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木蔦(キヅタ)
2019-07-22 02:09:43
6262文字
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記憶喪失のまんばと空回りな長義の話【ちょぎくに】
ちょぎくに
長義くんはまんばのことが好き。だけど遠くから見てることしかできない。話すことがあっても、つい憎まれ口を叩いてしまう。見つめ合うと素直におしゃべり出来ない系刀剣男士。
ある日まんばが打刀仲間と話しているのを聞いてしまう。
「なになに!まんば、好きな人いるの!?」
「えー!誰ー?教えてよ!」
「な!?写しなんか不釣り合いだと笑う気だろ!?」
「出た!まんばのお家芸!www」
「いや笑わないから!www俺たち酷いやつじゃん!」
きゃっきゃっと話題に花を咲かせている。長義は崖に突き落とされた気分になった。まんばに想い人がいると思うだけで、胸が苦しくて、悲しくなった。
それから長義は思い詰めるようになる。振り向かせる事も考えたが、既に想い人がいて、さらに自分は嫌われているだろうということを思うと、何をしても無駄な気がした。
ふと、長義は考える。まんばの想い人さえいなくなってくれれば、そして、もう一度やり直せれば、と。
そして思いつめた長義は行動に出ることにする。
夜、まんばの部屋に忍び込む。まんばの額に手を当てて、呪いを掛ける。それはまんばが一等強く想う者を忘れる呪いだった。上手くかかったかどうかはわからないが、まんばが起きる前に退散することにする。
翌日、まんばはいつも通りに起きて過ごしている。まんばに忘れられた者がまんばの想い人のはずだから、誰なのかとまんばの行動に気を配る。まんばは打刀仲間と楽しく過ごしている。変わった様子はない。
打刀仲間でまたきゃいきゃい話しているのを、長義はこっそり隠れて聞いていた。
「ねーいい加減まんばの好きな人教えてよ!」
「そうそう!」
まんばに詰め寄る二振りだが、まんばは想い人のことを忘れているはずなので答えようがない。だからその問いは無駄だ。だがまんばは言った。
「秘密だ」
長義は血の気が引いた。まんばは想い人の事を忘れてない。つまり長義が掛けた呪いは失敗している可能性が高いという事だ。失敗してどうなるかはわからない。
呪いが術者に返ってくる場合がある。しかし長義は何ともない。まんばの事も忘れてないし、体に変化もない。
呪いが不完全だったのかもしれないし、今日一日様子を見ることにする。
しかし事態は長義が期待した通りの展開になる。
「あんたは、誰だ?」
まんばがきょとんとして見つめる。まんばには呪いがかかっていたようで、ちゃんと忘れていた。
しかしまんばが見つめる先は長義で、愕然とする。
(失敗して術者を忘れるようにかかってしまったのか
…
!)
長義は悔いる。
まんばは結局想い人を忘れていない。さらに悪いことに長義のことを忘れてしまった。最悪だった。
しかしそこで長義は気づく。
(これは、チャンスではないか?)
長義はまんばから嫌われていた。だから振り向かせることも諦めていた。しかし、記憶を無くしてしまって、ゼロからスタートになったため、まんばに嫌われてはいない。今から挽回すれば、まんばを想い人から奪い取れるのでは?と思う。
幸いにも、想い人とまんばは恋人ではない(と思う)。まんばの性格上、告白するようには思えない。さらに押しに弱い性格と見た。
(これは、いけるのでは
…
?)
