木蔦(キヅタ)
2019-07-30 06:55:37
6474文字
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歌を歌うまんばの話【ちょぎくに】※注意書きあり


※ミュージカル苦手 or 雰囲気小説苦手な人はあんまり好まないかもしれません。自己判断でお願いします。


まんばは審神者に大事に育てられたこともあり、卑屈少な目で明るい性格。
よくディズ=ープリソセス並に歌を歌っている。
そうすると小鳥やウサギなど動物たちが寄ってきて、ディズ=ープリソセスをする。

よくシジュウカラが肩に乗り、まんばの声に合わせて歌っている。常連。
暫くすると、シジュウカラは歌ってない時でもまんばの傍に寄ってくるようになった。
まんばは懐いてくれるのが嬉しくて、「じゃあ折角来たんだ、お前と一緒に一曲歌おう」と歌ったり、エサを上げたりする。
シジュウカラの声はまんばに寄り添うように、そしてまんばにかき消されることなく響き渡る。


そのうち本丸では名物になった。
まんばの歌が始まると本丸にいるみんなは耳をすませるようになった。
ちょぎ氏もその一振りで、偽物偽物と言ってはいるが、まんばの歌声は美しいと認めていた。
まぁ自分の写しだしな(高慢)

ある日他の刀が「琴が弾けるからコラボしないか」と持ちかける。
まんばは別に構わないと言って、琴に合わせて歌う。
それもとても美しかったのだが、途中で中断することになる。
今回も肩にシジュウカラが乗り、まんばと共に歌っていたのだが、途中から騒ぎ始める。
何かあったのかとびっくりして止めると、シジュウカラは知らんぷりする。
そのため歌を再開させるのだが、やはり騒ぎ始める。
それを繰り返したため、結局お開きになる。


まんばはシジュウカラを撫でながら体調が悪いのか、喉が悪いのかと心配したが、きょとんとしている。
まんばが歌ってみてもいつも通り合わせてくれる。
しかし同じように他の刀から声を掛けられるとあの時と同じ反応をする。
しかも日本語がわかるのか、誘われた時点で反対するように騒ぎ立てる。
まんばは困ってしまう。

「お前は歌わなくていいから。それに折角の誘いだ、俺は受けるぞ」

まんばはシジュウカラを置いて、他の人と歌う。
シジュウカラはしばらくの間ガラガラとしたダミ声しか出さなくなる。
まんばはシジュウカラが怒ってるのかと思って謝る。
だけど他の刀からたびたび誘いがかかり、まんばはそれを受けたりする。
そのたびにシジュウカラはそういう声を出す。


ある日歌ってる時に長義が通りかかる。
長義は不機嫌そう。
まんばは思わず口を噤める。

「なにかな、咎められるとでも?」
「いや」

「確かに偽物くんの声は耳障りだな、聞こえるとムカムカする。よく俺の部屋まで聞こえてくるよ」

まんばはショックを受ける。

「それは……すまなかった……

まんばは走り去る。
それ以降まんばは歌えなくなってしまう。

まんばは他の刀から誘われるが、気分じゃないとか、忙しいとか理由を付けて断る。

シジュウカラも歌わない。
前はまんばが歌ってなくても一羽で楽しく歌ってる時もあったが、最近それもない。
きっと飼い主(飼ってないけど)の心情が影響してしまってるんだなとまんばは申し訳なく思っている。

