こばと
2024-12-15 00:41:14
2189文字
Public その他二次創作
 

君は太陽(要×隼)二次創作

せとあめ先生のBL漫画「君は太陽」の要と隼の二次創作です。
お題:要と隼でお買い物
すみません、お題詐欺になりました。

 パイプベッドを背もたれに二人で並んで観ていたバラエティ番組は、ついさっきエンディングを迎えた。時刻は二十二時過ぎ、明日は朝からの講義もなくて、すでに夕飯も風呂も済ませてある。となれば、恋人同士の二人がすることなんて一つだろう。
 今さらムードもへったくれもないのは承知の上だが、それでも要なりにどんな風に隼を誘うかは、毎回頭を悩ませるところだった。友達だった期間が長すぎた弊害か、普通に過ごしているといわゆる甘い雰囲気なんてものとは程遠い、気安い二人。
 隣の隼の様子を窺うと、大学の友人が投稿していたショートムービーを観てげらげらと腹を抱えて笑っている。
 こういう時の隼は、恋人スイッチを入れてやらないとダメだ。手っ取り早いのは、キス。きっといきなり顔を寄せれば、驚きながらもそっと伏目がちに頬を赤らめ、要の部屋着のスウェットを掴んでくるだろう。
 想像した姿に勝手に煽られ、ごくりと唾を飲み込んだ要に隼はまだ気づかない。まずは釘付けになっているスマホを没収して、こっちを見てもらわなくては。この後の段取りを脳内で組み立てながら、要が身体の向きを変えようとした、ちょうどその時。
「あははっ、マジでこれウケる。ほら、要も見てみろって!」
「え、あ、うん……
「ほんっとバカだよな〜」
 目尻に涙を浮かべた隼が、要の太ももをバシバシと容赦なく叩く。そろりと伸ばしかけた腕は行き場をなくして、胡座をかいた膝に逆戻りだ。その後も何度かタイミングを逃し続けた要が、やけっぱちにこのまま押し倒してやろうか、なんて物騒なことを考え始めたところで「あっ!」と声を上げた隼がキラキラと瞳を輝かせながら要を見た。
「なぁ、アイス食べたくねぇ?」
「アイス? 何、急に」
「いやほら、さっきCMでやってた季節限定のやつ!」
「ああ、アレか……
 隼が好きなメーカーの限定フレーバー。このアパートから少し歩いた先にある品揃えのいいコンビニなら、きっと置いてあるだろうけど。その話、今じゃなきゃダメか? なんて、恨み節を聞かせるわけにもいかなくて、要はぼんやりと生返事を返す。
「あ〜〜ダメだ、言葉にしたら余計に食べたくなった! 俺ちょっと買ってくるわ!」
「は? 今からか?」
「おう、お前の分も買ってきてやろっか」
「いや、もう遅いし明日にすれば?」
「え〜〜今食べたいんだって! 夜更かしのお供に新作アイス、最高じゃね?」
 名案とでも言いたげににんまりと笑って見せた隼は、ベッドにもたれかけていた上半身を勢いよく起こして立ち上がると、部屋着のズボンをさっさと脱ぎ始めた。さっきから隼とのソウイウコトばかり意識していた要の目にはあまりに毒な、ボクサーパンツに包まれた丸い尻。
「おい」
「何だよ、アイスいるの? いらないの?」
「アイスは別にいい……じゃなくて」
「アイスは、って何だよ。酒か?」
「そうじゃなくて、いや、うん。はぁ……もういい、俺も行くから」
「ん、そうか? よし、じゃあさっさと行って帰ってこよーぜ!」
 自分ばかりが欲を持て余しているのが悔しくて、要は盛大なため息を吐く。でもこれが隼なんだよな、とも思う。
 この太陽みたいな笑顔に何度も掬い上げられてきた。いつだって暗がりを照らして要を導いてくれたのは、隼の存在だったから。結局のところ、隼が隼らしく自分の隣で笑っていることが、要にとっては何よりも大事なのだ。
「はいはい」
「ほら、早くしろって!」
「お前こそ、慌ててコケるなよ」
「ガキじゃないんだから、コケねーよ!」
 惚れた弱みと言ってしまえば、その通りだけど。でもそんな弱みすら、こいつから与えられるものならば悪くない。そんな想いがこもった、要のため息だった。

 ***
 
 コンビニに到着して、真っ先にアイスコーナーを覗きに行く隼の背中を追いかける途中で、要はふと目に留まった商品棚の前で足を止める。
 それは愛し合う恋人同士なら間違いなくお世話になるだろう、極薄のアレ。ひっそりと棚の隅に並んでいる有名メーカーのそれは、いつも要が使っている商品と同じものだ。そういえば、家にあったストックも残りわずかだった気がする。
「要! あったぞ、アイス! って、何見てんの?」
「ゴム。うちに置いてあった残り、あとどれくらいだったっけ」
「ゴッ……はぁっ? 知らねーよっ」
「いや、いつもお前が部屋片付けてくれてるから、覚えてるかなって思っただけなんだけど……もしかして、照れてるのか?」
「て、照れてるとかじゃねぇーしっ!」
……ふぅん。ま、いいや。足りないよりは多いほうがいいもんな?」
「は? ちょ、おい待て、二箱はさすがにいらないだろ……っ」
 隼が持っていた買い物カゴを奪って、上機嫌でレジに向かう要の背中を、顔を真っ赤にした隼が呆然と見送る。
 カゴの中にはお目当てのアイスが二つと、小さな四角い箱が二つ。こんなのを持って二人でレジに並んだら、いかにも今からヤリますと宣言するようなものだから、今さら追いかけるわけにもいかない。
 さらりと会計を済ませようとする要の彼氏力には、悔しいけれど完敗だ。隼は熱くなった頬を夜風で冷ますように、誰かさんの頭みたいな丸い月が浮かぶ夜空を見上げ、大人しく会計が終わるのを待つことしかできなかった。