木蔦(キヅタ)
2019-04-12 03:19:51
2858文字
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昔奪われた物を取り戻したいまんばの話【ちょぎくに】


ちょぎくに


まんばは長義が苦手。
顕現当初から偽物呼ばわりされるし、見下すような物言いだし、そもそも劣等感があるから近づきたくない。

だけどある理由から接触を余儀なくされる。
そのある理由とは、小田原時代の因縁にあった。

まんばは打たれた当初、自我もまだ朧げながらも、付喪神として形が取れた。
しかし長義にある物を奪われてしまう。

まんばは記憶が曖昧でそれが何か覚えていない。
だけど取り返さなければということは覚えている。


まんばは長義を観察する。
彼が持ってる古い物とか、身に纏っている物、何もかもが怪しく見え、何もかもが違うように感じられる。
本人に聞くのが手っ取り早いが、生憎嫌われているので話しかけられない。

まんばはこっそり長義の部屋に忍び込み、私物を探ることにする。
探せど探せど見つからない。
そもそもどんなものなのかもわからないので、闇雲に探すしかなく、効率が悪すぎる。

そもそも顕現時に身一つでこの本丸に降り立ったのだから、身に纏えるほどの小さなものなのでは、と思い至る。
そのため探すのに骨が折れる。


そしてそんな所を長義に見つかってしまう。

「勝手に人の部屋に入り、盗みを働こうなんて、非常識にもほどがあるよ?偽物に加えて泥棒くん、かな?」
「ど、泥棒はお前だろ!」
「何?」
「俺が生まれたばかりの頃に、俺から何かを奪ったくせに……!」
「へぇ?覚えてるんだ?」
「か、返して、ほしい……!」
長義に無言で見つめられて、どぎまぎしてしまう。
……何なのか、覚えてるのかな?」
「お、覚えてない……。」
「覚えてないのに返して欲しいだなんて笑っちゃうね。生憎だけど、アレはもう俺の物だ、今更返せない。」


まんばは記憶がないから何も言えないんだけど、長義に違和感を覚える。
小田原の時の記憶はないが、あの時とは何かが違うと感覚的に思う。
長義が何かを思いついたようで不敵な笑みを浮かべて提案する。


「なら俺から奪ってみなよ。二十四時間いつでも構わない。かかっておいで。」


まんばは物がわからないながらも、その提案に乗ることにする。
まんばは少し遠くから長義を観察する。
しかし長義から「そんな遠くからじゃわからないだろう、馬鹿なのかな」と言われる。
カチンときたまんばはじゃあ遠慮なく、と長義の側を陣取り、観察し続ける。

ご飯は隣に座り、内番では少し離れたところで観察し、出陣から帰ってきたら真っ先に出迎える。
まんばが非番の日は長義について回る。
意外にも自室に入る事を嫌がらなかったので、部屋にも遠慮なく居座る。
長義はそれを楽しそうに見てる。

長義は第一印象最悪だったが、意外にも優しい面があってまんばは驚いてる。
神経質かと思ったら許容範囲が広くて寛容だったり、もてあた精神からかまんばによくお菓子をくれたり。


まんばは「よくわからないやつだ……」と思う。
でも小田原時代はこうやって二振りで過ごしたな、と朧げながらも思い出す。
長義はまんばにとても優しかった。まんばの初恋は間違いなく長義だった。
だけどそれは幼稚園児が保育士さんに恋をするようなもので、今では面映ゆい思い出と化してる。

まんばはふと気づく。
前は長義に近づくのも怖かったが、今は平然と隣にいる。
それどころか余暇も一緒に過ごす。
部屋にいると暇だからと長義に誘われ、チェスとかのボードゲームをやったりする。

既に今はそれが当たり前になっている。
探し物も見つからなくて、まんばは徐々に「もう見つからなくてもいいかなー」と考え始めてしまう。
そんな時に長義から口吸いされてしまう。結構深めの。

間近で見つめてくる長義を見て、まんばは再び違和感を感じる。




長義サイド
長義は小田原時代からまんばのことは愛おしく思っていた。
執着している。

本丸に顕現してからも同じ。
小田原時代とは立場が変わったが、まんばは自分の物だと言う認識は変わらない。


まんばがどうやら昔あったことを微かに覚えており、それを取り戻したいと躍起になっていると知る。
しかし長義はそれを返すつもりは毛頭ない。

まんばは長義のことを怖がっている節がある。
長義はそれを喜ばしくないと思ってる。
自分の傍にいればいいのにと思う。

そこでピンと名案が浮かぶ。まんばに"物"をチラつかせれば傍に置いておくことができるのでは。
早速提案してみるとまんまとまんばは引っかかる。
まんばは見逃すまいと長義の一挙手一投足見つめるし、四六時中まんばが傍にいてくれる。
そしてそのままグズグズに甘やかして、慣れさせて、日常にしてしまえばいい、と考える。


まんばの感覚が慣れていき、計画は順調だった。
しかし最近まんばからの熱が低いことを感じる。
それは長義にとって不都合で、だからもう強引にでもこちらに向かせることにする。

それに小田原時代に奪った物だけでは足りない。
もっと欲しい、混ざり合いたいと思い、まんばに口づける。



まんばサイドに戻る。

まんばはようやく違和感の正体に気づく。
長義の瞳が綺麗な深い青のはずなのに、そこには青に緑を溶かし込んだような色が映っている。
まんばはそれをよく見たことがある。まんばの瞳と同じだった。

まんばの瞳は青とも緑とも付かないような色。
しかし遥か昔は緑だった。
実は長義は小田原時代、まんばと自分の瞳(人間と違って物理的に目があるわけではないので霊力みたいな感じ)を片目だけ交換している。長い時を経て混ざり合ってしまったので今更元には戻せない。
既に小田原時代からまんばのことはそれほどまでに執着していた。

二振りの瞳はほぼ同色でまんばはほんの少し緑濃い目、長義はほんの少し青濃い目。
交換当初はオッドアイになっていたが、既に混ざり切ってるので両目とも同じ色。

まんばは遠い記憶で綺麗な澄んだ青を見た気がしてたから、深い緑青の瞳に違和感があった。
ずっと感じていた違和感はそれだった。

「もっと本気で来なよ。取り戻すんじゃなかったのかな?」

まんばは本能的に取り戻すのは不可能と理解する。
その上、これ以上踏み込んではいけないと察する。
だけど同時にこのまま長義を一人にはさせられないと強く思う。

まんばは奪われた物がわかった、取り戻せないこともわかったと告げる。
本歌は逆上し、「奪い返したいと思わないのか!」「もっと俺を求めろ!」「どうしたらお前は俺の側にいるんだ……!」とまんばに縋る。
本歌はまんばに自分と同じくらい熱を持ってほしい。執着してほしい。

まんばはもう奪われた件はどうでもいい。
「あんたが望むなら、側にいよう。」と告げる。
まんばにとっても本歌の隣は心地いい。
だから側にいてやらんことない。
そして二振りはちょぎくにになりましたとさ。

めでたしめでたし。お疲れ様でした!