だけど歌う気分にはなれない。

次第に他の刀達も最近まんばが歌わないことに気付き始める。
色々心配してくれるが、まんばは飽くまではぐらかす。

まんばはあんなことくらいでなんで歌えないんだろうと縁側で悩んでいた。


するとまた長義が通りかかる。
まんばを見てまた機嫌が悪そうに眉を寄せる。

「偽物くんは最近歌ってないみたいだね、まあ俺は静かでいいけど。何かあったのかな?まさか恋煩いとか言わないよね?」
「こい、わずらい……?」

まんばはそこでようやく合点が行く。
そして自覚してしまったが故に、赤面する。

「恋、してたのか、俺

指摘されて気づくなんて、と赤い頬を隠すように手で覆う。
だから長義にあんなこと言われて深く傷ついたのだと思う。

長義はびっくりしたような顔をした後、不機嫌そうな顔に戻った。
「フーン?図星なんだ?でもお前なんて好きになってもらえないよ」

バカにしたように長義が言う。
「まるで自慢のようにどこでもいつでも歌いまくるし、その割に下手くそだし、変な鳥連れてるし、偽物のくせに態度がでかい」
まんばは再び傷つく。しかも恋心自覚直後なので制御できないいっぱいの感情が胸の中でぐちゃぐちゃになる。
悲しくて泣いて自室に帰る。

泣いてるとシジュウカラが寄ってくる。
どことなく元気がない。
まんばはシジュウカラが慰めてくれてるような気がして、大丈夫、と言おうとした。
だけどやっぱり目からボタボタ涙が落ちてきて、何も言えずに蹲る。
結局まんばは一日中泣いていた。

一晩泣いた所為か、ちょっとすっきりする。
もう嫌われてるのは明確なので、諦めて気持ちを捨てれば楽になれると思う。
だけど、捨てようと思っても未練が残り、捨てられない。

どうすればいいのか、最も仲の良い刀にこっそり相談する。
その刀は「時が忘れさせてくれるって言うし、無理しなくてもいいんじゃない?」と言う。
まんばは半信半疑だったが、無理にその気持ちを抑えつけたり、消そうとしたりせずに、悲しい時は涙を流し、切ない時は遠くからそっと眺めた。
そうすると不思議と気持ちが楽になってきた。
自覚直後よりだいぶ大きく構えられるようになった。
シジュウカラも少しだけ元気そうで、最近はたまに歌うようになった。まんばもそろそろ歌えるんじゃないかと思って外に出る。また長義にうるさいと言われるかもしれないが、もう嫌われているんだし、これ以上嫌われても一緒だと考える。

そう思うと気が楽になった。

まんばは楽しく歌い始める。








(視点変わります)

長義は写しの歌声は好きだった。
透明感のある澄んだ声で、伸び伸び歌ってるのは聞いていて心地がいい。
目を閉じ、歌声に集中すると、すべてを忘れて没頭できる。
密かな楽しみだった。
だからまんばの歌が始まるとよく聞き入っていた。

しかしそれに雑音が混じることが増える。
それが不快で堪らなかった。
それを聞いているとイライラしてしまう。
折角綺麗なものになぜ不純物を混ぜるのか、そんなときはそれをぶち壊してやりたい衝動にかられる。

そんなことがたびたび起こり、イライラしていた。
ふと歌声が響く。それは子守唄のような囁くような声だったが、雑音もなく澄んだ長義の望む音だった。
しかし長義が近づいたことを悟り、ぴたりとやんでしまう。

しまったという顔でまんばはこちらを見上げている。
なぜ自分には聞かせないように歌をやめるのか、イライラしてまんばに言う。

「なにかな、咎められるとでも?」
「いや」

まんばは目が泳ぎ困った様子だ。それがまたイラついた。

「確かに偽物くんの声は耳障りだな、聞こえるとムカムカする。よく俺の部屋まで聞こえてくるよ」

イライラして、あれ以上雑音を聞きたくなくて、長義はそう言った。
まんばはひどく傷ついた顔をして、走り去っていった。

長義は言ってから後悔した。
高慢で強気な長義には珍しく、落ち込んだ。
謝りに行けばいいと言うことはわかっていた。
しかしプライドが邪魔をして謝りには行けなかった。

キッカケがあれば言えるかもしれないと考えた。
例えば、まんばが歌ってるところにやってきて「本当はお前の歌は嫌いじゃない、あんなこと言ってすまなかった」と言えばいい。

