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木蔦(キヅタ)
2019-09-07 23:06:58
7525文字
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まんばと長義と大太刀本歌の話【ちょぎくに】※目隠し企画ボツネタ
ちょぎくに 目隠し企画ボツネタ
・ちょぎくにサンド
・大太刀本歌捏造注意(エロではなく刀種)
※目隠し企画に投稿するには長すぎると思い、却下したネタです。
※途中までは小説として書いてあったので、そのまま貼りつけました。途中から端的なお祈りになります。
「偽物くんはそれがお似合いだよ」
ふんっと本歌が吐き捨てて去って行ってしまった。
本歌と写しという関係でありながら、二振りの距離は遠い。
長義は『山姥切』の号の件を恨んでおり、一方国広は彼に引け目を感じている。
「
…………
俺は、偽物なんかじゃない
……
」
そう呟くが本人には届かない。
国広はもっと本歌と話したかった。
昔の事、持ち主の事、刀匠の事、別れてから再会するまでの事
…
、積もる話があったはずだ。
だが彼から受けたのは拒絶だった。
蔑んだ目で国広を見て、毒を吐く。
国広にとって親のような存在とも言える本歌にそんな態度を取られるのは辛かった。
(別に、あいつがいなくとも、何も
……
)
しかし国広の心はずんっと沈んだ気持ちになる。
国広がふと気づくと目の前に転送ゲートがあった。
「
……
? なんだ、これ
……
」
審神者が用意したものだろうか。それにしてもなぜ人目を避けるようにひっそりと在るのか。
「え、うわっ!!」
近づきじろじろと検分していると、見えない強い力で引っ張られた。
そしてそのまま国広は転送ゲートの中へ吸い込まれて行った。
---------------------------------------
「ねえ、君」
ペチペチと頬を叩かれて、国広は気が付く。
どうやら気を失っていたらしい。瞬きをすると、薄らと蒼が視界に滲んた。
「気が付いたかい?」
国広は慌てて身体を起こす。身体の節々が痛いので、どこか打ったのかもしれない。
本丸ではない、どこかの森のようだ。国広は地面に転がっていた。
どうしてこの場にいるのか、少し前までの状況を思い出す。
(確か俺は転送ゲートに引っ張られて
……
?)
本丸に突然現れた転送ゲートに吸い込まれた。そして辿り着いたのがここだ。つまり異なる時代のどこかに飛ばされたという事になる。
「大丈夫かな」
「ああ、すまない。面倒を掛けた、な?」
国広は介抱してくれていたであろう人物を見て固まった。
銀髪、国広にそっくりの顔、深い青色をした瞳、それは国広の本歌、長義そのものだった。
「えっと、その、ほん
……
じゃなくて、な、長義」
「おや、俺を長義の傑作と知ってるのかな」
「え、あ、いやその違
……
!これは
……
!」
「違うのかい?じゃあなんで知って
……
」
「そ、そうだ!知ってる!あんたは有名だからな!」
「君は俺と顔立ちが似ているね、もしかして同派かい?」
「えーと
…
その
……
同派というか
……
まぁそんな感じだ
……
」
「長義とわかったうえに、こんなに俺にそっくりということは、君も長義作かな?」
「ええ?? えーと
……
、まぁ」
「やっぱりな! じゃあ俺の弟というわけか!」
「あ、いや」
「なんだ違うのか? じゃあどこの刀匠の刀だ」
「ち、違わない!」
「そうならそうと、早く言えばいいじゃないか。こんな所で兄弟に会えるとはな」
ニコニコと長義は話す。彼の背丈は国広が知るものより高い。
彼は打たれた当初は大太刀だったと言う。それを磨り上げ、今の長さになったのだと聞いた。
目の前の彼が腰に差している刀は見るからに長い。やはり磨り上げ前の時代なのだろう。
「君はどうしてここに?」
「あ、いや、その、お、俺の持ち主と迷子になってしまって
……
!」
「それは大変だね、一緒に探してあげようか?」
いつもはない彼の優しさを感じて、国広は感極まる。こんなに優しげな瞳で見つめられたことはない。こんな言葉を掛けられたこともない。彼は国広が何者か知らないため、敵意をむき出しにするわけはないが、それでも嬉しいと思ってしまうほど国広は本歌からの優しさに渇望していた。
「いや、大丈夫だ、きっとすぐに見つかる。その、あ、ありがとう」
「ふふっ、どういたしまして、弟くん」
彼は微笑んで頭をポンポンと撫でた。国広の胸がほんのり温かくなる。
「じゃあ頑張って探すんだよ?気を付けてね」
「あ、ああ」
そして彼とは別れた。
