三日月に片想いしてるまんばに片想いする長義の話(ピュアピュア本歌さん)【ちょぎくに、みかんば】


ちょぎくに(みかんば含む)

長義くんは顕現時からまんばくんに恋してた。だから他の本丸に比べ、写しに若干優しかったし、『偽物くん』などと呼んだこともなかった。本歌と写しとしてとても良好な関係を築いていた。しかしその所為で困った事態に発展してしまう。

ある夜まんばくんが部屋に訪ねてきた。深夜の訪問に内心ドキドキしつつ用事を尋ねる。まんばくんは思いつめた顔をしており、いやが応にも期待が高まる。
しかし長義くんは奈落の底へと突き落とされる。
「実は、三日月の事が好きなんだ!」
高練度で、頼りなる、何でもできるスーパーマンのようなあの天下五剣に惚れていると言うのだ。
まんばの用件はこうだった。
三日月の事が好きだが近づけない、恋人になりたいなど分不相応な事は言わないがせめて仲良くなりたい、しかし人付き合いが苦手な自分はどうすればいいかわからない、とのこと。そこで本歌を頼ってきた。
「本歌しか、頼れるやつが、いなくて……
か細い声でそう言われて、長義くんは打ちのめされた。気づいたら、大船に乗ったつもりで任せておけ!と答えていた。その夜は少し泣いた。

次の日から本歌と写しの三日月と仲良くなろう大作戦が始まった。しかし試行錯誤するもなかなか上手くいかない。三日月はしっかり者のため、みんなから頼りにされて忙しない。まんばが話しかける隙がない。
「どうせ写しの俺なんかが、名刀中の名刀、天下五剣に話しかけようなんて烏滸がましかったんだきっとこのまま諦めろって神さまが言ってるんだ」とまんば(付喪神)が落ち込んでしまう。長義は絶好のチャンスのはずだが、落ち込んでいるまんばを見て「大丈夫、きっとこれは神さまが与えた試練だ、だからこれを乗り越えられればきっと希望が見えてくるはずだ。」と慰める(付喪神)。
しかも長義は自分で買って来た団子を三日月に渡し「写しが大好物なんだけど今日は遠征でいかなければいけない。一緒にお茶してやってくれないかな?」とお膳立てしてあげる。
その甲斐あって、徐々にまんばと三日月の距離が縮まって行く。茶飲み友達まで発展した。まんばはいまだに上手く話せないようだが、三日月は沈黙は気にならないらしい。たびたびまんばは長義に「三日月とこういう事を話した」とか「三日月はこれが好きらしい」などと嬉しそうに話す。
それに付き合い、うんうんと話を聞いてあげるが、内心は悲しくてしょうがない。まんばの事が好きなのに、想い人がいて、しかもそののろけ話を聞かされるなんて、なんという苦行だと思う。だけどもうここまで来たら隠し通すしかなくて、長義はにこやかに話を聞く。まんばからの信頼を無くす方が怖い。
もうここから長義くんは動かないので、まんばくん視点で。

まんばは三日月と仲良くなれて満足だった。少し前までは話しかけることもできなかったのに、今では一緒にお茶を飲めるまでになった。すべて本歌のお陰だ、と日々感謝している。
ある日万屋に行くと、ラッピングされたチョコが売ってて、バレンタインとでかでかと店頭に出ていた。まんばはそれを見て「告白なんてことはできないが、日頃の感謝を込めてとか言ったら渡せるかもしれない」と思う。茶請けの感覚で軽く渡せばいい、と言い聞かせてまんばはチョコを物色する。
三日月に相応しいチョコ、と考えるとどうしても高級なチョコを選んでしまったのだった。

そして、バレンタイン当日、まんばは三日月に「今日は世話になったやつに感謝する日だから」と高級チョコを渡す。三日月は少し驚いた後「他の者には渡したのか?」と聞く。まんばが否と答えると、三日月は「気持ちは嬉しいが、これは受け取れない。」と断られる。
まんばはショックで、気が付くと自室に帰ってきていた。あの後どうやり過ごしたのか覚えてない。恐らく本命チョコだと見破られた為、告白される前にと予防線を張られたのだ、と気付く。