しかしそれ以降まんばの歌はピタリとやんでしまった。





自分が言った所為だろうか、と長義が考えるが、他の刀が噂話してるのを聞いてしまう。
「まんばちゃんさ、あれきっと恋煩いだよ。だって目が恋する瞳だったもん、悩ましげなため息ついてさ~!」
「やっぱそう思う!?絶対そうだよなー。最近歌わないのって絶対それが原因だよな~。ついにまんばに恋刀ができるのかー。あいつ危なっかしい所あるからこれで安心できるわー。」
「やっだー!まだ片恋かもしれないのにー!きゃ(>∀<)」

長義は思った。
あんなことを言った直後だったから、自分が原因かと思っていたが、そうなのか、と。


縁側を通りかかった時にまんばがぼんやりと外を見ていた。
じっくり観察し、なるほどと思う。
確かに悩ましげな溜め息をついているし、前に比べて色気があるようにも感じる。
これは確かめなくてはいけない、と長義は思う。

「偽物くんは最近歌ってないみたいだね、まあ俺は静かでいいけど。何かあったのかな?まさか恋煩いとか言わないよね?」
まんばはきょとんと長義を見上げている。
心底わからないという顔だった。

「こい、わずらい……?」

そしてハッとなり、徐々に顔が赤くなり始めた。

「恋、してたのか、俺

長義は思った。
これは自覚を促してしまったのではないか、と。
そして同時にまずいことをしたと気付いた。

指摘しなければ、鈍いまんばは気付かないままだったかもしれない。
それなのに自分が決定打を押してしまった。
でもこれで恋をしているのだとはっきりした。

気分は急降下する。何とか諦めさせたい。

「フーン?図星なんだ?でもお前なんて好きになってもらえないよ」

卑屈度は低いがやはり山姥切国広にこういう言葉は効くようで酷く傷ついた顔をする。
さらに被せて、まんばが傷つくと思われる言葉を言い放つ。

まんばは走り去ってしまう。

その後は自己嫌悪で、あんなこと言ったら逆に自分が嫌われるだろ、とか、泣きそうな顔してたな、とかで落ち込む。
さすがに言い過ぎた、謝りに行こうか、でも、と自室でうろうろする。

悩んだ挙句、やっぱり謝ろうとまんばの部屋を訪ねる。
しかし声を掛けたものの、返事がない。
そっと部屋を覗くとまんばは寝ていて、目元には涙があった。
それを見て反省する。
やっぱりあんなこと言った所為で泣かしてしまった。

まんばの寝顔をじっと見つめる。
写しが打たれたばかりの頃を思い出す。
膝の上でよく子守唄を歌いながら寝かしつけた。
寝顔はまったく変わってない。

長義はあの頃のように子守唄を歌ってやる。
まんばが笑った気がしたので、少し安堵して部屋を出て行く。
それ以降、たびたび長義はまんばが寝静まった深夜に訪れては子守唄を歌い、帰って行くようになる。






ある日、長義はまんばの部屋から帰り、自室で寝ていた。
不思議な夢を見る。

ぼんやりとした空間の中、たくさんの映像がまるでテレビのように映し出されている。
その映像をよく見てみると、今日長義が体験した出来事だった。

これは記憶だ、と長義は気づく。

人は寝ている間にその日あった出来事を脳内で整理すると言う。
だからこれがその光景なんだろうと思う。
そこで体験した覚えのない映像があった。長義の目はそれに釘付けになる。

それはまんばが部屋で泣いている映像だった。
ポロポロとたくさん大粒の涙を流している。
拭いても拭いても涙が溢れ出てきて、見ているこちらが居た堪れない。
(これは俺の空想なのだろうか?)

よく見ると、少し遠い場所にある映像にもまんばが映っている。
同じく、見た覚えはない。

探していくとそのような映像はいくつかあった。
映っているのはまんばだが、よく見ると共通点があった。
まんばよりも目線が低く、下から見上げている。
まんばよりも低いなら短刀や脇差の目線の高さの気がするが、それも違う気がする。
足元がチラチラ見えるが、机に乗っているようだ。

(そう、これはまるで……、手のひらサイズ、くらいの……

そこである可能性に気づいてしまう。
よくまんばの近くに小鳥がいたはずだ。
これはそいつの目線なのでは?と考える。
もしそうだとして、なぜ自分の夢に出てくるのかわからない。


