水樹
2024-12-13 21:21:08
2894文字
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13日の金曜日

思いついて急いで書きました。
なので大分雑。
スグアオです。

「スグリ! ブルレクしよ!」
「わかった。んだば一緒に」
「ううん。準備あるから、出入り口のあたりで待っててくれる?」
……? わかった」

 何の準備だろう。具材なら中で揃えられるし、ボールをはじめとした道具類だって同じだ。
 ……考えててもわからない。大人しく待っていよう。



「ええと……この辺で待ってれば、いい、のかな」

 何でスクエアとか休憩所とか、わかりやすい待ち合わせ場所じゃないのかな。アオイなりに考えがあるんだろうけど、よくわからない。

 一人、二人。三人、四人。目の前を通り過ぎていく人がそろそろ二十を超えそうになった頃。

「スグリ、お待たせ」
「全然へい、き…………

 ………………???
 アオイ……だよな?
 何、その格好。白いお面? にボロボロの作業着みたいなの着てる。それに何で、チェーンソー、じゃない何だあれ。とりあえずチェーンソーっぽい何か? を持ってるんだ??

……今から十数えるから、頑張って逃げてね。ライドもタクシーも禁止だよ」
「え」
「捕まったら罰ゲームだからね!」
「ちょ」
「じゅーう」
「!?」
「きゅーう」
「いやだから何なんだべ!?」
「はーち」

 訳もわからないままアオイに背を向けて走り出す。よくわかんないけど、とりあえず罰ゲームは嫌だ!

 健康優良児であるアオイと、ついこの間まで不摂生な生活を送っていた俺とでは、悲しいかな体力的に差がある。おまけに運動神経にもだ。だからやみくもに走り回れば捕まってしまうのは想像に難くなくて。
 つまり何が言いたいって。
 隠れてやり過ごすしかないということ。
 キャニオンエリアは洞窟や起伏が多いから、隠れるにはもってこいだ。
 だとしても。

「本当に何なんだべ……
『それはうちから説明したげる』
「わぎゃあ!?」

 ぼ、ボタン!? おかしい。貸出端末に通話機能はついてなかったはずだ。

『驚きすぎ。隠れてるんでしょ?』
「そ、だけど……
『まずこれは、アオイのスマホロトム。アオイにはうちのサブロム貸してある。……そうそうアオイは今、コーストにいるよ』
「なんでわかんの」
『位置情報』
「ああ……
『だから簡単にルール説明と、なんでこんなことしたのかの説明もしとく。大丈夫。アオイがサバンナかポーラに入ったら切るから』
「わかった」

 まず今日、何日の何曜日かわかる? ……うんそう。十三日の金曜日。それで、そういうタイトルの映画とそれを元にしたゲームがあるわけ。アオイのあのかっこは、一応それに出てくる殺人鬼ね。まあいわゆる鬼ごっこの鬼。んで、逃げる側はそいつに殺されないように逃げて、いくつかある方法で脱出するんよ。ただドームだと出入り口一カ所しかないから、ルール変えてんの。多分この辺に表示されてると思うんだけど。そ。タイマー。これがゼロになるまで逃げ切れればスグリの勝ち。それまでにスグリを捕まえられればアオイの勝ち。負けたほうは罰ゲーム、らしいね。……内容? ごめんそこまでは知らんのよ。うちはアオイの思いつきに乗っかっただけだから。

『他に何か質問は?』
……今んとこ、ない、かな」
『おっけ。んじゃがんばってね。ふぁいとー』

 ぷつりと通話が切れて、ロック画面が表示される。
 タイマーは片隅に配置されている。

「えっと、大きく表示はできねえのかな?」

 ちょっと見づらいなって適当に触っていたら、ロックが解除されたらしく表示されたのは待ち受け。

……え」

 …………俺、の、写真?
 しかも、隠し撮りのようだ。

「えっ……え?」

 な、なんで? なんでアオイの待ち受け、お、俺の写真なんだ?
 いや。今は混乱してる場合じゃない。アオイから逃げなきゃならないんだから。頭ではそう思うし、そろそろ移動したほうがいいかもしれないんだけど。
 心がどうも、落ち着いてくれない。





「スグリ、みーーーーつっけた!」
「わぎゃーーーー!?!?」
「えいっ! …………あれ?」

 容赦なく振り下ろされたチェーンソー? を避ける。さっきボタンから聞いたゲームを元にルール設定してるなら、当たると捕まえた判定なのかもしれない。今はたまたま避けられたけど、次は多分、ムリだ。
 幸いここは通り抜けができるうえに、近くには入り組んだ洞窟がある。そこに逃げ込めれば……





 無理でした。アオイ足速すぎだべ……

「いてて……
「ご、ごめんね。思いっきりやりすぎちゃった……

 思い切り叩かれてしまった脇腹を冷やすために、自分の部屋へ戻ってきた。
 アオイも、一緒に。
 えっと……とりあえずお面外してくんねえかな。近くで見るとちょっと怖い。ボタンから設定聞いたせいもあるけど。

「や、平気。冷やしておけば治っから」
「うう……ほんとにごめん」
「それだけ一生懸命だったってことだべ? だからこれ以上謝んねえで?」
「うん……
「それでえっと、罰ゲーム、だったよな?」
…………
「アオイ?」

 ロトロト、ロトロト……

「た、タイマー切るの忘れてた。…………!! えっと、スグリ」
「うん?」
「も、もしかしてその。ま、待ち受け見たり、してない、よね?」
……………………
『見てたよ』
「あ」

 バラされた。別に隠しておくことでもねえんだけど。

「あ、ああああぁぁぁぁ……!」

 くずおれた。そんなに隠し撮りしたのバレたくなかったのかな。別に怒ったりしねえのに。ちょっと、いやだいぶ恥ずかしいけど。

「違うの!! そ、そんなに深い意味はなくて……ええと、えっとぉ……
「アオイ」
「はいっ!?」
「お面、外してくんね?」
「い、いや、です……
…………
『諦めたほうが身のためなんじゃない? ま、これ以上は野暮だし野次馬になりたかないから切るよ。音声も切っとくから』
「え、ぼ、ボタン待っ」

 通話が切られた。沈黙が降りる。

「アオイ」
……
「罰ゲームは?」
…………

 やっとお面を外してくれたアオイの顔は、耳まで真っ赤でわやめんこかった。視線は逸らしたまま、両腕が広げられる。

…………ハグ、してほしい、です」
「えっ」

 それは。
 罰ゲームでは、ないのでは。

……えっと、それだけ?」

 こくり、頷く。

「それだけの、ために?」

 アオイからなら、恥ずかしいけどいつでも大歓迎なのに。

……ボタンには、ほっぺちゅーとか、もうちょいなんかないのって、言われて。それもいいなって、思ったけど」

 思ったのか。

「だけどいざってなると、は、恥ずかしくなっちゃって……

 なんだそれ。めんこすぎるべ。格好は、まだ少し物騒さが残ってるけど。

「アオイ」
「はい」
「それ、全然罰ゲームなんかじゃね」
「ぅえっ!?」
「だから、だからさ」

 思いついたの、全部聞かせて。多分全部、罰ゲームじゃないし、叶えてあげられっから。