チャンドラ式英才教育(おまけ)

一撃で倒されるコノエ。
惚れた弱みってやつです。

 何とかエントランスの割れた植木鉢を片付けたハインラインは、夕飯に招待されていたのでケーキを手土産にチャンドラ家に行った。
 約束の時間を少し押した十八時、玄関のチャイムを鳴らしても誰も出てこない。両家は極めて親しく交友している為、玄関のパスコードを共有しており、勝手に入って良いことになっている。
 夕飯の支度が忙しいのだろうといつものように家に入るとリビングでチャンドラが怒られているのがエントランスのガラスドア越しに見えた。

「また夕飯の前にセレネとお菓子を食べたのか。夕飯が食べられなくなるからやめなさいとあれほど
 くどくどと説教するコノエ。
 俯くチャンドラの手にはキャラメルポップコーンの袋。チャンドラの後ろに隠れるセレネの手には大きなマシュマロがぎっしり詰まった袋が抱えられている。
「間食させると虫歯になる。セレネが甘い飲み物ばかり飲むのもいけないし、君はコーヒーを飲み過ぎだ。朝も昼もおやつの時間も飲んでいただろう!」
 腰に手を当て説教がヒートアップしていくコノエ。ひとえに栄養の偏りですぐに体調を崩しかねないナチュラルの妻子が心配でついつい語気が強くなってしまうのはハインラインも理解できる。
 しかしこの構図、既視感があるなと思いながらリビングとエントランスを仕切るガラスドアの前で見ているとチャンドラが動いた。
 スススとコノエに近づいたかと思うと、ギュッと腰に手を回して抱きつき、上目遣いでにぱーっと笑って言った。
「アレクセイ、大好き」
「ヴッ
 ハインラインはコノエが一発で黙らされたところを見てしまった。横のノイマンなんて、小さく吹き出している。
「アレクセイは?」
「ッ! だ、だからッ! その私も愛してるが、今は、ダリダがコーヒーを飲みすぎた件につい」
「キスして、ほら、ココ」
「ン゛ッ
 チャンドラが目を瞑ってキス待ち顔をしたらコノエは完全敗北確定である。ギュッと目を瞑って妻からのお誘いに理性を吹っ飛ばさないように耐えている。
 ねだられるまま、チャンドラの唇にチュ、と触れるだけのキスをしたコノエは今度は爪先立ちしたチャンドラから頬にキスをされてニヤける口もとが隠しきれなくなっている。
「アレクセイ、今日の晩ごはん、焼きそば作ってほしいな〜ノイマンも好きだし!」
「う、もちろんいいよ」
「やったー!」
 チャンドラのおねだりに否やは無いらしい。今日のメニューは牛ほほ肉のシチューとペンネグラタンと聞いていたが焼きそばも作るのか。
「デザートにプリン食べたいな〜」
「わかったよ
 急なおねだりにも対応。さすがだ。
 横で見ていたセレネが「パパ、チョロいな〜」と呟いていて、自分も充分チョロい自覚のあるハインラインは身につまされる思いがした。