ほんわりと胸が温かくなって自然と顔がにやけた。
(あんなに話せるなんて嬉しい
……
)
---------------------------------------
あの後、転送ゲートを必死に探し、元の本丸へと帰って来れた。帰ると転送ゲートは消えてしまい、一体あれがなんだったのかわからなかった。
(本歌、優しかったな
……
)
国広に微笑みかける彼はかっこよくて、キラキラしてて、
……
国広はそれが忘れられなくて、何度も何度も思い出す。
(また、会いたいな
……
)
あれは転送ゲートの不調だったのだろう。もう二度と起こらないと思うが、思い出に浸るくらいはいいだろうと国広は一振りひっそりと想いを馳せた。
もう二度と起こらないと思われた転送ゲートの不調だが、あの後何回も発生した。
国広が「会いたい」「寂しい」と思うといつの間にか転送ゲートがひっそりと現れた。まるで国広の気持ちに同調するように。
その不具合は審神者に報告していない。何が原因で転送ゲートが不調なのかもわからない。しかし国広は誘われるがままにその門を潜ってしまうのだ。
そして、本歌に会いに行ってしまう。
「やあ、また来たのかい弟くん」
「長義!」
国広は長義に駆け寄る。長義は屈んで作業をしていたらしく、国広が近寄ってきたことで立ち上がった。
「え
……
!?」
国広は目を見開く。彼の身長は国広と同じくらいに縮んでいた。
「長義、それ
……
」
「ああ、少し前に磨り上げられてね、どうかな?弟くんと目線が近くなったね」
「あ、ああ、そうだな」
彼は何でもないことのように話す。つい昨日会った時は大太刀で長身だったのに、今ではすっかり低くなってしまった。
「久しぶりじゃないか、元気にしていたか?」
「え?ええっと、いつも通りだ」
「そうか、姿を見ないから心配していたよ」
転送ゲートが国広を飛ばす時代はまちまちだった。
数日後の時もあれば、数年後の時もある。今回は昨日の時代よりも数年経っていたらしい。
時代は様々だが、一貫してその場所には長義がいた。
「お前が傍にいないと心配だよ」
じっと真剣な瞳で見つめられて、国広はドクンと胸が高鳴る。そんなこと、本丸の長義どころか、仲間や審神者にすら言われた事がない。心配そうな顔からその心情が伝わってきた。
(
……
嬉しい)
本当の正体を知らないとはいえ、こんなにも気に掛けてもらえるなんて、なんて幸せなのだろうか。
---------------------------------------
「偽物くん、昨日はどこに行ってたのかな」
(うわ
……
来た
……
)
国広は眉を歪める。こちらの本歌は彼とは全く違う。過去の彼と同じはずなのに、どうしてこんなに違うんだろうか。
溜め息を吐きたくなった。
「別にどこだっていいだろ、本歌には関係ないことだ」
「
……
フーン、話せないような場所に行ってたんだ」
「
……
」
話せないわけではない、が、過去の長義と会っていたなど本人は聞きたくないだろう。国広の事が嫌いな本歌なら不快に思うはずだ。
「花街とかかな?」
「は?」
「あまり話したくないと言ったら色恋のことかなと思ってね。違うのか。じゃあ恋人の所かな」
「な
……
! 恋人なんかじゃ
……
!」
「図星か。ふーん?しかも否定するってことは、片恋相手、くらいかな」
「
……
~~っ!」
「はは、お前は顔に出やすいね、もう少しポーカーフェイスを身に付けたらどうかな」
「うるさい」
「それにしても呑気だね、主に仕えてるのに、色恋沙汰にうつつを抜かして。怠慢だと思わないの」
「そんな、つもりじゃ
……
」
「精々騙されて利用されないことだね」
そう言って本歌は去って行く。
---------------------------------------
本歌にそんなことを言われても、国広は通うことをやめなかった。
長義に会いたい一心だった。
「弟くん、実は今ね、俺の持ち主が籠城してるんだよ」
カン、カン、と槌の音が響く中、長義がぽつりと言った。国広はぎくりとする。
天正十八年一月、小田原城にて北条家は籠城を決めた。そこに長義の持ち主である長尾顕長も含まれている。
籠城中に顕長が刀匠堀川国広に作刀を命じ、後に『山姥切国広』と呼ばれる刀が鍛刀される。
そしてその年の七月に降伏をし、長尾顕長は領地を没収され、二振りの刀は離ればなれになる。
つまりこの槌の音は自分の打たれている音なのだろう。
(もうそんな時期なのか
……
)
もうすぐ生まれる刀は、すぐに持ち主から引き離される。当然長義と離れることになるのだが、それは悲しい。
「今俺の写しが打たれてるんだ」
その子も俺の弟のようなものだね、早く会いたいな、と微笑む。
