こゆ
2024-12-12 23:21:07
2498文字
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真綿で締め上げるように

クリスマスの十代なペンギン+シャチの話

※どちらも女体化
※現パロ
※付き合ってない未成年百合(+です。上下左右ありません)
※ペンギン→(←)シャチ



※ この作品は無断転載禁止AI学習禁止です(こゆ)



真綿で締め上げるように


「ペンギン、今日付き合ってくれてありがと」
改まってシャチが言うもんだから、思わず立ち止まってまじまじと彼女を見てしまった。駅までの帰り道。おんなじ味の、同じサイズのフラペチーノを手にしながら「ホットにしたら良かった」「けど限定のフラペチーノは譲れないじゃん」とさっきまで話してたところだったから、急すぎてちょっとびっくりして。
隣を歩いてたシャチも立ち止まってこっちを見る。いつも毛先が元気に揺れるボブヘアが、マフラーに埋もれてところどころふんわりなってるのも可愛い。さっき寄ったコスメカウンターでつけてもらったばかりの限定のリップが可愛い。ちょっとだけ下がった眉毛が不安を表していてそんな素直な感情を見せてくれるところが可愛い。
「おかげで、クリスマスプレゼントも買えたし助かった」
彼女の手には小さな紙袋がふたつ。揃いで奮発して買ったデパコスの紙袋と、見るだけで腹立たしいメンズのブランドの紙袋。
「デート用のリップも買えたしね?」
からかうように言うとあからさまにむっとした顔をするのだって可愛い。こんなふうに頬を膨らましたり唇を尖らせたり素直に怒ってみせるのも、私だけの特権。
「じょーだん。怒らないでシャチ」
肩をぶつけて笑った私にシャチが「こぼれるからやめてよ」と文句を言う。カップを手にしたのとは反対側、私の手にもシャチと同じ小さい紙袋がぶら下がっている。お揃いで買ったリップとチークのクリスマス限定セット。
「可愛いよ、それ。シャチに似合ってる」
「ペンギンもな」
「シャチが選んでくれたから、当たり前じゃん」
クスクスと笑った私がシャチの腕に腕をからませても、彼女は何も言わなかった。寄り添うようにして駅へと歩き出す。
クリスマスプレゼントは、最近シャチが仲良いバイト先の先輩に渡すためのものだ。クリスマスにデートなんて、シャチも大人になったもんだとなんだかしんみりしてしまった。
シャチのふわふわの髪の毛を視界に入れながら、腕を絡めて抱きついたまま浮かれた冬の街を歩く。まだ日が沈まない中で健気に光るイルミネーションを「あ、ペンギン見て、ピカピカきれー」と素直にはしゃぐシャチと、シャチの笑顔の方が綺麗だよって、心の中で口には出さない感想を飲み込んで通り過ぎる。
「あのね」
「ん?」
「ペンギン、あたしの彼氏あんま好きじゃないじゃん」
シャチは私と身体を密着させたまま、前を向いたまま、そのまま、話し続ける。
「それでもこうやって一緒に買い物来てくれて、一生懸命選んでくれて……ありがとう」
ありがと、と彼女がもう一度呟くものだから私は何だか笑い出したくなった。馬鹿だな、シャチは。それは、一緒に来るにきまってるのに。
シャチのふんわりした体に抱き着くようにして歩きながら、笑って言う。なるべく優しく、シャチが安心して飲み込める声色で。
「私は何があってもシャチの一番だもん」
多分、今の彼氏とだってシャチはいつか別れることになる。そうしたら真っ先に駆けつけて抱きしめて、ちょっと泣いたふりくらい付き合ってやってもいい。そうやって、ずっとずっと甘やかして、一番大切にしてきたから。
これから先、ずっとシャチの隣にいるのは私だから。結婚式だってウェディングドレスの隣を歩くつもりだ。シャチはきっと嫌だなんて言わない。私のことが世界で一番好きだから。
シャチのつやつやのピンクのリップから「うん」って、可愛く呟かれた。
「ペンギン、大好き」
「私も世界で一番好き」
うふふ、と笑った私は調子に乗ってその唇に首を伸ばして、ちゅっと軽く触れる。シャチは戸惑うことも拒絶することもなかった。にこって恥ずかしそうに笑っただけ。照れてるシャチ可愛い。うちらの向こう側を通り過ぎてった男性が穴が開くほどこっちを見ていた。良かったね、おっさん。可愛いギャルのイチャイチャシーン見れて。
「色、同じで良かった?ペンギン普段ヌーディっぽいのつけるじゃん」
「だってお揃いピンクならキスで色移らないから」
ようやくシャチが笑う。何それ、って笑った息が白い。
同じ色のリップ。本当はもっと赤いのがシャチに似合うと思った。でもそれは秘密。車窓の景色のような過ぎ去る男に見せられない。シャチが一番可愛い色は、私だけの秘密。

今はまだ、片思いで、それは今日も甘くて苦くて酸っぱくて、私を信用しきっているシャチの唇は特別に美味しい。







クリスマス当日、ピコンってスマホに通知が届く。泣いてるクマのスタンプ。すぐに通話をタップした。
『どした?』
『ペンギン……やっぱりだめだった』
『なに?キスでもされた?』
『ぅ……、なんで、お見通しなの!?もう!やばかったなんかきもくて………やっぱりあたしなんかヘンなのかも!!今度こそ、今度こそだいじょぶかと思ったのに……なんか手とか硬くてデカいのも、声が大きいのも、いまさら?なんだけど無理で……キスなんてちょっと髭?かわかんないけどチクってして……やだ!思い出したら鳥肌!!ペンギンどうしよう〜あたし一生キスできない気がする……しかも、突き飛ばして先輩その場に置いてきちゃった……

私は今度こそ大声で笑った。
『ひっど!』シャチの怒る元気はある様子に、少しだけ安堵する。通話は繋いだまま、急いでイヤホンに切り替えた。スマホの向こうでシャチの嘆きは続いていて、だんだん涙声になっていく。笑ってごめんね、大丈夫だよ、今から行くね、そう伝えて、上着を羽織る。鏡を見て、急いでピンクのリップを塗った。親にはシャチの家に行くと告げて外に出る。
早く、シャチに会わないと。
優しく優しく、シャチは変じゃないよって抱きしめて慰めてあげないと。ふわふわの髪の毛を撫でて、シャチの手を握って、その唇に触れてあげたい。

ちゃんと、いつも通りに教えてあげないと。シャチが当たり前に受け入れている、求めている、安心できるもの、唇に触れて嫌じゃないもの、それが何かを。