みずあめ
2024-12-11 23:28:43
2105文字
Public brmy
 

明揺

試し書き×2




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冬の恒例行事。朝起きた時、一緒に寝た覚えのないゆらが布団の中に入っててめっちゃ驚くこと。おかげで寝起きばっちり、ぬくぬくの布団でも二度寝をすることなく起きられる。
「ゆーら、朝やで〜」
とんとんと肩を叩くと返事もなしにそれを振り落とされ、だけどゆらは寝惚けながら俺の体にぎゅうっと抱きついた。可愛いしあったかいし、ほんまはこのまま一緒に昼まで寝てたい。でも。
「ゆら、俺今日朝からお仕事やねん。ゆらもランチのシフト入ってるんとちゃうかった?」
…………あけほし……?」
「はいはい、明星くんですよ。起きれそ?」
……さむい」
「がんばれー。冬の朝はしんどいよなぁ。ていうか、いっつも疑問やねんけど、いつのまに俺のとこ入ってきとるん? 夜はゆらのが先に寝とるのに」
……
「おーきーて。朝ごはん、何食べたい? 今日はコンポタージュとお味噌汁のどっちがええ?」
……こーんぽたーじゅ」
「ん、じゃあパンも焼こうな。ほら、おはようさん」
……あけほし、あさからうるさい」
「朝から元気なんよ。起きてすぐに可愛い可愛いゆらの寝顔見たから元気百倍」
布団の中からようやく顔を出したゆらに目を細めてそう言うと、ゆらは眠たそうな顔でぐぐっと眉間に皺を寄せ、また布団の中に潜っていってしまいそうになった。笑いながらごめんごめんと適当に謝りその体を上へと引き上げる。
「ゆら、おはよ」
……
「お返事欲しいわぁ。朝ごはん、ゆらの分も用意する元気が足りん……
「さっき百倍になったんじゃないの……
「それはそれ、これはこれ。な? お願い、ゆら」
……おはよ」
「ふ。はい、おはよーさん。ふふ。よーし、朝ごはん食べよ」
「できたら呼んで」
「まだここおる? 自分のお布団戻ればええのに」
「いい。ここのがあったかいし」
俺が起き上がってベッドから抜け出すと、ゆらは自分の布団かのようにど真ん中で枕を使いしっかりと布団をかけて目を瞑った。
あったかい、だけで、毎日のように布団に入ってくるほど人懐っこいネコじゃない。誇らしいだけじゃない、薄暗い優越感につい口角が緩んだ。
「ゆら、今日の夜はゆらの方に俺が行ってもええ?」
……? なんで」
「おはようだけやなくて、おやすみも言いたい」
……なんで?」
「えー? 理由、言ってええの?」
…………わかんないけど、なんかヤだから言わないで。俺の布団に明星が来るのもダメ」
「ゆらが俺んとこ来るのはええの?」
……だめ?」
「ふふ、だめなわけないやん。ええよ、いつでも。寒くなくても大歓迎」
……
ぐるぐる、考え中って感じのゆらにクスッと笑い、俺はゆらを残して部屋を出た。凍えるくらい寒いキッチンに体を震わせながら暖房のスイッチを入れ、電気ポットに水を入れる。買い置きのパンを二枚トースターに、マグカップにコーンポタージュの粉を入れた。
「ゆら、目玉焼き焼こか? ぐちゃぐちゃにしたスクランブルエッグとどっちがええ?」
フライパンを出して油を回し、返事が聞こえてくる前に卵を二つ静かに落とす。パチパチと油が跳ねる音に混ざって小さく「めだまやき」と聞こえて俺はそっと笑みを浮かべた。大きめのお皿のはじっこにちぎったレタスとプチトマト、焼けたパンにバターを塗って上に目玉焼きを乗せ、マグカップにはお湯を注いでコーンポタージュをスプーンでくるくるとかき混ぜる。
数歩の距離を何往復かして二人分の食事を俺の部屋のテーブルに並べ、美味しそうな食卓が出来上がってからベッドの縁に腰掛けた。
「ゆら、ごはん食べよ」
……いいにおいする」
「手ぇ出して」
「んー……
「ちゃんと自分でも起き上がってな? いくで、いちにの、さーん」
ゆらの手をぎゅっと掴んで、タイミングを合わせて引っ張り上げる。勢い余って俺の体にぶつかったゆらをしっかり抱き留めてこっそりとその頭の上に唇を触れさせた。気がつかれる前にパッと離し、まだ寝惚けてるゆらの顔を覗き込む。
「おはようさん」
……もう、いった」
「覚えとったかー、ざんねん」
「あけほし、おはようっていうの、すきなの……? いっつもいわせたがる……
「朝の挨拶は大事やろ? いただきますも好きやから、早くゆらのいただきます聞きたいわぁ」
……へんなの。どいて、明星がそこいると起きれない」
「起こしてあげたのに〜。ん、どーぞ。目玉焼き、半熟やからはよ食べよ」
「やった。……なに。すごい見てくる」
「言ってくれるのを待ってるんです」
……いただきます」
「あはは、はぁい召し上がれ。俺もいただきます」
二人揃って手を合わせてから朝ごはんを食べ始める。低血圧気味で寝起きが悪く朝はテンションが低いゆらも、ごはんを食べるとだんだん目が覚めて顔色が良くなっていくから、俺はゆらと一緒に朝ごはんを食べるのが好き。たぶんゆらは朝から絡まれて迷惑やと思うけど、ごめんな、好きな子のおはようから始まる一日をもっと最高なものにしたいから、いただきますだけやなくていってらっしゃいも付き合ってもらうよ。