国広はその笑顔を見て切なくなった。自分はここにいるのに、それは歴史を歪めてしまう恐れがあるため話せない。
写しとして会いたい、会って長義と過ごしたい。
シトリ、シトリ、と胸に何かが溜まっていく。重苦しくて切ない何かが。
「た、例えばなんだが、」
国広は堪らず吐き出すように話し始める。
「もしもその、
……
写しが、本歌の大事なものを奪ったら、あの、意図的ではないんだが
……
、あんたなら、どう思う
……
!」
「大事なもの?」
「いや、今は想像できないかもしれないが、その
……
」
号だなんて言えず口籠る。
「そうだな、大事な物が何かにもよるが、」
長義は一息ついて、炉の方を見る。
「今の所、弟達より大事な物はないな」
国広はカァァと赤面する。長義は弟『達』と言った。それは自分も含まれているという事だ。
本当に、離れがたくなってしまう。
---------------------------------------
国広は自室で一振り、布団の上でため息を吐いた。
今日行った小田原は、自分が打たれている最中だった。
彼らはもうすぐ離ればなれになってしまう。
離れたくなかった。ずっと一緒にいたかった。
昔の想いが甦る。長義と一緒にいることは嬉しくて、楽しかった。
別れがすぐ来るだなんて思ってもなかった。再びあんな想いをするんだと思うと、そこにいるのは過去の自分のはずなのに、自分までつらくなってしまう。
もう良い、今夜は寝てしまおう。今考えても仕方がないことだ。そう思い国広は床に着いた。
その日国広は夢を見る。
国広は鍛刀場の近くで槌の音を聞いていた。
これは己が形作られている音。
彼はまだ、引き離されてしまうことを知らない。
―――
北条家が降伏しなければ、もっと一緒にいられたはずだ
……
―――
いや、例え降伏したとしても、一緒に貰われていれば
……
世界に声が響き渡る。
(誰だ
……
?)
自分に語りかけてくるのは一体何者だろうか、と国広はぼんやり考える。
―――
もしも一緒にいれば、号の事だって誤解されずに済んだはずだ
国広はハッとした。
確かにそうだ。もし一緒ならば弁解するチャンスもあったはずだ。号を奪うつもりはないと伝えることができただろう。
そもそもどちらが斬ったかもはっきりするかもしれない。
(もしも一緒にいられたら
……
)
---------------------------------------
国広は縁側に腰掛け、ぼんやりと外を眺めていた。
(もしも、一緒に貰われていれば
……
)
夢の内容が頭に浮かんでくる。
※ここからはお祈り調で端的な感じにお送りします※
「なにやってんだ」
唐突に声が掛かってまんばは我に返る。振り向くと長義。
「なんか良からぬこと考えてんじゃないだろうな」
「べ、別に考えてない!」
「フーン?」
じろじろと見られて居心地が悪い。まんばは気まずくて目をそらす。
「あんまり危ないことすんじゃないぞ」
「は
…
!?」
あまりに信じられない言葉を聞いてまんばは驚く。顔を上げたが、既に長義は踵を返し歩き出しており、表情は窺えない。
(い、今の、なんだったんだ
…
!?幻聴??空耳??)
予想外の出来事にドギマギしてしまい、顔を伏せる。
そしてその後まんばは再び転送ゲートを通り、小田原のあの時代へ向かう。今回は元大太刀本歌はいなくて、小田原城近くへ飛ばされる。小田原城は籠城しており、周囲を敵軍に包囲されている。
まんばの脳内で再び声が響く。夢で出てきた声だった。
――
こいつらを全員ミナゴロシにすれば、離れ離れにならずに済んだのに
……
まんばはその声の強さに影響されフラつく。何度も何度も脳内で響く。
(邪魔者さえいなくなれば、離れることもなくなる、のか
…
?)
ふと脳裏にそんな考えが過ぎる。
まんばが誘惑にグラグラしてるところで、長義の言葉をふと思い出す。
『主に仕えてるのに、色恋沙汰にうつつを抜かして。怠慢だと思わないの』
『あんまり危ないことすんじゃないぞ』
これは自分に繋がる過去、歴史を変えれば時間遡行軍と同じになってしまう、そうまんばは踏み止まる。
まんばが脳内に響く声を断ち切るように言う。
「歴史を守るのが俺の使命だ」
するとそのタイミングで時間遡行軍がわらわら出てくる。そこでまんばはこれが時間遡行軍の罠だったことを知る。実はまんばに干渉していたのも、転送ゲートの不具合を起こしていたのも歴史修正主義者の仕業だった。
まんばは一振り戦う。時間遡行軍の様子がおかしい。まんばに襲い掛かってくる者もいるが、まんばに見向きもせず何処かへ向かっているやつらがいる。
(なんだ、一体どこへ
…
?)