次、おじいちゃん視点を少し。
三日月はまんばのこと「危なっかしい子だな」っていう印象だった。よく話すようになると「目が離せない子だな」に変わった。まんばからの好意は気付いていたし、まんざらでもなかった。むしろ健気さに好感を持った。
だけど三日月はもう一振りの事も気付いてた。それはまんばの事を本当に大切に大切にしている目で、赤の他人の自分にさえそれが伝わってきた。同時に敵わないなとも思った。

まんばからのチョコは嬉しかったが、彼を差し置いて自分がもらうのは卑怯な気がして受け取れなかった。本当は義理だという名目だとしても受け取りたかったし、何なら本命と暴いても良かった。
だけど彼と比べてしまうと、自分は本当にまんばを愛しているのか?と疑問に思ってしまい、胸を張って肯定できなかった。まんばのために自分の気持ちを抑えてまで捧げられるかと問われると首を捻った。そこまでの想いがあるとは言い切れない。だから受け取れなかった。

次視点戻るよ。

まんばは一振りでショボくれてて、夕食に来なかったから心配した長義くんが様子を見に来る。まんばは長義に全部話して「自分が欲張ったからだ」「茶飲み友達で十分だったのに」「自分の欲を見透かされた」って懺悔して泣く。長義は千載一遇のチャンスなのに素直に喜ぶ事ができない。まんばが泣いてるのがつらい。「俺にしとけよ」とか「お前の事がずっと好きだった」とか言えば弱ってる状態だとコロッと落ちるかもしれないのに、そんな真似できない。でもまんばが振られて喜んでる自分も確かにいる。その罪悪感のせいで、慰めの言葉も掛けられず、側にいることしかできない。長義はずっとまんばの手を握ってあげてる。

その数日後、何故かまんばはまた三日月と茶飲友達に戻ってて、長義は「???」ってなる。まさか振り向いてもらえたのか?と思うが、知る術がない。
まんばが三日月と再び話せて嬉しそうに笑ってて、長義はよかったなって思う。

しかしその夜、まんばがいつものように訪ねてきて「三日月と上手くいったんだな」と言うと「ああ、今まで通り茶飲み友達に戻れた。長義のお陰だ。」と言われる。そのニュアンスに訝しんでいると、まんばが「あの日長義がずっと側にいてくれたから、吹っ切れた。ありがとう。」と微笑まれる。今までその笑顔はいつも三日月のことを話す時の笑顔で、自分に向けられたことはなかった。すごく嬉しくて長義は思わずまんばを抱きしめる。「よく頑張ったな」と言うとまんばからも抱き返された。
そこで我に返った。
(思わず抱きしめてしまったが、俺の気持ちが伝わってしまったのでは?いやいや、これは本歌として、保護者として、一番の相談者として、労いの意味を込めての抱擁であり、他意はないと言えば問題ない。しかしここで弁明するのも怪しい。なんて言えば怪しまれないか?そのまま放したら不自然か?というかこの赤い顔を見られたら鈍感な国広でも絶対に気がつくだろう、それはあってはならない。例え三日月に振られたからと言って、今まで相談してた相手から懸想されてたなんて知られるわけにはいかない。というか放すタイミング完全に失ってないか?なんでもないように平然とした態度で「よかったな」って頭を撫でて放してやるのが自然だったんじゃないか?今更どうすればいいんだ!)と悩む。

