三毛田
2024-12-13 22:53:03
2355文字
Public アドベント24
 

13. 後ろ頭に頬を寄せる

13
寄せて、君の香りを堪能する

 膝の間に座った丹恒の髪は、今日はふんわりしていていい匂いもする。
 ふんわりしているのは、きちんとドライヤーで乾かしたから。いい匂いなのは、シャンプーを使ったから。
 自分のことはズボラな恋人は、時々こうやって俺が面倒を見ないと『世を灌がん』とスキルだか必殺技だかで頭のてっぺんから爪先まで綺麗にするだけ。
 それは流石に体も休まらないし、思考力だって落ちる。
『入浴は、思考のリセットにちょうど良い。シャワーで済ませようとする愚か者がいるならば、無理矢理にでも湯に浸からせろ。そうすれば、思考が切り替わり新しいことが思いつく』
 的な事をレイシオが言っていたので、実践してみた。
 そしたら、時々ではあるものの、俺の部屋に来て風呂に入るようになって。
 だから、丹恒の髪質に合わせたシャンプーも買った。
「今日もいい匂い」
 深呼吸して、匂いを嗅いだ後髪の毛に頬を寄せ。
「いちいち匂いを嗅ぐな」
「だって。リラックス出来る香りが、丹恒の匂いと混ざって最高になってるからさ」
「こら、穹」
 さっきよりも深く吸うと、なぜだか怒られた。解せぬ。
「好きだ、丹恒」
……ああ、俺もだ」
 若干ためらいが残っているように思えるが、付き合い始めた頃よりは素直に口にしてくれるようになったのでよしとしよう。
「ヘルタで目を覚まして、一番最初に出会ったのが丹恒となので良かったって今でも思ってる」
「穹」
「しんみりしてるわけじゃないんだ。こう、当たり前のようで当たり前じゃないことに、感謝したいってだけ」
 お腹に腕を回して、肩に顎を乗せて。
 こうでもしないと、丹恒への気持ちが溢れて止まらなくて、彼を傷つけてしまいそうだから。
 それは、本意じゃない。
 丹恒には、これ以上無意味に傷ついてほしくないから。
 きっと、それは俺のエゴ。
 わかっていても、そう思う事を止めることなどできず。
 外から見たら、滑稽で無意味と映ることもあるだろう。
 けれども、そういう心持ちは大事だと思うんだ。
「丹恒は、俺の大切だから」
「お前はいつもそれだ」
「事実だからさ。丹恒にとって、俺は〝大切〟?」
「その一言だけでは説明できないくらいには、大切に思っている」
「嬉しい」
 頬ずりすると、優しく頭を撫でてくれて。
 それから、頬にいっぱいキスをする。
「ん。穹、くすぐったい」
「じゃあ、唇?」
「ああ、構わない」
 丹恒はこちらを向くと、自分からキスしてきてくれた。
 別に甘いものを食べたというわけじゃないのに、彼の唇はすごく甘く。
 夢中で貪って、気づくと唾液が口の中に溜まっていて。
 どうしようかと思っていたら、じゅるっと吸われた。
「た、たんこうっ!?」
「悪くないな」
 唇を指の腹で拭い、俺を見つめて。
 カアッと、顔中に熱が集まる。
 この丹恒、エッチすぎません!?
 というか、俺の恋人がエッチなのは付き合って時から変わってなかった。
「お前の唾液は、甘いな」
「へ」
「いつも甘いものを食べているからだろうか」
「あの」
「このくらいの甘さなら、ちょうどいい。もっと欲しい」
「丹恒先生!!」
 肩を掴んで止めなければ、もっとぐいぐい来ていた気がする。
 そして、押し倒されてもっとジュルジュルとたまった瞬間に吸われていた気も。
「穹……
 体が冷えないようにと着ていたカーディガンを脱ぎつつ、頬を赤らめ俺に迫ってくる。
 これ、どんな状態異常なのだろう。
 というか、スキルで解除できるのか?
 エッチに対して積極的なのは、嫌じゃない。むしろウェルカム。
 でも、今じゃない。
「今日は、そういう気分じゃないか?」
 まるで誘っているかのような言い方。俺の胸を指先でなぞって、上目遣いに。
「したい気持ちはあるけど、そうじゃないっていうのも、一応はあるよ!」
「どっちなんだ」
 唇を曲げ、ジトッとした目を向けてくる。
……シたいです」
「そうか。それなら」
 ストリップショーのように、身につけていたものを脱いでいく。
 いつもよりエッチで、もちろんだけど盛り上がった。
……俺、流されてない?」
「さあ。でも、気持ちよかっただろう?」
 頬杖をついて、俺を眺めて。それから、頬を指先でつついて。
「確かに気持ちよかったけどさぁ」
 頬を膨らませると、空気を抜くかのようにちょっと強めにつついてくる。
「ふふ」
「丹恒」
「どうした?」
「はあ。もう。丹恒が悪いんだから」
 頬を撫で、額も撫でて。顔全体を優しく撫で回す。
 気持ちよさそうに目を細めて、俺の手に頬ずりしてくる。
「穹の手が好きだ」
「俺も丹恒の手が好きだよ」
 顔から手を離し、それからそっと互いの手に触れて。握りあい、微笑み合う。
 ふわふわの髪は、行為に夢中になったことで湿ってしまった。
「もう一回お風呂に入ろう。これから一緒に」
「全身洗うことを所望する」
「はーい。任されました」
 ちょっと怠そうにしているので、抱き上げてお風呂へ。
 シャワーで汗を流して、中まで綺麗にして。それから、新しく張ったお湯で温まる。
「丹恒、気持ちいい?」
「ああ、気持ちいいな」
 新しく買った入浴剤は、控えめな香り。テーブルに置いているアロマと合わさって、ちょうどいい感じなっていて。
「匂いは気になる?」
「特には。ちょうどいいくらいだ」
「そっか。それならよかった」
 この組み合わせは、丹恒の好み。ちゃんとメモしておこう。
「今日は胸、いっぱい可愛がったからマッサージするね」
「頼む」
 ローションを使って優しくマッサージをしていく。
 好意の最中にいっぱい可愛がった上、お風呂でも触れられるのだから役得。