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ひかる
2024-12-15 11:55:58
1610文字
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これは嫉妬じゃないからな
「こ、こんなところ男だけで来ていいのか
…
?」
店に着くなり怯えた声を出す若造に、笑いそうになるのを必死に堪えながら、大きく頷いてみせる。
「確かに少ないが、全く男性が来ないというわけでもない。現に予約が取れているんだからね。ほら、入った入った」
「ヌンヌン!」
一人と一匹、いまだにキョドキョドと周りを見回すロナルドくんを、おしゃれな扉の向こう側へ押し込んだ。
それは、突拍子もない若造の発言が発端だった。
「なんか、ジョンのお茶があるらしいぜ」
「ジョンのお茶?」
「聞こえたんだよ、一瞬だけだけど、『ぬんちゃ』って! ヌンってジョンのことじゃね!?」
ぬんちゃ。
「んブフッ!」
世間が言うヌン茶といえば、アフタヌーンティーのことじゃないか。
いや確かに。流行にも疎い若造にとって、ヌンといえばプリチーで至高の我が愛しの使い魔、ジョンしかいないのかもしれないが。
ジョンのお茶が発売になっているとしたら、真っ先に私が自慢するに決まっているだろうに。
「ヌン茶か、あれは良いものだな」
「! お前も知ってんのか!」
もちろんと大仰に頷く私に目を輝かせて、若造はこう言った。
「俺も飲みたい! なあ、ジョンも連れて飲みに行こうぜ!!」
そういうわけで、冒頭のやり取りに戻る。
つまり、ヌン茶がアフタヌーンティーのことだと知らないままの若造を、私とジョンでアフタヌーンティーに連れて来たのである。
通された席は、丁寧に作り込まれ、ライトアップも施された庭が見える席だった。
最初のドリンクを聞かれて、紅茶の種類がまるでわからないロナルドくんの代わりに、いつも飲ませている種類の茶葉と、自分のためにホットミルクを注文する。
ジョンはロイヤルミルクティーを自分で注文していた、さすが、できるマジロである。
「なあ、今注文したのがジョンのお茶なのか?」
「まあ、少し待っていたまえ」
コソコソ話しているうちに、三段のケーキスタンドが運ばれてくる。
そこには、スコーンやサンドイッチ、色とりどりのスイーツが所狭しと並べられていた。
「うわぁ
……
!」
「ヌー!」
見た目も華やかなそれらに、ロナルドくんもジョンも子供みたいに目を輝かせている。
「さて、答え合わせだ。ヌン茶とはすなわちアフタヌーンティー。この、紅茶をいただきながら軽食も合わせていただく文化だな。まあ本来は、時間も夕方と決まってはいるのだが」
「あっ、えっ
…
!? アフタヌーンティーでヌン茶
……
!? あ、ティーがお茶ってこと!?」
真相に気づいた若造の顔は、普段着ている仕事着に負けず劣らず真っ赤になった。
「えっ、どうしよう、俺こんなの食べ方わからねぇよ
……
」
てっきり、知ってたなら最初から言えと殺されるかと思っていたが、どうやらロナルドくんの興味は目の前の料理に移ったようだった。
「この、固いパンみたいなやつ。見たことはあるけど、そのままかじっちゃダメなんだろ?」
「スコーンな。
……
仕方ない、いいか、よく見てろよ」
まだほのかに温かいスコーンを手に取り、真ん中から真っ二つに割ってやる。
「これはクロテッドクリーム。バターに違いが、乳脂肪分がバターより少なくてあっさりしている。これを少し厚めに塗る。それからジャムな、これを先程塗ったクロテッドクリームの上に乗せて、ほら」
自分は食べないので、若造に渡すべく差し出してやる。
すると。
「あむ」
「なっ
……
!」
このバカ造、よりによって受け取らずにそのまま食べやがった!
しかも。
「うん
……
うまいな」
なんて、へらりと笑いおって。
「
……
せめて自分で持って食べたまえよ」
「あ、悪い悪い」
かじりかけのスコーンを受け取り美味しそうに頬張る若造に、少しのモヤモヤ。
後日、ケーキスタンドは無いながらも、色とりどりのスイーツとスコーン、クロテッドクリームまで手作りして食べさせたのは、また別のお話。
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