しばらくするとまんばが「そろそろ離して欲しいんだが」と言う。慌てて解放すると、まんばは俯いているが、顔は真っ赤だった。とても可愛い、と長義は内心ほんわかしていたが、まんばに「用事を思い出した!」と明らかにこじ付けのような理由で避けられる。
以前は毎日のように相談に来ていたが、しばらくまんばが来なくなる。接点がなくなって寂しい。会うのはご飯の時や出陣や遠征で一緒になった時だけ。
しかし長義はまんばと南泉が親しげに談笑してるのを見てしまう。小突いたり冗談を言い合ったり、まるで恋人同士のようなやりとりで、長義は再び奈落の底へと突き落とされる。しかも今回は古馴染みの南泉で、明らかに格上の天下五剣とは違う。だからなんであいつなのかと疑問が強い。
元々自分の方が親しいのに、自分の方がまんばのことを強く想ってるのに、なぜあいつなのか、という感情ばかりが募る。長義は悲しい気持ちに包まれた。
その日にまんばが長義の部屋に訪れる。また恋の相談だろうか、と思い、様子を伺う。あの時と同じように思い詰めた表情で、言いづらそうにしているので長義は助け舟を出す。
「最近楽しそうだな、好きなやつでもできたのか?」
「えっ……!」
まんばはどうしてそれを?と言わんばかりに目を見開いてる。やっぱりな、と胸がズキズキしながら続ける。
「俺はお前の相談役だからな、何でも話せばいい。」
「そう……か、そうだよな……。」
まんばは俯いたまま何も話さない。話しやすい雰囲気を作ったつもりだったが、シャイなまんばには足りなかったようだ。口を開いては閉じを繰り返している。
「相手は南泉だろう?」
「えなんで……?」
「見てればわかる。でも随分仲が良さそうだったじゃないか。あれなら別に相談なんて……
「あんたに何がわかるんだ!!」
急にまんばが声を荒げる。そしてそのまま出て行ってしまう。
なぜ怒るのかわからないながらも、このままではいけないとまんばを追いかけて捕まえる。
「国広、何か気にさわることを言ったか?すまない。」
覗き込むとまんばは微かに目に涙を溜めていてぎょっとする。
「俺は!あんたのことが好きなのかもしれないって悩んでたのに!」
まんばは三日月に振られたばかりなのに、長義に惹かれてると気づき戸惑っていたらしい。本歌としての親愛なのか、今まで相談役として頼ってきた信頼なのか、悲しい時に側にいてくれた縋る気持ちなのか、抱きしめられた事に驚いただけの気持ちなのか、本当に愛しているのかわからなかったらしい。
だから落ち着きが取り戻せるまで、顔を見ないようにして、悩んでいた。確か長義と南泉が親しかったと思い出したまんばは、南泉から見た長義の印象を聞いてみた。そこで自分とはだいぶ印象が違うんだな、と思う。とにかく参考にはならなかった。
だけど長義に会いたくて、自然とここに足が向いたらしい。だけど答えが出ないまま何を話せばいいかわからず、そしたら長義に見当違いなことを指摘されてショックを受けたとのことだった。
長義はついにまんばに気持ちを打ち明ける。
「俺は、顕現した時からお前の事が好きだった。」
三日月の事が好きだと知った時の衝撃、頼りにされて嬉しかった気持ち、三日月とのことがうまく言った時の慈愛と悲しみが入り混じった感情、振られた時少し嬉しく思ってしまった汚さ、まんばに避けられた時の寂しさ、すべて話した。
「だからお前の気持ちの整理がつくまで待つよ。生憎、待つのも振られるのも慣れてる。」
と笑う。だからお前の好きな時に部屋を訪ねておいで、俺は毎日でもお前に会いたい、と伝える。
本当なら相談してた時から好きだったとか、振られて嬉しかったなんて言わない方がいいんだけど、この本歌さんは駆け引きはしない派だし、すべて正直に話さなければフェアじゃないと考えているから、全部話した。
まんばは不思議そうに「待ってくれるのか……?」って聞いてきて、ここでちょぎくに(仮)ということになる。



