三毛田
2024-12-15 11:17:43
2563文字
Public アドベント24
 

15. おでことおでこを合わせる

15
ぶつかっると痛いけど、くっつけるのは愛しい

「うっ」
「あうっ」
 丹恒が手抜き雲吟で濡らした床を、なのと三人で拭いていたら丹恒とぶつかった。
 拭いたばかりの床に、二人で座り込む。
 きちんと拭いた後でよかった。
 そうじゃなかったら、お尻が濡れていただろうし。
 というか、さっきの勢いだともしかしたらキスしてたんじゃ!?
「そんな。パムも、なのもいるのにっ」
「何の話だ」
 両手で顔を覆い、体をくねらせているとわき腹をどすどすされた。地味に痛い。
「え? 丹恒と、ちゅーしそうだったって話」
「顎に頭突きした方がよかったか?」
「今日の丹恒、ちょっと塩じゃない?」
「お前が掃除当番を手伝ってくれと泣きついてきたから、手伝っていたんだが?」
「手抜き雲吟が?」
「手抜きじゃない。いつも通り水で濡らしているだけだ。今日は、お前に泣きつかれてからパムの許可も得て使っている」
 そう言われてラウンジを見ると、確かにいつも置いてある植物たちはソファーの上に避難されている。
「なんだ。俺も、ただ何も考えずに雲吟を使っているわけじゃない」
 むすっと頬を膨らませ、俺を見て。
「ちょっと。イチャイチャしないで、ちゃんと掃除して!」
「はーい」
「別にいちゃついてはいない」
 なのに怒られたので、モップを持ってきて綺麗に拭く。
 丹恒は不満そうに答えていた。
「丹恒、大丈夫だった?」
 掃除を終え、埃を落とすために一緒にお風呂に。
 なのはなので、自分の部屋で入っているようだ。
「お前こそ」
 ほんのり冷たい手が、俺のおでこを撫でる。
 その手をどかし、こつんと軽くおでことおでこをくっつけ合わせ。
「大丈夫。うわ。丹恒のおでこちょっと冷たくて気持ちがいい」
「お前の額は、温かいな」
「俺は平熱です。丹恒が、体温が低いだけ」
 ヘルタで色々検査してもら経ったときに、ちゃんと平熱だって言ってもらったもん。
 丹恒のもろもろをチェックしたデータも見せてもらったけど、低めだって言ってたし。
「このままちゅーしていい?」
「ああ」
 軽く額を離し、唇を重ねて。
「今日のご飯、美味しく食べられそう」
「たくさん動いたからな」
 ぐるんと泳ぐように体を反転させ、俺の歩座を開いて間に座って。
 それから、背中を預けてくる。
 いつもの俺たちが二人で入る時の体勢。
 時々エッチなことをしたい気分になるけど、今日は我慢。
「丹恒、うなじにキスしてもいい?」
「噛まなければ」
「じゃあ、失礼」
 ちゅっちゅと、産毛すらない綺麗な白いうなじにキスを。
 くすぐったそうな声が、小さく漏れる。
 鼻歌を歌いながら、もう一回うなじにキス。
 噛みたくなってきたけど、我慢我慢。
 噛んでいいのは、エッチなことする時だけ。気持ちよすぎて、意識がそっちに引っ張られている時しか噛めない。
 後から怒られるけど。
 ふわふわでふかふかな胸にそっと触れる。心音は、ちょっとだけ早い気もして。
「こら、穹」
「えへへ。触るだけなら、いいだろ?」
「それで済まさないのがお前だろう」
「今日はこれで切り上げるってば。お腹すいてきたし」
「それなら、そろそろ出るぞ」
「はーい」
 丹恒が勢いよく出ていく。勢いが良すぎて、顔にお湯がかかった。
 ドライヤーで髪を乾かすこと、させてくれるだろうか。
 この自分のことはズボラな恋人は、濡れていても適当に放っておいたり、雑雲吟で乾かすことがある。
 それだと手入れ中の髪によろしくないので、俺もさっさと出て体を拭いて服を着てからドライヤーを手にして丹恒に迫っていく。
 俺のベッドで熱浮羊乳を飲んでいた丹恒は、ナイトテーブルに瓶を置いて大人しく乾かされる体勢に。
「お前の髪も乾かすからな」
「はいはい。まずは丹恒が先ね」
 ヘアミルクをなじませ、軽く乾かしてからオイルを丁寧に塗る。乾かしたら、冷風を当てて髪型を整えて出来上がり。
 丹恒も、同じように乾かしてくれる。乾かし方を教えたかいがありました。
「丹恒」
 ドライヤーを片付けて、こちらに戻ってきた丹恒に手を伸ばす。
 素直に顔を寄せてきたので、おでことおでこをくっつける。
「どうした」
「今日はいっぱいおでこくっつけたから、くっつけたくなったんだ」
「お前の言動は時々よくわからない』
「わからないならわからないでいいよ。でも、丹恒が好きってことは変わらないから」
「そうか。俺もお前が好きだ」
 口元に笑みを浮かべ、それからキス。
「両想いだ」
「今更だな」
「今更だったとしても、ちゃんと確かめたいんだよ」
 むすっと唇を曲げると、どうしてか丹恒は笑って。
「なんで笑うんだよ」
「お前とこういうやり取りをしている時間が、ひどく愛しいと。そう思うようになったからだ」
「そっか。それはよかった」
 丹恒が、誰かに対してそう思うようになれたのが嬉しい。
 そして、それが俺だっていうのが特に。
「ご飯食べに行こう。ご飯食べて時間があったら、一緒にゲームしない?」
「そうだな。今日は、息抜きをしようと思っていたんだ」
「eスポーツは、パムとヨウおじちゃんが強いから他の二人だけでできるゲームね」
 そう言ったら微笑ましそうな表情に。丹恒ってば、すぐそういう表情を浮かべる。
 俺、そんなに子供っぽいかな。
「デザートもあるといいな」
「あったら嬉しいけどさ。俺ってそんなに子供っぽい?」
「いや。俺が、お前のそういう姿を見るのが好きだというだけだ」
 指先が、頬を撫でる。
 まだちょっと熱が残る頬を、冷たい指先が滑っていく。それが心地よい。
 おでこを合わせた時もよかったけれど、こうして体温の低い指が頬を撫でる時間も好きだ。
「丹恒って、俺が思っているより俺のこと好きだよね」
「ああ。俺も驚いている。が、存外悪くない」
 撫でた後、下へと滑っていき。
 するりと指が絡められて。
「さあ、行こう」
「うん」
 下の車両へ向かうと、皆もう揃っていた。珍しい。
 姫子ご飯じゃないから、そこは大丈夫そうだ。
「穹、丹恒。二人ともラウンジの掃除ご苦労じゃった。今日は、チーズタルトを焼いてみたんじゃ。試食を兼ねて食べてみて欲しい」
「わーい! ありがとう、パム」
「うむ」