価値観の違い



アオザイをプレゼントされる話
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「おおっ!やっぱ似合うな!」
俺の目に狂いはなかったぜ、とご満悦まんえつな相棒兼恋人にゲンナリする。
このやり取り、もう何回目だろう。
きっとコレもお買い上げなんだろうな、なんて思いながら、積まれた服の山に遠い目をした。

事の発端ほったんはオレのクローゼットの中身だ。
掃除とか片付けが苦手なオレの代わりに彼がやってくれているのだけれど、収納が全て済んだクローゼットを見て、あまりの服のなさと適当さに唖然あぜんとしていた。
元々、あまり執着心のないオレは、「着れればいい」という基準で普段着を選ぶ。色とか形とか、そういうことは一切気にしない。似合うか似合わないか、なんてもってのほかだ。
そして服の状態にもそこまでこだわらない。着れればいいから、少し穴が空いてようが、落ちない汚れがついていようが、おかまい無しだ。
彼はどうもそれが許せなかったらしい。
持っていた衣服のほぼ全てを麻袋に突っ込むと、怖い顔で、
「服、買いに行くぞ。」
とだけ告げて、ここウル・ダハまで連行された、という次第だ。

それにしても。
「オレの服ばかり買ってどうするの……。」
使い道に困る上、値段もそれなりに高い物ばかり。こんなにいつ何処どこで着るんだよ、なんて思いながら、言われるがままに着替える。
お金に糸目を付けないあたり、流石はもと常勝無敗のギャンブラーだ。でも散財先がオレの服ってどうなんだろう。
今指示されて着たのは、遠く東方のナグサ地域で着られているという、「アオザイ」という服。
変に締め付けられないし、かといってゆるすぎず、なかなかいい塩梅あんばいの着心地だ。丈は長いけれど、腰から下に大きくスリットが入っていて足周りも気にならず、見た目よりずっと動きやすい。しかも着てみると意外と涼しくて、暑さが苦手なオレでも平気で着ていられる。
これいいな、なんて思うものの、値札を見てギョッとした。
ないない。こんな高い服着て外歩くなんて無理。
なんて思ったのに、購入する方がその気になっているんだものなあ。
思わず嘆息たんそくするオレに向かって、彼は当然と言うようにのたまう。
「あん?好きな奴に似合う物を着てもらうのの、何が悪ぃんだよ。それに、プレゼントするのに値段見るなんてケチくさいことするのはおとこじゃねえよ。」
……なんて事言うんだよ。これじゃあ、断るなんて出来ないじゃないか。
熱くなる顔を隠すようにうつむくオレを他所よそに、青もいいけど赤の方が似合うな、だとか、細身の服の方がしっくりくるな、だとか、好き勝手言っている恋人を、こっそりとうとましげににらんだ。

余談だけれども、結局諸々もろもろの事情で、この時購入したアオザイは、帰宅時に一度袖を通しただけで終わった。
思いのほかショックを受けたオレに慌てた彼から、再びアオザイが贈られるのは、また別の話。
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