長義は長船の血を急に濃くして、まんばを口説きにかかる。『山姥切』の名のプライドを捨てれば、まんばを口説くなど容易い💪
まんばは迫ってくる長義にたじたじで、顔を真っ赤にして逃げて行ってしまった。恥ずかしがってるらしい。こういうのに慣れてないことが手に取るようにわかってかわいかった。
次の日から長義は隙あらばまんばを口説くことにする。まんばが一振りでいるところを狙ったり、空き部屋に連れ込んだりした。ただし、まんばが本気で嫌がったら引くようにした。恋の駆け引きは重要。
まんばは逃げるものの、顔を真っ赤にして慌てるし、邪険にしてる態度でもないので、長義は脈があるのでは?と思う。長義は調子に乗る。ちょっとくらいいいのでは、とまんばに口づけしようとしたところで、やめろ!と拒絶される。
「俺、好きなやつ、いるから
……
」
そして逃げられてしまう。
長義は落ち込む。まんばからの好感度も高くなってたのに、失態を犯してしまった。欲望に負けなければ、拒絶されることもなかったのに、と悔やむ。しかし遅かれ早かれ、振られていたともわかっていた。結局まんばは想い人のことを好きなのだから、長義が出る幕はない。
さらに悪いことは重なるもので、まんばが急に長義を訪ねてくる。どうしたのかと話を聞くと、まんばはキッと長義を睨みつけて「お前、俺の事からかってたんだろ!?」と言う。からかってない、と主張するが、「加州から聞いた。あんた俺が嫌いで、嫌がらせばかりしてきたんだってな」と言われる。
長義は青ざめる。前々からまんばの事が好きだったが、側から見れば嫌ってるように見えただろう。
「あんた、サイッテーだ。もう俺に近づかないでくれ」
まんばに軽蔑されてしまう。
長義は自分がしたことを後悔していた。まんばに本気だとちゃんと説明できていたら、あの時キスしようとしなければ、調子に乗らなければ、奪い取れるなど過信しなければ、記憶を消すなど愚かなことをしなければ、まんばと最初から仲良くなれていれば
……
。考えるとキリがない。
まんばに嫌われたと落ち込むが、記憶を失う前も嫌われていたのだから変わらないと思い直す。しかしあの時よりも喪失感が酷い。
長義はもうまんばの事は諦めようと決める。これ以上想い続けても不毛だし、心が酷く痛むから諦めて楽になりたかった。だからまんばの呪い(失敗)を解いてやることにする。さらに嫌われると思うが、もうこうなったらどれだけ嫌われても同じだと思う。
まんばには慕っている相手がいた。
しかしそれが誰なのかまったく思い出せない。
加州に「好きな人誰?」と聞かれて気づいた。
好きな相手がいるという事実は覚えているのに、それが誰なのか、なぜ好きなのか、どういう関係なのか、記憶にない。
その時はまんばは適当にはぐらかした。
初めて会う刀に話しかけられて、なんだが引っ掛かりを覚える。しかし何なのかはわからない。その違和感はすぐに消えてしまった。その刀の距離が異様に近かった所為だった。話していただけのはずなのに、顔は十数センチの近さだし、さりげなく手も握られている。整った顔に、にこっと微笑みかけられるともうダメだった。まんばは逃げ出した。最初に感じた違和感はそれの所為で吹っ飛んでしまった。
それから何度も何度も彼は同じようなことをした。恥ずかしくなってそのたびに逃げた。
ふと気づくと彼のことばかり考えるようになっていた。
(ダメだ
……
俺には好きなやつがいるんだ
……
)
もやもやとした気持ちがずっと心にあった。しかし彼に気を許し過ぎていた所為か、ある日口付けされそうになる。まんばは咄嗟に押し戻した。
「俺、好きなやつ、いるから
……
」
傷ついた顔を見て、まんばはぎゅっと胸が痛む。見ていられなくて逃げてしまう。
友人の加州に彼について印象を聞く。
「なに、まんば、なんであんなやつのことが気になるのさ!あいつすっげー嫌なやつじゃん!」
「そうなのか?」
「だってまんばのこと偽物呼ばわりしたり、蔑んだ目で見て来たり!」
まんばは加州から長義の事を聞く。それはまんばが知っている彼とはかけ離れていた。そしてようやく自分はからかわれていたと気づく。
(あれはからかっていたのか!写しなんか誰も好きにならない当然のことだ、なのに俺は何を自惚れていたのか!)
