ちよど
2024-12-18 00:00:00
2615文字
Public アシュヨダ
 

アシュヴァッターマン配布おめでとうございますーー!!

アシュヨダ。星4配布記念のお祝いに書いたもの。pixivより再掲

ヨダナさんがすでにいるカルデアにアシュくんがやって来た話

ドゥリーヨダナ「そういえばわし様にとってはついこの間の事だが、おまえにとってはそうではなかったな」

「これは祝いだ!!このQPが尽きるまでわし様の奢り!好きなように飲み食いするがいい!!」
 そう言ってドゥリーヨダナがカウンターに積み上げたQPの山は、厨房から出て来たビーマの頭に届きそうな高さだった。
 食堂に居合わせたサーヴァントたちから歓声があがる。
「なにやってんだ!!トンチ、キ
 視界を塞ぐQPの山を崩したビーマの罵声が止まる。

……アシュヴァッターマン」

 つい先程まではこのカルデアにいなかったサーヴァントはビーマの姿に金色の目に炎を灯らせた。
 無言の敵意にビーマの表情も硬くなる。
 その間に逞しい腕が伸ばされた。
「そこの厨房係、わし様の友にふさわしい一品を頼む。二人分な」
 ドゥリーヨダナの注文に異を唱えたのはアシュヴァッターマンだった。
「旦那!?まさかビーマの作った食事を食べようって言うのか!」
「食べたが?まあまあ美味かった」
 絶句したアシュヴァッターマンを置いて従兄弟二人は話を続ける。
「まあまあかよ。――じゃあこの料理で唸らせてやる」
……今回はわし様だけでなくアシュヴァッターマンの採点もある。厳しいぞー!!」
 厨房に戻るビーマの背中に言葉を投げたドゥリーヨダナはまだ呆然としているアシュヴァッターマンに声をかけた。
「行くぞ。ここにいるともみくちゃにされる。わし様の度量の深さにな」
 意味も分からず手を引かれてテーブル席に座らされたアシュヴァッターマンが振り返ると、先程自分たちがいたカウンターの前は奢りに熱狂したサーヴァントたちに埋め尽くされていた。
「旦那。あのQPってのは通貨なのか」
 アシュヴァッターマンの質問に、向かいに座ったドゥリーヨダナはどこからともなく水晶のような物体を一掴み取り出した。
 それをアシュヴァッターマンの手に握らせる。
「持っておけ。来たばかりだと元手がないからな。――大体そのくらいでここの食事十回分だ」
 その言葉にアシュヴァッターマンはカウンターの上にまだ積まれているQPの山を見た。
 手の中のQPと比べるとあの山はどれほどの価値があるのか。考えるのも恐ろしい。
「気にするな。わし様は周回で溢れんばかりに稼いでおる。ーーおまえが来た祝儀には少ないくらいだ」
 何度か手の中のQPとカウンターの上に積まれたQPを見比べていたアシュヴァッターマンは息を吐いた。
 QPを握った手をドゥリーヨダナに差し出す。
「受け取れねぇよ、旦那」
「わし様を恋人に贈り物すら出来ない甲斐性無しにするのか?アシュヴァッターマン」
 ドゥリーヨダナの言葉にアシュヴァッターマンの顔が赤く染まった。
「あう、」
「言いたいことはちゃんと言った方がよいぞ。わし様は短気だからな」
 促されてアシュヴァッターマンは言葉を絞り出した。

……俺たちは、まだ、ーー恋人なのか?」

 不快そうにドゥリーヨダナの片眉があがったが、すぐに元の位置に戻った。
「そういえばわし様にとってはついこの間の事だが、おまえにとってはそうではなかったな」
 ドゥリーヨダナの指がアシュヴァッターマンの前髪をかきあげた。額の宝珠が露わになる。
 紫水晶の瞳が細められた。

「その答えは簡単だ。ーーわし様はおまえに別れるとは告げておらん。おまえはわし様と別れたいのか」

「いいえ」
 答えが分かっている質問にアシュヴァッターマンは生前のように答えて首を振った。赤い髪がさらさらとドゥリーヨダナの手から零れる。
 再び隠された宝珠にドゥリーヨダナの指が滑り降りる。

 バチッ!!!

 弾かれた指にドゥリーヨダナは目を丸くしたがアシュヴァッターマンは凍りついた。
「ああ、わし様が魔性だからか。――痛いぞ、アシュヴァッターマン」
 ドゥリーヨダナの笑い混じりの声に答えず、ふらふらとアシュヴァッターマンの褐色の指が自身の額に触れる。
 その指が突き立てられた。

「ストッ――プ!!」

 アシュヴァッターマンの手を掴んで宝珠から引き剥がしたドゥリーヨダナは慌てて恋人に言い含める。
「そんなホイホイ宝珠を剥がそうとするんじゃありません!!わし様これでもレベルマだからこのぐらいは平気!痛いって言ったのは冗談!!――わし様のアシュヴァッターマンなら分かるよな?」
 金色の目がドゥリーヨダナを映した。
「でも、あんたを傷つけたのは事実だ」
「わし様は気にしない。――だからおまえも気にしない。いいな」
 畳み掛けられてアシュヴァッターマンはしぶしぶ頷く。それを見てドゥリーヨダナはその手を離して椅子に座り直した。
 そこに、
「おい。馬鹿王子。注文の品だ」
 トレイを持ったビーマがテーブルにふたつの器とスプーンを置く。
 それを見てドゥリーヨダナは顔をしかめた。
「もっとマシなものはなかったのか?」
「これが俺の最高の料理だ」
 言い置いてビーマは厨房に戻って行く。残された二人は手元の深みのある器に視線を落とす。
 ドゥリーヨダナがため息をついた。
「乳粥なぞ。わし様食べ飽きた。なぁ?アシュヴァッターマン?」
 視線を向けるとアシュヴァッターマンは震える手で添えられたスプーンを手に取ったところだった。
 おぼつかない手付きで乳粥をすくい、口に運ぶ。口が閉ざされ、喉が上下した。
 そのまま俯いたアシュヴァッターマンからドゥリーヨダナは目を逸らす。
 テーブルに落ちた涙に気づかない振りをして自分の乳粥を食べ始めた。
 生前よく食べた何の変哲もないただの乳粥。ドゥリーヨダナにとってはほんの少し前の味は、三千年森を彷徨ったアシュヴァッターマンにとってどれほど遠い味だったろうか。
 悔しいが、今回のビーマの料理には称賛を送らればならない。
 不本意な結論が気に入らず、さっさと食べ終わったドゥリーヨダナにまだ半分ほど乳粥を残したアシュヴァッターマンが顔をあげた。
「美味かったか?」
 ドゥリーヨダナの問いかけにアシュヴァッターマンは涙で濡れた顔を綻ばせた。

「ああ、夢のようだ。――旦那と一緒に食事が出来るなんて」

 それこそ夢を見ているようなアシュヴァッターマンの表情にドゥリーヨダナはにやりと笑った。
「なんだ?それだけでいいのか?――わし様は食べたくないのか?」
 直裁的な言葉にアシュヴァッターマンの全身が茹で上がったかのように赤くなった。


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読んでくださってありがとうございます。
少しでも楽しんでいただけたなら嬉しいです。

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