顔の周りをペタペタと触られる。霊基の改造を重ねた結果、肉は削げほとんど骨と皮ばかりのこの中身の何が面白いのか。彼、伊東甲子太郎はクスクスと笑いながら、白く輝く装甲の隙間に指を入れてくる。その吐息からは濃厚な酒の香りが漂っていた。
「先生、少し飲みすぎですよ」
まだ半分ほど残していた銚子を取り上げると、彼は唇を尖らせて不満の表情を露わにした。
「えー、もうちょっとだけだから。いいでしょ、今日はもうお堅いことなしでさあ」
英霊は酒に酔わないというが、どうもそれは気分の問題らしい。最近根を詰めすぎているから、少しは気晴らしに……と二人きりの小さな酒席を設けたは良いが、先刻からこうして延々と絡み酒の被害にあっている。
とはいえ、他の誰かに犠牲になってほしいとはさらさら思えなかった。伊東のこうした姿を知っているのは今この場では自分だけ。その優越感にはさしもの服部も抗えなかった。
奪われた銚子を取り返そうと伊東が手を伸ばす。大柄な服部の体の上に寄りかかるようにして、そして不意に手を下ろした。
「ねえ服部君」
はい、と答えてその顔に視線を合わせる。
彼がにやりと笑う。やおら、綺麗な形をした唇が、こちらの剥き出しの歯に重なった。おもわず服部は目を瞬かせた。
「隙あり!」
「その手は食いませんよ!」
すかさず銚子に手を伸ばした彼の腕を、空いている手で押さえつけた。再びムッとした表情が向けられるが、服部も引き下がる方ではない。
「はいはい、まさか不意打ちもダメとはねえ」
呆れたような、だがどこか楽しそうな口ぶりで、伊東が肩を竦めた。
「十分びっくりはしてますが」
実のところ触れられた場所はずっと熱を持っている。心臓も早鐘のように脈を打っている。仮面の下の顔は見せられたものではない。
「ふーん……ね、もう一回してもいい?」
そう問うて微笑む伊東の顔が随分と美しく、これはまだ暫くは離してもらえそうにないと、服部は観念することにした。
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