前回までの内容はこちら
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※一応コメディです。
※何を読んでも文句を言わずにそっ閉じできる人向けです。
※始終まんばくんが本歌に対してドン引きしてます。
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あれから俺は悩まされている。
何にって、他でもない己の本歌に。
あれからというもの、本歌は何かにつけて俺に構ってくる。
最初に顕現した時は、高圧的で、高慢で、厭味ったらしくて、上手くやっていけるか心配だった。
あと嫌われているという自覚もあった。
しかし本歌の教育を長船派に頼んだところ、彼は恐ろしい変貌を遂げてしまったのだ。
ホストかと思うほど歯の浮くセリフを言う軟派な男になってしまった。
この前の遠征帰りにも
―――
「国広、おかえり。お前がいない本丸は寂しかったよ。」
「そういうのは女に言ってやれ。俺に構うな。」
「お前だから言うんだよ。ああ、怪我はないかな?」
「ない。ただの見回りだ、出陣でもないんだから敵と遭遇する確率は低い。」
「そうか、大事な俺の写しに怪我でもあったらと思うと気が気じゃない。」
彼はそっと自分の手を取り、己の頬にあてる。
頬ずりするように顔を傾けた。
ゾゾゾ
…
背筋に悪寒が走った。サブイボとも鳥肌とも表現できる。
「は、離せ
…!この前から何なんだあんた、俺のこと気に食わなかったんじゃないのか!」
「気に食わないなんてとんでもないね。気に入りはすれど、食わないことはない。」
「はぁぁ??『偽物くん』って挑発して来たのは何だったんだ!」
「あれは若気の至り、かな?」
「わかげ
…?」
お前そんな歳じゃないだろう
…?というツッコミは心の中だけにしておいた。
もういい、頭の狂った本歌と話していても埒が明かない。
さっさと主に報告をして、自室に戻ろう。いやその前に持ち帰った資材を仕舞わなければ、と持ち上げた。
しかしその資材はすぐに目の前に浮く。
驚いていると、先ほどの男がにっこりと笑って言った。
「持つよ。」
今思い出しても寒気がする。
女じゃないんだ、重い資材だって持てる。
なんなんだあの本歌は。
もしや女神の泉に落としてしまい、正直に本歌を落としたって言ったせいで、あんなキラキラした真面目で歯の浮くような本歌が貰えたのか?誰だ落としたのは、取り返して来い。
何にしても怖すぎる!
それにこの前は朝に
―――
うちの本丸では、朝餉は空いてる席にそれぞれ座る。
早朝遠征に出る者、内番がある者、非番の者、昨夜夜戦だった者、いろいろいるため、朝食は各自バラバラの時間だ。
今日は兄弟もいないため、俺はぼんやり一人でご飯を食べていた。
本歌がおかしくなってしまった件はどうしようか。
主は知っているんだろうか、ホストになってしまった件を。
息を吸うように、女性を口説く言葉が出てくる本歌を。
写しにあんなことを言うくらいだ、他に被害が出ていてもおかしくない。
本丸内の風紀が乱れるんじゃないか?
もしや既に複数の刀剣と付き合っているという事はないだろうか?
近侍として刀の教育を任されているのに、なんてことに、と頭を抱えた。
この前ホストが何たるか、自分なりに調べてみた。
ホストは女性に貢がれる職業で、自分の店でドンペリという高い酒を女性の金で注文し、楽しく宴会するという。
どういう宴会なのかあまり想像できないが、金がかかりそうなのは確かだ。
「隣、いいかな?」
「ひっ
…!俺は金を持ってない!ドンペリも頼まない!」
「まだ寝ぼけてるのかな、俺の写しちゃんは。」
渦中の声が傍でして、思わず声を上げてしまった。
一瞬周りのみんなが俺に注目するが、何でもなかったとわかると、それぞれの会話を再開していく。
本歌はクスッと笑って俺の隣に腰掛けた。まだいいとは言ってない。
それに『写しちゃん』ってなんだ、『写しちゃん』って。
あと寝起きでぼんやりしていたが、寝ぼけてない。
このホストがドンペリ片手に朝餉を食べるのも時間の問題だ
…。
「その出汁巻き卵、」
「なんだ、欲しいのか。やらないぞ。」
俺の皿を覗き込むので、まさか本歌がおかずを摘まもうとするわけはないと思いつつ、少しだけ腕を上げガードする。
朝餉は大事な一日の活力源だ。おかわりしたいくらいなのに、人にあげてなるものか。
それにこれは既に箸を付けてしまったので、人にあげるのは衛生上良くない。
「国広はその出汁巻き卵、美味しかったか?」
「美味しかったが、なんだ、そう言ったら俺のを摘まむのか?あんたの分はそこにあるだろう。意地汚いぞ。」
「違うよ、お前のを盗ったりしない。でもそうか、美味しいんだね。良かった、お前は和食が好きだと聞いたから作ってみたんだ。」
「これを
…!?本歌が
…!?」
驚きの余り、本歌と出汁巻き卵を交互に見る。
この出汁巻き卵はふんわりして、味もしっかりついてて、焦げもなく、俺好みの味だった。
顕現したばかりなのに、料理の腕が良すぎないか、歌仙か燭台切が作ったんだと思うくらいすごかったぞ
…!?
