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ぶんどき
2024-12-10 13:14:48
1632文字
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不出来なオムライス
鰯と柊 現行未通過❌
教祖にオムライスを作ってもらった話。
【簡単な前提】
エンド1でお尋ね者になった自陣は、信者が殺し屋として働くことで生活費を賄っているのだった!(教祖はそれを知らない)
──────
ターゲットを殺害し、死体を処理し、明け方家へと帰る。そこに特別な感情などない。淡々と、頼まれた人間を金銭と引き換えに殺しているだけなのだから。今さら汚れきった己の手は、いくら汚れたって構わない。何も知らない未知が、そのまま何も知らないままでいてくれるのなら。
朝日が昇る頃、帰宅すると未知がリビングのテーブルに突っ伏して眠っていた。なぜこんなところで、とテーブルを見遣ると未知の前にはラップのかけられた皿とスプーンが置いてあった。ぐちゃぐちゃになった焦げた薄焼きたまごを載せた白いご飯、その上にはケチャップ──もしかして、オムライスのつもりなのだろうか。到底オムライスのように見えないそれは、構造からなんとかオムライスであると推測できた。
これは、夕飯の残りなのだろうか。どうしていいかわからないその皿の近くにメモが置いてあることに気づく。メモには拙い未知の文字で「ちょーめーへ チンっていったら たべていいよ」と書いてあった。つまりこれは、自分のために作られた食事ということだ。一人で何もできなかった未知が食事を用意し、電子レンジの使い方まで覚えたことに軽く感動を覚えた。
オムライスを電子レンジで温めている間にコーヒーを入れ、朝食の支度を進める。しばらくすればチンと電子レンジが温め完了を告げた。その音で、テーブルに突っ伏していた未知がゆっくりと目を覚ました。
「んあ
……
ちょーめー
……
?」
まだ眠たげな顔と声で未知は言う。
「おはようございます、未知。
……
これ、未知が作ってくれたんですか?」
温め終わったオムライスを電子レンジから取り出して見せると、彼はパッと顔をあげた。
「うんっ、オムライス、初めてつくったよ」
「よく作ろうと思いましたね」
「寿々が、オムライスは美味しいから食べたらみんな笑顔になるって言ってたから」
「それを、私に?」
未知は頷いてにこにことあどけない笑みを浮かべた。
「いただきます」
スプーンですくって、一口。見た目はともかく、と言えたらよかったのだがお世辞にも美味しいとは言えない味付けだった。塩コショウは入れすぎだし、よく分からないスパイスのような味もする。一体何を入れたんだ。それでも、未知が自分のために台所に立っている姿を想像しなんとも言えない気持ちになる。
「ちょーめー、どお? おいしい?」
「
……
ええ、とても」
寿々に聞いたのだろう、オムライスのおおよその作り方等は。清澄長明を笑顔にするために、未知が考えて、行動に出たのだ。
「
……
私、こんなに美味しい食事、はじめてですよ」
ぽろり。一瞬、視界が滲んだ。自分でも訳が分からないが、おそらく今、涙を流したのだろう。こんなものが出るほど自分に情緒というものが残っていたことに驚いた。涙なんて流すのは何年ぶりだろうか。
「ちょーめー!? な、なんで、泣いてるの
……
!? 笑顔にならない
……
?」
珍しく焦ったように未知が顔を覗き込んでくる。
「
……
え。あぁ、すみません、目にゴミが」
熱くなる目頭を押さえながらゴミを取るフリをする。
「なんだ、そっか」
未知はそれで納得する。それでいい。気を取り直しいつものように薄く笑みを浮かべる。
「
……
ありがとうございました。未知、よく頑張りましたね」
「へへ
……
また作るね」
褒められると嬉しそうに笑う未知。その無邪気な笑みは、多くの信者を背負うにはあまりに負担が大きかったことだろう。残された人間は、ここにいる三人だけだ。それが今、自分が守るべき居場所でもある。どんな手を使ってでも、だ。そのためなら、他人の命だって惜しくない、どこまでだって冷徹になれる。
ただ、
レンジで温めた不出来なオムライスのあたたかさは一生忘れないだろう。
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