三毛田
2024-12-12 19:49:48
1071文字
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39 039. 傾き加減

39日目 気分は俯き気味

 気分も上がらなければ、テンションも上がらない。
「穹、気分転換に散歩に行かないか」
「行く〜」
 いつもは俺が丹恒を外に連れ出すのだが、今日は逆。
 資料室でアーカイブを読み漁っていた丹恒の邪魔をしたくないと、椅子に座ってボケーっとしていたら、彼から手を差し伸べてきて。
 列車の橋から端を歩き、パムの手伝いをして。列車を降りてヤリーロの郊外雪原に降り立つ。
「相変わらず寒い」
「そうだな」
 初めてここに降り立った時と違って、きちんと防寒してきた。
「穹。何か悩んでいるのか」
「悩んでるっていうより、忙しすぎたのが急に終わって、走り疲れたってやつかな」
「ランナーズ・ハイという症状か」
「多分」
「しばらくすれば、治るのか?」
「丹恒でも分からない?」
「それならば、レイシオ教授に聞いたほうが早いだろう。彼のほうが、俺より詳しいはずだ」
「来たら、訊いてみるか。丹恒も、レイシオの話を聴くのは好きだろう?」
「ああ」
 丹恒が楽しそうにしているだけでも、俺としては十分だ。
 でも、俺が理由や原因であればもっと嬉しいというワガママも同時に浮かび。
「穹?」
 腕に抱きついて、肩を寄せると不思議そうにこちらを見る。
「丹恒は、俺のことだけ考えてて」
「難しいな。だが、列車に戻るまでは、それを叶えよう」
 俺の頭を撫でて、それからゆっくり指を絡めて。
 丹恒は俺に甘い。
 それがいいことなのか、悪いことなのかは知らない。知りたくもない。知らないままでいよう。
 他者に色々言われたところで、俺の中の決意が変わることはない。が、それを聞いて丹恒が俺から離れてしまったとしたら、その相手を許すことができないから。
「丹恒」
「どうした?」
 俺を振り返る表情は優しく柔らかい。
「好き」
「ああ。俺も好きだ」
 こうして、素直に好意を告げてくれることが、嬉しくてたまらない。そして同時に涙が出そうで。
「穹?」
 手で顔を隠した俺を、丹恒は不思議そうに見てくる。
「ううん。今、幸せだなって思ってさ」
「そうか。お前がそう思えるのなら、俺としては嬉しい」
 なんて言われたら、もう顔がぐしゃぐしゃになってしまうじゃんか。
「丹恒、大好き。愛してる」
「ふふ。ああ、俺もお前が愛しくて仕方ない」
 そうやって笑えるようになったんだ。
「たんこ〜」
「泣きじゃくると、その涙が凍るぞ」
 とハンカチで涙と鼻水を拭ってくれて。
 好き、好き。大好き。
 そればかりが浮かんで、だけど外には出せずに俺の中に溜まっていく。
 どうしよ。