ふつふつと抑えきれない感情が湧いて来て、まんばは長義の部屋を訪れる。怒りに任せて怒鳴る。
「お前、俺のことからかってたんだろ!?」
「え
…
!?な、なんのことだ
…
!」
「俺を口説いたり、キスしようとしたりして、慌てる俺を見て笑ってたんだろ
…
!」
「ち、違う!からかってない!」
「嘘だ!
……
加州から聞いた。あんた、俺が嫌いで、嫌がらせばかりしてきたんだってな
……
!」
長義は悲しそうな表情をする。なぜ彼の方がそんな顔をするのか理解できない。こっちの方が悲しい。だって、彼をxxxxxかけてたのに、裏切られた。つらい。
「あんた、サイッテーだ。もう俺に近づかないでくれ」
まんばは長義の部屋から出て行く。悲しみと怒りと罪悪感が胸でごちゃ混ぜになっていて、つらい。苦しい。
まんばは悲しそうな長義の顔が頭から離れなかった。しかし自分には好きな人がいるんだから、あんな最低な男の事など気にすることはない、何の感情も持ってはいけない、と思っていた。
まんばは部屋で一振りでいると、つい、長義のことを考えてしまう。そのたびにいけないいけないと、雑念を振り払う。
そこに長義が訪ねてきた。近づくなと言ったのに何の用なのか。顔を見るとこれまで以上に長義の事でいっぱいになりそうで視線を合わせないようにまんばは俯く。
「すまない」
何の謝罪なのか、それを考える前に長義の手がまんばの額に触れた。
「え
…
?」
まるで手から衝撃波を受けたようだった。一瞬でたくさんの事が脳内に流れ込んできた。長義との出会い、会話、関係性、すべてが蘇ってきた。
「あ、ああ
…
」
今の記憶と混同して、何が何なのかわからない。
それがすべて終わると力が抜けた。倒れそうになったところを長義が抱きとめてくれる。
「すまない」
「
………
なんで、謝るんだ
…
」
「俺が浅はかだったからだよ」
「
…………
?」
「悪かったね、もう近づかないから」
「あ
…
」
長義はまんばを離すと、部屋から出て行ってしまう。
まんばはどうしたものか思い悩む。
まんばは恋していた相手をどれだけ好きだったのか、いつから、どうやって想っていたのかも、長義の記憶と共に思い出してしまった。
そして、今の長義へ恋をしていることも認めてしまった。
以前恋していたドキドキと似ている。いやそれ以上だった。
だからこれは恋を認めざる得ない。
(むしろ俺は、恋に恋してたのかもしれない。)
過去のことは、まるでその気持ちが嘘やガラクタのように感じてしまう。
その時は真剣だったはずなのに、それなのに今ではその気持ちは薄れていく。
(なんだか笑っちゃうな
……
。
………
同じやつに、二度も恋をするなんて
…
。)
忘れても、同じ刀に二度恋をした。それは不思議だった。だけど、まんばには悩んでる事があった。
(本当にからかっていたのだろうか
……
)
記憶のないまんばを見て、心の中で嘲り、弄んでいたのだろうか。記憶を取り戻した今、まんばの中で二つの性格の長義がいる。どちらが本当の彼なのかわからない。
きっと写しのことをからかってただけで、本当の彼は記憶を失う前の性格なんだろうと思う。しかしまんばはどうしても長義の悲しそうな顔が頭から消えない。あれは嘘を吐いてる顔だろうか。それにからかっていたなら「バレちゃったのか」で終わりじゃないか?なぜあんなにも食い下がる必要があったのか。
まんばは悩みに悩んだ挙句、長義ともう少し話をすべきだと思い至る。もし誤解をしているなら解きたい、和解したい。そう思っていた。しかし長義をいくら探しても見つからない。審神者に聞くと、渋い顔をした。「いやね、少しの間旅をしたいって言うから出て行っちゃったよ
…
極の修行ではないって言ってたけど、何ヶ月、何年になるかわからないって」
「え
…
そんな
……
」
