らぎ
2024-12-15 00:00:33
582文字
Public モノノ怪
 

離坤ドロライ第四回「橋」「追う」

ホットチョコレートの話も入れようとしたんですが時間が足りず…。

ふと気がつくと、見知らぬ橋の袂にいた。
橋以外には、と坤の薬売りがぐるりと見回しても景色は薄らとぼやけ、欄干から身を乗り出しても水面すら見えてこない。
「坤」
呆然と欄干から見下ろす坤の薬売りを呼ぶ声が彼の耳に届いた。顔を上げると、十歩も歩けば手の届きそうな所に浅葱の着物を纏った薬売りが立っている。
「離の方」
「行きましょう」
離の方、と呼ばれた薬売りはそれだけ言うと、返答も待たずに踵を返して走りだす。坤の薬売りは慌てて後を追い駆け出した。ところがいくら全力で橋を駆けても一向に追いつかない。どころか徐々に彼方の背は遠く、此方の息は上がってくる。
「まって、りのかた、ッ」
「坤」
呼声だけは付かず離れず響き、坤の薬売りを焦燥へ追い立てる。
「坤!」
もう走れない、と倒れ込んだ刹那ひときわ強く呼ばれた声に坤の薬売りは跳ね起き───

「目覚めたか」
跳ね起きると真っ先に、今まで追っていた離の薬売りが視界に映った。表情の薄い彼にしては珍しく、気遣わしげな表情をしている。
「あっしは
「魘されていたようですが水でも飲みますか」
立ちあがろうとした離の薬売りに、咄嗟にしがみつく。
「此処に居てください」
「おや、今日は甘えたで。」
揶揄うような言葉とは裏腹に優しい腕が坤の薬売りの背に回る。規則正しく背を叩く感触が、鼓動と重なり溶けていった。