もしかして長船派はみんな料理上手なのか
…!?
そんなことを考えているとスィと顎を掬われた。
「好きな子の心を掴むのは、まず胃袋からってね。」
ニコっと本歌が笑う。
近い、距離が近い。
目の前の本歌の顔にびくびくするが、頬から何か取られて、お米が付いてたよ、と言われる。
普通に取れ。
(キ、キスされるかと思った
………)
と不覚にもドキドキ
―――ではなくガクブルしてしまった。
―――という出来事があった。
「兄弟、最近どうかしたの?悩み事?」
昼下がり、縁側でぼーっとしていると脇差の兄弟が話しかけてきた。
いつも和泉守と一緒なのに、一振りなんて珍しい。
「
……いや、なんでもない。」
「話してくれればいいじゃない、僕達の間で隠し事はなしだよ。」
「
…………」
「布を全部取り上げるよ、明日は良い天気なんだって!歌仙さんが
……」
「実は!」
ある程度話すと兄弟は気持ちを察してくれたのか、俺の肩に手を置いた。
「兄弟、大変だったね。」
「ああ
…。」
「兄弟が苦労していると知って、黙っているわけにはいかない。僕に任せてくれないかな!?」
「え
…」
「僕なら上手くやれると思うんだ、ほら、兄弟はその
…口下手な所もあるし
…。」
「そこは本当のことだから気を遣わなくていい。でも兄弟に迷惑が
…。」
「兄弟だもの!水臭いこと言いっこなしだよ!」
若干『兄弟』というワードがゲシュタルト崩壊しそうになる兄弟会話だったが、とにかく兄弟は快く本歌の事を引き受けてくれた。
これでもう本歌はあんなおかしなことを言わなくなるだろう。
近侍として人間関係
―――いや刀剣関係に色々悩まされてきた。
今回は自分が当事者で、解決に難がありそうだと思ったが、兄弟に任せれば百人力だ。
(ひと安心だ
―………)
そして、俺は再び後悔することになる。
一週間ほど、二振りの兄弟と本歌の姿を見なかった。
主に聞いたところ、山に修行で籠っているとのことだ。
そうか、ナヨついた精神を山で鍛え直すのか。
山は良い。全てを浄化してくれる。
きっと本歌の軟派で浮ついた精神を鍛え直してくれるはずだ。
そう思っていたのだが。
「国広!会いたかったぞ!!」
帰ってきて早々抱きしめられた。
「!?
……………!!?」
「お前も嬉しさで何も言えないんだな!わかるよ」
驚きの余り何も言えないでいると本歌はニコニコ笑って続ける。違うそうじゃない。
「カッカッカッ!本歌殿は誠に男らしくなられた!」
「そうそう!これで兄弟の悩みも解決だね!」
「え??解決?何が??」
もう抱き着かれている時点で何も変わってない。
一体何が解決したって言うのか。
「だって兄弟は軟派な男より硬派な男の方が良いって悩んでたでしょ??」
な ぜ そ う 捉 え た 兄 弟 。
「俺は本歌がおかしくなってしまったことを話したのであって!!」
「だからその軟派な態度が嫌だったんだよね?」
「う
…そうだが
…。」
「兄弟は山伏兄さんみたいな硬派な人好きでしょ?」
「確かに、兄弟は好きだ
…が
…」
「じゃあ本歌さんは硬派に生まれ変わったから大丈夫だよ!僕達がみっちり教育しておいたから安心して!」
それのどこをどう安心しろと?
というか硬派な男はいきなり人に抱き着かない気がするんだが、誰もそれを指摘しない。
むしろ「いやよかったよかった!」と笑っている。笑いごとじゃない。
「どうだ国広、俺はお前の好みな男になれたかな?お前、筋肉好きだろう?」
腕を出し、俺の手を引きそこに添えた。きっと山で鍛えてきたんだろう。
「まぁ、好きだが
…」
しかし悲しいかな刀剣男士は鍛えても急激に標準から変わることはまずない。つまり本歌の筋肉は前のままだ。
確かに俺も筋肉が欲しくて鍛えてはいる。筋肉は良いものだ。鍛えても簡単に付かない事は知っている。
筋肉は好きだ。
筋肉は。
「わー!好きだって!」
「目出度いな!今日は赤飯だ!!」
「厨当番に伝えなきゃ
…!」
兄弟たちの反応にぎょっとする。待ってくれ俺は筋肉が好きだと言っただけで、決して本歌のことを好きだと言ったわけじゃない。
ちょっと待ってほしい。
しかし俺が止める間もなく、二振りは駆けて行ってしまった。
「さすが御兄弟が言った通りだな、筋肉はすべてを解決してくれる。」
本歌が悟りきったようにそんなことを言う。
違う、俺の本歌はそんな脳筋な事言わない!!
高圧的で、高慢で、厭味ったらしい本歌を返してくれ!
「国広、今度山籠もりデートしよう!」
絶対に育て方を間違えた!!
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