西尾六朗
2024-12-11 22:54:55
737文字
Public 名刺メーカーログ
 

テディベア・アレキサンドライト

クリスマスイベのアビゲイルと巌ぐだ♀のマスター(トントゥ)のなんてことないおしゃべり。
アビちゃのフードの中のテディベアをいじっております🐻

「小さなマスターが寂しくないように、これを」

 アビゲイルが差し出したのは紫色のテディベアだった。彼女の纏うマントの襟に盛られている内の一つだ。手のひらサイズであっても、トントゥと化したマスターには一抱えの巨大なぬいぐるみである。

「ありがと。でも寂しいってどゆこと?
 元気だよ?」
「今はおじ様がいらっしゃらないから」
 だから特別に用意したのと少女は囁く。よく見れば紫の色味が他と異なり、あの炎を想起させる色をしていた。頭にハットまで乗せている。
 なるほど、これは嬉しい贈り物だ。彼女の言う通り、今回の特異点に巌窟王は同行していない。寂しさを感じていたわけではないが、無二の男の姿を模したテディベアは愛らしい。思わず顔がにやける。

「それから、こちらも」

 続けて少女が差し出したのは、もう一つ。
 深い緑色に、つばの広い帽子をかぶった――

「これって
「こちらのおじ様もおじ様だもの」

 水色の瞳には、想いを馳せる何かがあった。
 その表情に、マスターの胸はぎゅっと締め付けられた。

うん、そうだね。アビゲイルは、一緒に行ってくれたもんね」

 彼が自らを「俺」と称していた頃のこと。
 二人の巌窟王と共に戦った。アビゲイルは、あの時間をマスターと共有する只一人のサーヴァントでもある。
 だからこそ差し出してくれた、緑と紫のテディベア。それらを左と右に抱えて、マスターはにっと歯を見せた。

「ダブル巌窟王再び、だね!」
「そう、そうね! 再びだわ!」

 あの時と同じ冗談を言ってみる。アビゲイルは手を叩いて笑った。
 雪降る小さな特異点で、ほんのりと胸が温かくなる。この愛らしい二つのテディベアを、早く彼も見せたい。そう思った。