しゃどやま
2024-12-11 21:07:44
2141文字
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【宗戴・戴のみ女体化】コメディ

妊娠検査薬ギャグ。肉体関係はあるものの、全年齢

 高塔の系列のホテルは口が硬い。ましてや、高塔の不利益になりかねない事については。
 俺はフロントに部屋番号を告げる。既に「休憩」をしている先客がいるはずだが、ホテルマンは表情を変えずに俺を通した。まるでホテルヘルスのような扱いにももう慣れている。こうしなければ会えない相手だ。
 ドアをノックし、間を開けてもう一度叩く。共通の暗号。鍵が開けられる。
「来ましたね――宗雲さん」
 細く開けて俺を室内に引き込む。高塔の社長であり、俺を呼んだ先客、戴天だ。
 かわらないベージュのスーツ。タイトスカートに、濃茶のストッキング。まとめた髪も相変わらず、誘惑するように胸に乗っている。いつ会っても変化のない、自分のブランドイメージを守った姿。隙や油断のない女だ。
 俺は部屋の中を軽く探索する。盗聴器の類はない。戴天の荷物にも。万一があっても高塔は揉み消すと思うが、弱みは握られたくない。
 戴天と俺は、いわゆるセックスフレンドだ。諸事情からクラスを結成し、諸事情から別れた。そして、問題を少しだけ解決し、示談した。その結果、こうしてたまに顔を合わせ、情報共有とともに体を重ねている。お互い後ろめたい所がある人間だ。ストレス発散にはちょうど良かった。
 戴天はベッドに腰掛け、ストッキングに包まれた足を揺らす。上品なわりに足癖が悪い。俺はたしなめもせず、ミネラルウォーターを電気ケトルに入れる。ルームサービスを頼んで、余計な視線に晒されたくない。戴天の分まで、無言でコーヒーを淹れた。二人分の香りに惹かれ、戴天が俺の対面につく。テーブルを挟んで向き合った。
……それで? 情勢はどうだ」
「あなたに話せる範囲で言うと……カオスイズムに資金を回している企業を発見しました」
 戴天は頭が切れる。俺はボロを出さないよう、余計な口を挟まない。静かに頭脳を突き合わせて、見えない情報戦を繰り広げる。
「わかった。協力感謝する」
 俺は頷き、まだ熱いコーヒーに口をつける。戴天はどういたしまして、とそっけなく言った。
……そういえば、あなたは植物に詳しいですよね」
 コーヒーで口元を隠しながら戴天が言った。
「植物……家庭菜園と、生花だが」
「でしたらハーブティーなどにも造詣が?」
「興味があるのか?」
 眠気を覚ますためならば、カフェインを直接血管に注ぎかねない女だ。ノンカフェインに気を使うとも思えず、俺は眉を片方持ち上げる。
「ええ。最近少し寝つきが悪いので」
 俺はコーヒーカップを持ち上げる。表情の変化を読まれたくない。ただの利害関係である俺たちに、心配の感情など挟みたくない。
――生理もしばらく来ていませんし」
 俺はコーヒーカップを落とした。
「はっ? 宗雲さん、コーヒーが!」
 俺はスラックスの裾に跳ねたコーヒーを気にせず立ち上がる。戴天の背後に回り込み、肩を掴んだ。
「冗談か?」
「そんな、冗談を言うつもりは……
 俺は戴天の身体に手を回し、腹を触る。落ち着け、まだそんな影響が出ているはずがない。胸を触る。ボリューミーではあるが、乳腺の発達は感じられない。重たい。
「宗雲さん、何を……!」
 怒りを声に滲ませ、戴天が俺を振り払う。俺は素早く離れ、戴天に言った。
「部屋から出るな。すぐ戻る」
 切れ長の目を丸くする戴天を残し、俺は薬局に走った。

 戻ると戴天がカーペットのシミをタオルで拭っていた。真面目で気の利く女であることは変わらない。
「これを使え」
 俺は白い紙袋をテーブルに置く。薬局で準備してもらった。
「なんですか、これは」
 戴天は立ち上がり、紙袋に手を伸ばす。テープを剥がし箱を取り出す。
「妊娠検査薬だ」
「はあっ?」
 俺の言葉に戴天が赤面する。なんだその反応は。やることをやっておきながら。
「早く検査しろ。お前の生理周期では先週生理が終わっていないとおかしいだろう」
「どうして人の生理周期を……いえ、そうではなく!」
 戴天は胸をはる。得意げに言う。
……あなたとの交わりはセーフセックスを心がけていました。万に一つも妊娠する可能性はない」
「ありえないことはない」
……勝手にスキンを外したりしました?」
……それは、していないが、それはそうとしてだ。身体に入っていた可能性はある」
「なんですかそのモヤモヤした言い方は!」
 俺に唸ったあと、戴天は俯く。しゅん、と威勢が無くなる。
「それに……おそらくストレスです。少し仕事が立て込んでいて、その影響でホルモンバランスが崩れたのでしょう」
「お前……
 うなだれた戴天は、疲れが見える。俺と会いたいと言うのは、情報交換だけでなく人恋しさがあったのだろう。
 それはさておき、だ。
「お前は嘘をよく吐くから信じられない。はやくトイレにいって検査薬を使え」
「あなたという人は……最低ですね!」
 戴天が吠えながら検査薬のパッケージを開ける。使い方の説明をざっと一読すると、トイレに足を向けた。
「待て」
「なんですか」
 怒りの乗った声。疑われていい気分はしないだろう。俺は言った。
「子どもは高塔と関係なく幸せにするぞ」
「できていません!」


おしまい。