ちよど
2024-12-11 20:17:24
1041文字
Public ビマヨダ
 

いなくなったビマさんの話

ビマヨダ。ヨダナさんの中から消えたビマさんの話。描写はないですが無理やりしてます。短いです。

ヨダナさん「──こんなものがヤツであるはずがない」

 現代ではレイプは魂の殺人と言われているらしいが殺されたのは俺の方だった。
「げぇ!ビーマ!!」
 周回を終えて腹を満たしに来たのだろう。マスターと一緒に食堂に現れたドゥリーヨダナは俺を見て大げさに顔を歪めた。
 逃げるように置いていったあの夜から初めて顔を合わせた奴は普段と同じ態度だ。──プライドの高いこいつはきっとあの夜を無かったことにしたいのだろう。
「──俺は謝らねぇからな」
 出来上がったばかりの料理が並んでいるカウンターテーブル越しに見据えると、ドゥリーヨダナは俺の言葉に反応を返さず隣のマスターを見た。

「いつビーマを召喚したのだ!この浮気者っー!!」

 ざわめいていた食堂の空気が凍りつく。その中で奴だけがいつものようにわめいている。
 それはこのカルデアで初めて会った時と同じ言葉だった。
 マスターがドゥリーヨダナの腕を掴む。
「忘れたの?ビーマはドゥリーヨダナより先に召喚されてるよ!」
 マスターの指摘に奴は心底驚いたかのように目を見開いた。
「はぁ?何を言っておる。わし様はビーマなど『一度も見たことがない』が?」
 嫌がらせにしても程がある。
 俺はカウンターテーブルに置かれていたキッシュを一切れ摘んだ。
「食べてみろ」
 差し出されたそれにドゥリーヨダナは不審そうに眉を上げた、が。
「まあ、おまえ料理と怪力だけは取り柄だからな」
 いつかの焼き直しのように、ドゥリーヨダナは俺が差し出したキッシュをかじり取る。息が止まった。
 もぐもぐと子供のように咀嚼して、ドゥリーヨダナが唇を尖らせる。
まあまあ、褒めてやらんでも、──どうした?」
「ビーマ?」
 食べかけのキッシュがカウンターテーブルに落ちた。
 ドゥリーヨダナとマスターが気味悪そうに心配そうに俺の顔を覗き込む。
 その紫の瞳を俺は直視出来ず下を向く。カウンターテーブルの薄い木目が渦を巻いた。

 ──そうだ。俺は自分が毒を盛られたのだから、やり返してもいいと思ったのだ。

 文句を言いながらもドゥリーヨダナは俺の料理を口にしていたから。力だけなら俺が勝つが抵抗されないに越したことはないと。
 裏切られたその痛みを俺はよく知っていたはずなのに。
「──ドゥリーヨダナ、おまえは、」
 本当にあの夜の事を、あんな事をした俺の事を、忘れてしまったんだな。
 テーブルの上に雫が落ちていく。謝ろうにもドゥリーヨダナの記憶から抹消された俺は何を言う事も許されていなかった。


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読んでくださってありがとうございます。
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