歴史遡行軍はまんばを使い、小田原の歴史を変えようとした。具体的には本歌と写しを同じ持ち主へ送ろうとした。
(
…
っ!狙いは本歌か!)
まんばはすぐさま時間遡行軍を追い、打ち払う。本歌を害そうとしているのか、連れ去ろうとしているのかはわからないが、彼らを行かせてはいけない。まんばはぐんぐんスピードを上げ、先へ行く時間遡行軍を倒していった。
先頭集団に追いつき、道を塞ぐように立ちはだかる。
まんばは刀を構える。
「本歌の元へは行かせない
…
!」
結局ボロボロになって、なんとか守り抜けた。ここからだと本刃の様子は窺えないが、この騒動にも気付いてないだろう。気付かない方が良い。余計な接触は新たな歴史改変の種になるかもしれない。
まんばはこのまま会わずに去ろうと立ち上がる。
「弟くん?」
本歌の声がしてびくりと肩を揺らす。
「どうしたんだい、そんなにボロボロになって
…
」
慌てて駆け寄ってくる。
「いや別にこれは」
「胸騒ぎがして来てみてよかった、そのまま俺に何も言わずに去るつもりだったんだろう?」
「
……
」
「その怪我はどうしたんだい」
まんばはなんと答えればいいかわからない。本当の事は言えない。視線を彷徨わせる。
「俺の所為、だね?」
まんばは驚いて顔を上げた。本歌はそれを見てやっぱりという表情をする。
「俺の所為でお前を傷つけてしまったんだね」
「ち、違うこれは
…
!」
否定するも、事情を話せないためまんばは押し黙る。
「どうやら俺のそばにいるとお前を傷つけるだけのようだね」
「そんなことない
…
」
「ふふ、駄々っ子みたいだよ」
「
……
」
さあもうお帰り、と本歌が言う。まんばはハッと顔を上げる。まだ一緒にいたいという思いと、帰るべきだという思いがせめぎ合っている。
「しかし、」
「困った子だね」
眉尻を下げて、宥めるようにまんばの頭を撫でる。そしてちゅっとおでこにキスをする。
「もうここには来るな」
本歌は去ってしまう。まんばはしょんぼりしながら、本丸へ帰る。
帰ると長義が怖い顔して待ってる。
「どこ行ってた」
「いや、別に」
ボロボロのまんばの手を取って手入れ部屋へ連れて行く。
「バカだなお前は」
「バ、バカとはなんだ」
「バカだからバカって言ったんだ」
まんばを布団に座らせ、長義もそばに座る。そして長義がまんばをそっと抱きしめた。
「本当、バカだな
……
こうならないためにお前を遠ざけたのに」
まんばは長義が全て知っていたことに気づく。
「まさか会いに行ってるなんて思わなかったよ」
「な、なんで
…
!」
「気づかないほど鈍くないよ俺は。長義の名を騙った偽物くん」
「あ、あの時は仕方なく
…
!」
長義があの時代の本歌と同一刃物だと少し信じられない。まんばは目を泳がせる。
そもそもなぜ抱きしめられてるのかわからない。
「お前は本当に昔から目が離せないな
…
」
「た、頼りなくて悪かったな
…
!」
「頼りないってレベルじゃない。危なっかしい」
「危なっかしい
…
」
そこまで、と少し落ち込む。そういえば昔の長義にも似たような事言われた。
「俺のためにお前が傷つくなんて許せなかったから」
「ただそれだけのために嫌われようとしたのか!?」
もちろんまんばが本歌に惹かれていたことも気づいてて、長義はされてもない告白の返事をしてあげる。まんばは長義と本歌を別人格と認識していたので戸惑う。
「そ、そんなこと言われても
……
」
「もうこれからは遠ざける必要もないから、覚悟しておけよ」
で、終了です。お疲れ様でした!お付き合いありがとうございました!
■どうでも良い設定
・小田原籠城の辺はわざとボカしてる。小田原籠城時に本歌さんはどこにいたのかはっきりしてないから。時間遡行軍がどこに向かってるのか、具体的に書かず曖昧にしてる。適当に想像してください(投げやり)
HARA先生の推測では、足利學校に置いてあったのでは?って仰ってた。
今から戦いになるかもしれない場所へ大事な刀を持っていくわけがないって考え。(本歌さんはお殿様から賜った大事な刀で、家の格式を表す物だから、実践刀ではなく家宝。戦場に持っていくわけがない)
・本歌さんは和装ですよ!!!
・長義くんがまんば=弟くんだと気づいたのは再会した時。
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