木蔦(キヅタ)
2019-03-10 16:46:05
1427文字
Public ちょぎくに シリアス
 

顕現前の期待が大きすぎて、本歌が素を見せられない話。【ちょぎくに】


本歌さんは顕現すると目の前に写しがいて、「本歌だ、ようやく会えた」「かっこいい」「さすが本歌だ」と褒め称える。
本歌は最初は気分を良くして「まぁな」「本歌たるもの当然だ」とか言ってたんだけど、写しが「やっぱり本歌は真面目で、誠実で、頼りになる」「振る舞いも優雅で、気品がある」とか言い始めて、少しドキドキしながらも背筋がピンとなる。
つまりレッテルを貼られてしまってて、期待されてそれに応えなきゃって言う、ある意味「もてあた」精神が働いて、必要以上に頑張ってしまう。
そんなことに注力しているもんだから、まんばとのギスギス回想や偽物くん呼びもなく、『誠実で真面目な本歌』として本丸に馴染んでしまった。

無理して背伸びをするとストレスは溜まるもので、部屋で一人くそくそ毒を吐くことで発散する。
しかしそれを写しに見られてしまい、咄嗟にまんばを拘束する。

「この事は誰にも言うんじゃない、わかったな?」

というと写しは何度もコクコクと頷く。
ここのまんばは本歌に相当傾倒していて、もはや無条件で慕っているレベル。(くそくそすら何か神聖な念仏だったのではと本気で思っている。)

「この事を誰にも言うなって、誰も知らないのか?」
「知らない」
「俺と本歌だけの秘密なのか?」
「ああ。」

肯定すると花が綻ぶような笑顔を見せる。
脅したのに何故笑顔??と本気で本歌は理解できない。

「絶対に俺と本歌の秘密な!」と言って部屋を出てってしまう。呆気に取られた本歌はよくよく考えてみたらあれは誰かに言いふらしてやろうという悪戯の笑みだったのでは?と思い始める。
しかし待てど暮らせど誰かに話した気配はない。なんやかんやあり、写しと本歌は仲良くなっていく。


まんばくんは盲目的で本歌を慕っていて、一方本歌は徐々にまんばくんの前では素を見せるようになる。
だけどある日蜂須賀とまんばが話してるのを本歌が聞いてしまう。

「理想の本歌が来てよかったじゃないか」
「いや、そうでもない。」
「あんなに誠実で真面目で、君に優しいのに?」
「まぁ、な。」

本歌はそれを聞いて血の気が引く。
まんばに素を見せてもいいかもしれないと思いかけていたのが裏切られた気分になる。
今までもてあた精神で頑張ってきたみんなへの振る舞いも全部無駄な努力ように感じて、本歌はどす黒い感情を抱く。

まんばくんに「俺なんかが来てさぞ残念に思っただろう!」とか「理想の本歌じゃなくて悪かったな!」とか怒鳴るんだけど、まんばは控えめに言って天使で「俺はあんたでよかったと思ってる」「最近俺に本当の本歌を見せてくれて嬉しい」「だけど本当のあんたの自由を奪ったのは俺だ。それがつらい」と言い連ねる。まんばくんは本歌に盲目的だけど、どんな本歌でも嬉しかった。

ただ最初に自分の思い込みを押し付けてしまったから、それを演じてくれてるんだって気付いて悲しかった。
だからそれをずっと気に病んでた。

蜂須賀に「よかったじゃないか」って言われた時に、「君が望んだ理想を本歌に押し付けて、本歌はそれ通り演じてくれて、君にとってはよかったじゃないか」って言われているようで、罪悪感でチクチクしてた。(ただし蜂須賀は本当のことは知らない。)
だから否定したし、このままでいいとは思ってなかった。
「だからごめん」と写しに涙ながらに謝られて、本歌はどす黒かった気持ちが解けて行くのを感じるのだった。