毎日のように長義はまんばとお茶をする。まんばは口数が多い方ではないので、沈黙の方が長い。

長義がちらりとまんばを見ると、目が合い、まんばが真っ赤になって目をそらす。
(かわいい……。)
長義は今幸せの絶頂にいた。
まんばと両想いではないので、手は出してない。ただの茶飲み友達。だけどこんなかわいらしいまんばを間近で見えるだけで幸せ。長義は十分満足していた。
が。
そこに三日月が乱入してくる。
以前のように一緒にお茶が飲みたいと。まんばは快く了承する。
「どういうつもりだ!」
長義は三日月が一振りの時に問いただす。三日月はまんばを振ったはずなのに、なぜそういった行動に出るのかわからない。
「なに、まだ付き合っておらんようなので、お主の気持ちもその程度かと思ってな。一度は身を引いたが、りべんじしても構わんだろう?」
元々好きだった三日月に言い寄られたら、勝ち目がない!と長義はそう悟る。しかし長義には打つ手がない。まんばは長義の気持ちを知ってるし、了承しないということは、何とも思ってない、好きだと確信がないということだ。
何かを頑張ろうにも何を頑張ればいいのかわからない。無理に言い寄って嫌われるのは嫌だ。現状は維持したい。
そもそも自分はこのままで十分なのに、三日月がしゃしゃり出てくるから、と頭を抱える。

長義の心配通り、三日月とまんばはドンドン仲良くなっていく。(元々茶飲み友達なので仲はいい。)まんばを独り占めできなくなったうえ、強力なライバルまで現れて、長義は沈んでいた。
ある夜、まんばが長義を訪ねてくる。何か言いづらそうにしている。とりあえず部屋にあげるが、大体予想は出来ていた。
『やっぱり三日月の事が好きだ、だから長義の気持ちには答えられない。』
話しやすいように先回りしてあげたいが、さすがに自ら振られる言葉を言うのは躊躇う。
まんばは正座してちょこんと座り、チラチラと長義の様子を伺っている。普段なら可愛らしい仕草も振られるとわかっている今は絶望のカウントダウンでしかない。
ようやくまんばが口を開く。
「あ、の……、最近、長義と二振りきりになれないから……。」
「えっ」
「さ、み、しくて……
そこまで言うと真っ赤になって俯き黙り込んでしまう。長義は幻聴だったのかと己の耳を疑う。
ここの長義くん、一度失恋を味わってるから、結構弱気なのよ。高慢が地の癖に、夜訪ねてきたまんばくんに三日月が好きって言われた衝撃が尾を引いてて、強く出れないんだよ。
幻聴だった、やっぱりあの後何のアクションもないから、国広は何もまだ言ってない、俺の妄想だった、って考えてるとまんばくんがチラッて長義くん見て、
「会いにきたら、迷惑だったか……?」
って言うから、

(幻聴じゃないーーーー!!)

って驚く。
迷惑じゃない!嬉しい!って言うとまんばくんはホッとした顔を見せる。かわいい。思わず自然と身体が動いてなでなでするとまんばくんが嬉しそうに「こうやって触れて欲しかった。」って言って、(意味深……!)ってなる。
いや、他意はない、国広に他意はない、きっとなでなでが嬉しかったに違いない、ってぐっと抑えるんだけど、まんばくんが続けて爆弾落とす。

「ぎゅって抱きしめて欲しかった。」

そこで長義はしんだ。


気がつけばまんばに介抱されていた。気を失っていたらしい。まんばが心配してくれてる。下からだとまんばの顔がよく見える。心配する顔もかわいい。
「国広、さっきのはどういう意味なんだ……?」
そう問うとまんばは顔を真っ赤にして目を逸らして言う。
「にぶちん……。」
「は!?」
「長義のこと好きだって言ってんだ!」
「な……!」
天にも昇る気持ち。ジ・エンド・オブ俺。
「夢じゃないな!?」
「折角勇気出して言ったのに夢にしてもらったら困る!」
「俺が作った幻覚でもないな!?」
「あんた俺を何だと思ってるんだ!」
「嬉しい!嬉しい!国広、幸せにするからな!」
まんばはあまりの喜びように呆れつつ苦笑する。

ちょぎくにハピエン!お疲れ様でした!