まんばは自責を感じる。きっとまんばが長義を傷つけたせいだと思い込む。彼はきっと本気だったんだ、だからあの時信じてもらえなかった事に傷つき、旅に出てしまったのだ。まんばは後悔し、悲しみに暮れる。
長義は後悔していた。自分はいろんなことが未熟だった。だからあのような結果になったんだと。だから修行の旅に出た。自分を磨くために。
「今度は想い人の記憶と存在を抹消できるくらいにならなければ!!」
日夜、鍛錬し、術を磨き、霊力を高めた。
そして時は過ぎ、長義は帰還した。
もしかしたらまんばは想い人と恋人同士になっているかもしれないが、もう関係ない。
まんばの記憶からも、この世からもすべてにおいて消してやる!とちょっと歴史修正主義者寄りの考えの長義(闇極)。
「帰ったよ」
と本丸に一歩入る。
みんなにワイワイ囲まれる。ちやほや😊
ガタン、と何かが落ちた音がして、振り向いた。まんばが目を見開いてこちらを見つめていた。無駄に力持ちなのでたくさん籠に抱えていたであろうキュウリは地面に大量に転がっていた。
「長、義
………
」
ポロポロとまんばが泣き出す。
(えええええ
……
!?)
予想外の反応に正直焦る。
(これ何の涙??再会の感動?それにしては過剰すぎないか?)
まんばは混乱する長義と大量のキュウリを置いて走り去ってしまう。
(散らばったキュウリはその場にいた刀達が綺麗に洗い、浅漬けにして美味しく頂きました。)
夜、帰還のお祝いで宴会が開かれ、みんなどんちゃん騒ぎ。主役はそっと抜け出す。(みんな騒ぎたいだけなのであまり気にしない。)長義はまんばの部屋へ訪れる。まんばは早々に退席していた。
もう寝ただろうか、寝てたらラッキーなんだが、と考えを巡らす。
まんばは寝ていた。これ幸いとまんばの額に手を当てる。
(俺が帰還後に事件があると疑われる。遅延して作用するようにしておこう)
「長義
……
?」
声を掛けられ、びくりと揺れる。まんばが薄っすらと目を開けた。そして起き上がる。
「なんでここに
…
?」
「お、お前の顔を見たくて
…
!」
「そうか
……
」
寝ぼけてるのか、苦しい言い訳もすぐに納得してくれた。ホッと息を吐く。ふともう一度まんばを見ると、昼間のように瞳にいっぱい涙を溜めていた。ぎょっとする。
「長義、会いたかった
……
!」
ぎゅっとしがみ付かれる。
抱きつかれた長義は目を白黒している。なぜ抱きつかれているのかわからない。
「俺、ずっと謝りたかったんだ
…
あの時長義を信じずに軽蔑した。俺の気持ちを踏み躙られたとばかり思ってた
…
!」
「???」
「あんたが本気だなんて思いもしなかった
…
!すまない
……
!」
「???
…
いや、別に
…
」
「許して、くれるのか
……
?」
「え、と
…
、気にしてないよ?」
「よかった!!」
さらにぎゅうぎゅう抱きしめられる。かわいい。(。¬ω¬。)
「長義、もう一つ言いたいことがあるんだ」
まんばがパッと長義を見上げて言う。その顔が涙で濡れてるうえ、キラキラ輝くような笑顔で、長義は思わずドキッとしてしまう。
「俺、あんたの事が好きだ
…
!」
「え」
「ずっとずっと前から、出会った時からあんたのことが
…
!」
「ええええええ!?」
想定外のことに声を荒げてしまう。
「待て!待て待て!?いつから
…
!?最初から!?じゃああの時術は
…
!」
「術?」
「ああああ!いや!何でもない!待てよ?今掛けた術は
…
!?やばい
…
!」
「術??」
「キャンセル!キャンセルは効くか!?」
「それは写しの告白をお断りということでいいか?」
「違うそうじゃない!」
そしてちょぎくには結ばれた。
お付き合いありがとうございました。お疲れ様でした。
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