ。女性である所為で小柄だったり胸があったり、髪が長かったりするという違いはあるが、眉の形だとか唇だとか表情だとか、挙げるとキリがないがそっくりだ。

長義はまたまんばに惚れていたという事実を目の当たりにして、撃沈している。
「その、すまない。俺で
まんばは『好きになったのが実は男だと知ってショックを受けている』と思ってるらしい。

逃れられない定めなのかなと長義は思う。どうあがいてもまんばのことを好きになってしまう。

認めた方が楽になれるのかもしれない。長義は腹を括る。
「好きだ」
まんばは固まる。
「お前のことが好きだ。今回はお互い事情があったし、もういっそ水に流さない………か?」
まんばが何やらうずくまって震えている。
「長義の遊び人!チャラ男!不誠実!」
「な!」
「寄るな二股男!!」
そこでようやく長義は自分の発言に問題があったことに気づく。その日のうちに、女性(まんばだが)に告白しておきながら、そんな事を言った口でまんばに愛を告げた。気が多い、もしくは軽いと思われても仕方ない。
「いやこれは!」
「女なら誰でも良いのか!俺が今女性だからか!?
本体がないからって侮られたな、かかってこい相手してやる!練度カンストを舐めるな!!」
「いや落ち着け、そんなつもりはないから……
「写しだってな追い詰められれば噛み付くんだぞ!」
それ鼠な。
長義が近づかないようにぶんぶんと腕を振り回しているが、逆に隙だらけだ。長義は腕をかわし、まんばを壁に抑えつける。腕も振り回せないように掴む。
「離せ!このまま犯すのか!?女なら中身が俺でもいいのか!!」
「落ち着いて話そう」
「話すつもりなら離せ!!これが話し合いの体勢か!?」
「お前が暴れるからだろ」
……
まんばは静かになる。長義はまんばを解放し、咳払いをして、改めて話し始めた。

「ずっと前からお前の事が好きだった……
「説得力」
「う
今までの事を思い返して、確かになと思う。
「好きなのを認めたくなくて、意地悪をして、しまって、いた……!」
「長義の中での問題なのに、いちゃもんつけられてたのか」
「う……元々こういう性格だから、認められない反発心で、つい心にもないことを」
「女の俺には素直に好意を向けたのに??」
「うう……
喋れば喋るほど墓穴を掘っていく。まんばは疑いのまなこで長義を見てる。
「でも信じて欲しい!本当にお前の事が好きなんだ!自分でも認めたくないが、どうあがいてもお前に惹かれてしまう!」
「いや認めたくないなら認めなくていい。大体神域に閉じ込めてどうこうしようとする自分本位なやつは願い下げだ」
「う
先程からまんばからの批判のパンチが重い。
「まずここから出せ」
………………わかった」
自分が不利だと感じ長義はまんばの要求をのむ。二振りしかいない空間なら距離を縮められるのではと本当はチラッと思ったが、これ以上は嫌われると察する。
「ただ、お願いがある
条件とは言わずお願いと言ったのは、今の立場が弱いから。弱気。
「なんだ?」
「毎日いや、たまにでいい、俺とお茶しないか!」
言ってから長義は「しまった」と気付く。言葉がまんま『へい彼女~!俺とお茶しない~?』風だ。また軽いと思われる。
まんばはきょとんとしているが、少し考えてこういった。
「いやだ」
ショックで立ち直れない。
「俺は初期刀で近侍だから忙しい。のんびりお茶してる暇なんてない。」
つまり「お前なんかのために割いてやる時間はない!」ということだ。随分格下にみられたものだ。
「だから、仕事を手伝ってくれたら、空いた時間でお茶しても良い。」
「は!?」
「正直人手が足りなくて困ってる。長義なら報告書とか得意だろ?戦力が増えればその分早く仕事が終わる」
「待て待て、都合の良い夢を見てるのか?報告書とか大得意なんだが??何万枚でも書ける」
「そこまではいらない」
さっきまで軽蔑の眼差しで見られていたのに、とんだ一発逆転では?と思う。
「お茶するだけだ。もう女体化しないし、あんたの気持ちには答えられない」
ハッキリ言われてショックを受ける。まんばには何とも思われてない。
でも軽蔑されてると思ってたので、お茶してくれるなら随分マシでは?と思い直す。前向き。
「べ、別に女体化はしなくていい!」
「あんた正気か??ホモか?」
「お、俺たちは付喪神なんだから性別は関係ないだろ!」
最初男同士だからと戸惑ってたけど吹っ切れたらこの主張。

そしてまんば達は本丸に戻ってきて、終わり。お茶のたびに長義が口説いてきてまんばは「するなんて言わなきゃ良かった」と後悔するパターン。

お疲れ様でした!長い間読んでくださりありがとうございました!