みずあめ
2024-12-14 23:36:24
1126文字
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獅子新

ちょっとミュネタバレかも。付き合ってる🦁🐰SS

部屋に帰った途端、玄関まで漂ってくるいい匂い! オレは思わずパッと目を見開いて「ただいま!?」と大きな声を上げた。靴を脱いで靴箱にしまうのすらバタバタしながら、急いでキッチンへと駆ける。
コンロの前、鍋の中身をぐるぐるかき混ぜる獅子丸が立っていて、オレは飛びつくようにその体にくっついた。反射的に返ってくるチッという舌打ちも気にせず手元を覗き込む。
「ただいま!」
「うっせ」
「めーっちゃいい匂いする! カレー?」
「カレー。手洗えバイキン野郎」
「洗う洗う。甘口?」
「んー。……ん」
「へ?」
「一口。中辛のルウも混ざってるから味見しろ」
「え、あ、えっと、」
なんの躊躇いもなく差し出されたスプーン。まだ濡れている手でそれを受け取ることはできない。というか、食べ口が向けられてるし、もしかしなくともあーんってしてくれてる? 無自覚だろうか。コイツ、時々そういうとこあるよな。甘ったれ孝臣くんの過去が透けて見えて一瞬モヤッと黒い感情が湧いたけど、目の前のスプーンは、オレに差し出されている。湯気の立つ熱そうなカレーがいい匂いを漂わせている。ぐっと体を捻り、オレはパクッと大きな口でカレーを食べた。
……おいしい!」
「辛さは」
「いい感じ! てかオレ辛いの大丈夫だし! おこちゃまライオンくんと違いますから?」
「テメェはいつも一言余計なんだよ!」
怒りながらも、獅子丸はいつものように殴りかかってはこない。火にかけっぱなしの鍋がすぐそこにあるからだろう。こう見えて真面目な男だ。
手を洗い終わったオレは後ろからぎゅーっと獅子丸に抱きついた。ジャマ、と一言言われるだけで抵抗されないのだから、つまりそのままでいいってコト。くすくす笑って肩に顎を乗せ、煮込まれているカレーを見下ろした。
「いい匂い」
「着替えなくていいのかよ」
「もうちょっと獅子丸にくっついてたい気分」
……邪魔クセェな」
「ふふん。ね、獅子丸、もう一口」
「あ? なんでだよ。味見しただろ」
「したけど、もう一口」
……チッ」
オレにあまあまな彼氏クンは面倒だって態度に出すし言葉にもするけど、それでもオレのことを甘やかすことに余念がない。家族からたっぷりの愛情を受けて育ち、無意識だろうが当然のように愛情を与え慣れているコイツが、昔のオレは大っ嫌いだった。羨ましくて、妬ましかった。だけどその愛情が今は自分に向けられている。ぽっかり空いていた心の穴は獅子丸の愛情の形で無理矢理に埋められていた。
「あーん」
甘えて言ったオレの声にまた舌打ちをして、獅子丸はオレの口にスプーン一杯のカレーを運んだ。中辛も混ぜたって言ってたっけ。でも、ねえ、甘ったるくて仕方ないよ。