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三毛田
2024-12-12 21:29:43
2243文字
Public
アドベント24
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12. 指先をぎゅっとつまむ
12
きゅっとつまむ
トン、と軽く触れ合ったのは指先。
丹恒はそんなことなどないというように、周囲を見回していて。
それならば、こちらから触れてやるべきだろう。
「穹、どうした」
「んー? 丹恒の指が触れたから、どうしたのかなって」
「どうもしないな」
無意識なのか、本当は自覚しているけれど隠そうとしているのか。
まあ、正直どちらでも構わない。
「っ」
指先をつまむと、びくりと肩を跳ねさせ。
それから、キッとこちらを睨んでくる。
灰緑の瞳の奥には、相変わらず優しさが滲んでいるからこの睨みは表面上であるとわかる。まあ、俺にしかわからないだろうけど。
「ちょっと、爪の状態が悪い? 表面がガサガサなんだけど」
「手のひらじゃあるまいし、そんなこと」
「水分不足だったりすると、縦線が出たりするんだって。一時的なものだろうけど、心配だから帰ったら俺がケアするから」
「わかった。わかったから離してくれ」
「えー。じゃあ、手を繋ごう。それも駄目?」
「駄目、じゃない。そうやって触られるよりは、繋いでいたほうがいい」
「わかった」
パッと手を離し、それからそっと指を絡めて恋人繋ぎ。
ほっとしたような表情を浮かべられると、流石にショックだ。
「丹恒」
「悪気はない。が、お前からの好意はどうもむず痒くて、落ち着かない」
「なんだそれ」
思わずムッとした表情を浮かべると、優しい表情を浮かべて。
「俺の内で簡単に処理ができないというだけの話だから、気にするな」
「そう言われたって、気にするってば」
そう。
そんな言い方をされたら、余計に気になってしまう。
「嫌ってわけじゃないんだろ?」
「むしろ嬉しいな」
「なら」
「嬉しくて、本当にこれを俺が受け取っていいのか。という思いばかりが強くなってしまうんだ」
「丹恒
……
」
「本当に、俺がもらっていいのか。本来であれば、他の人間が享受すべきものではないのか。そういうネガティブなことばかりを考えてしまう」
左胸に触れ、そっとこぼす。
「俺の好意は、俺のものだ」
「そうだな」
「そして、俺はそれを丹恒に渡した。受け取って欲しいと。丹恒のことが、好きだから」
誰かに〝好意〟を向けるのは、その人の自由だ。でも、それを押し付けるのはよくないというのは、記憶がなくてもわかる。
だから、受け取ってもらえなくても構わなかった。
受け取ってもらえないとも思っていたから。
けれど、丹恒は受け取ってくれた。
嬉しくて、思わず飛びついてしまって怒られたのも、記憶に新しい。
「そうだったな。俺が、俺なんかがお前からの好意を受け取ってもよかったのか、怖くて不安で仕方なかった」
「
……
」
また〝なんか〟って、自分を卑下してる。
けど、ここで話を折ってしまったら、二度と聞けなくなる気がして黙っておく。
「でも、今なら胸を張って、お前の好意を受け取ったこと、受け止めたことを誇れる」
「丹恒!」
「っと。お前はすぐ抱きつくな」
全身で抱きつくと、苦笑しながらも抱きとめてくれて。
こういうところも、好きなのだ。
「丹恒、キスしても?」
「いつもは勝手にしてくるのに、今日はどうした」
「いつもじゃないだろ」
「それもそうだな。ほら」
目をつぶったので、頬に両手を添えてキスをする。
両脚で丹恒に抱きついて、さらに彼が俺の背中を支えてくれているからこそ両手を離してこういうキスを出来るのだ。
かなり甘えているなと思うけれど、丹恒も丹恒で俺を甘やかしてくれるからトントンだろう。
「このままお前を運ぼうか」
「え〜? 嬉しいけど、丹恒が大変だから自分で歩くよ」
ぱっと離れて下りると、少しだけ寂しそうだった。でも、手を繋げばすぐに嬉しそうに。
「丹恒って、意外と手を繋ぐの好きだよな」
「こうしていると、お前の体温を感じ取れるからだな。穹?」
想定してなかった返答に、思わず座り込む。と、丹恒も隣に座り込んで。
「どうした」
「変な顔になってるから、見ないで欲しい」
「それなら、尚更見たいな」
「ちょっと、丹恒!」
叫ぶと、笑われた。だって、本当に締まりの無い変な顔なのだ。
好きな人には、そういう姿を見られたくないという男心を分かってほしい。
でも、わかっていてもわざわざ覗き込んでくるのが丹恒でもあって。
己の好奇心に素直すぎるのも考えものだ。
「可愛いな、穹は」
「確かに、俺は可愛い。でも、今の顔は可愛くない」
「俺からしたら、お前のどんな姿も表情も見たい。そう思うのは、悪いことだろうか」
悪いことじゃない。むしろ、いいことだ。
そういいたいけれど、ちっぽけなプライドが邪魔をして口に出せず。
「穹」
「ああ、もうっ。丹恒が悪いんだから」
出来ることならば、彼の前ではカッコいい俺だけを見せたくて。
手をどかし、顔を見せる。
繋いでいない方の手が伸びてきて、頬を撫でてきて。
「穹、可愛い」
絞り出すような声。灰碧の瞳も、キラキラと輝いていている。
そっちこそ可愛いじゃん。って言おうとして、口をつぐむ。
こうやって、幸せそうな丹恒は初めてだから。
「じゃあ、そろそろ帰る?」
問いかけると、首を横に振って。
「まだ、お前といたい。駄目だろうか」
「ううん。駄目じゃない。そう言ってもらえると、嬉しい」
繋いだ手の甲をそっと撫でる。と、撫で返された。
「丹恒、大好き」
「俺もだ」
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