それ以降たまにそういう夢を見る。
映像の中のまんばはいつも落ち込んでたり、泣いてたりして、見てる方がつらい。
元気付けてやりたい、そう思うようになる。
まんばが元気になったらまた歌が聞けるだろうか、随分長い間まんばの歌声を聞いていない。

そしてある日、本丸の庭から歌声が聞こえてきた。
それはまんばの声で、長義はそれに釣られて、外に出る。
まんばは木の幹の上に座り、鳥達に囲まれていた。


(といちせんせーの一周年記念絵)


それが幻想的で、息を飲み、魅入ってしまう。
そしてまんばの楽しそうな歌声に自然とつられるように、口を開いた。








(視点変わります)
まんばが歌い始めると鳥達や小動物達が寄ってきた。楽しい。
歌うとつらいことが吹っ飛ぶ。
まんばはくるくると戯れるように回ってこけた。
それすらも楽しくてニコニコと笑い座り込む。歌は歌ったまま。

いつものシジュウカラも楽しそうだ。
まんばは大きな桜を発見して、あそこの上で歌ったらなんて気持ちがいいだろうと思う。
そして勢いよく立ち上がって、木に向かう。
登ると辺りが見渡せる。
そして鳥達にもまんばの周りの幹に留まった。

まんばは世界が一変して、なんで今まで歌わなかったんだろうと思う。
つらいことはあるけど、それは仕方がない、受け入れなくてはと思う。

しかしそこで視界の端に長義が映る。
まんばは驚いて、思わず口を噤んだ。
またうるさいと言われるだろうか、と思うが、そんな様子はない。
それどころか、長義もまんばの歌を継ぐ形で歌い始めた。
まんばは少しの間ぽかんとしていたが、長義の乞うような視線を受け、慌てて歌い始める。
なぜいきなり?と困惑する。うるさいのでは?

しかし長義の声は優しくまんばに寄り添ってくれて、歌っていて心地がいい。
声の波長もあっていて、まるでピースとピースがはまったような感覚だった。
他の誰にも感じたことがない。いやこの寄り添う歌声はどこかである気がする。

ふとまんばは視線を走らせる。いつもまんばのそばにいてくれていたシジュウカラがいない。
たくさんシジュウカラが周りにいるが、まんばが見間違うことはない。どこにも姿が見えない。
長義を再び見て察する。
あれはきっと彼の分身だったのではないか、と。


まんばは長義と歌えることが嬉しくなって来て、気持ちを込めて歌う。
長義に伝わるかわからないが、まんばの今までの悲しかったこと、つらかったこと、でも好きなこと、すべて歌に乗せる。
伝わって欲しいような、欲しくないような、微妙な心境もある。

長義が桜の前まで近づいて来て、両手を広げる。
その瞳は声同様、優しくて甘い。

まんばは一瞬戸惑うが思い切って飛び込む。
長義はまんばを抱きとめ、そのまま二振りともゴロンと地面に転がった。

「はは、俺たちバカだなぁ」

まんばはその言葉にきょとんとするが、長義がまんばに唇に触れ、すべて察して真っ赤になる。


「いっぱいお前に謝らなきゃいけない事がある。聞いてくれるか?」


こくり、とまんばは頷いた。


ちょぎくにハピエンフゥゥゥゥゥ!!!!٩( 'ω' )و
お疲れ様でした!長い間お付き合いありがとうございました!

途中アクセル全開で雰囲気展開続いてすみません!



どーでもいい設定
・シジュウカラと長義はリンクしてるため、長義が落ち込んでるとシジュウカラも元気ない。ヤキモチ妬く。まんばと歌う。まんばのそばにいたい表れ。
・長義くんが恋を自覚したのは1回目にまんばに嫌味言った直後。だからすごく後悔する。
・噂話してたのは乱ちゃんと加州くん。
・写しが〒゛ィズ=ープリソセス並に歌うのに、本歌が王子様並に歌えないわけがない。





妹:シジュウカラって本歌さんカラーだもんな!

( o _ o )!?