さもゆ
2024-12-10 02:55:58
2011文字
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【DB】呼び声

超ブロリーの映画で親父が名前を呼んだら食ってたダニも放ってブロリー飛んで来たシーンが忘れられなかった。

2023.1.24 たべものpixiv投稿作品

 久しぶりに来た孫悟空およびカカロットから破壊神のいる惑星に引っ越しちまえばいいと言われたとき、ブロリーが真っ先に心に思ったのは「その星は安全なのか」ということだった。
 それをそのまま口にしようとしたものの、話を聞いていたレモとチライがブロリーよりも早く声を上げてそれぞれ話を進めてしまう。そうなるとブロリーは耳を傾けているしかできない。
 まだ二人以上の会話についていくのは苦手だ。ただこの者たちはブロリーの不利になるようなことは決してしないと思っているので、安心して話を聞くことだけに集中できる。チライとレモは悟空に破壊神や破壊神のいる惑星についていくつも質問をし、最終的に、「フリーザ軍の手が及ばない」ビルス星はこの荒れ果てた砂嵐の惑星よりは段違いに安全だろうという結論に至ったらしい、引っ越しの誘いに肯定的な反応を見せていた。けれども二人とも、迷ったように首を振る。
「あたしはそりゃ、もとは盗人だし銀河パトロールのやつらやフリーザ軍のやつが近づかないとこは何よりいいけど」
「ああ。けどなあ、ここがブロリーにとっての安全地帯なら、そうそう離れるわけにはな」
 黙ってその様子を見て聞いていたブロリーに、小さな二人が揃ってこちらを振り向く。二人がブロリーに向かって何かを言う前に、その視線を受けたブロリーは悟空へと目を向けた。
「安全なのか、その星は」
 悟空は自分の頬をぽりりと掻くと「安全だぞ。ビルス様ンこと怒らせなかったらな」と何度か怒らせたことがあるように笑って言った。「でも、大丈夫だと思うぞ。おめえなら戦っても負けるこたあねえさ」
 チライとレモはそれを聞いてちょっと複雑な顔をした。“やっぱりこのままここにいた方がいいかもしれない”という思いが占める。だって二人はもうあまりこの優しい戦士を戦わせたくない。
 ブロリーも少し戸惑った顔をした。
 欲しい答えじゃなかったからだ。
「ちがう」
 否定して、これもたぶん言葉足らずなんだろうと思って、考える。悟空に言ってほしい言葉があった。ということは、その答えを引き出す質問をできていなかったということだ。
 そうだ。
 安全かどうかは、あまり気にしていない。
 安全じゃなければ、二人のことは自分が守ればいいからだ。
 じゃあ何を訊きたかったんだ?
「ええと、悟空」
「おう。なんだ?」
「訊きたいことが、ある。けど、どう言えばいいか……
「ゆっくりでいーぞ。オラもよくそうなった」
「悟空も?」
「この世で一番難しいかんな。自分の考え喋んのって」
「うん。とても難しい。どうすればいい?」
「戦う」悟空はあっけらかんと言い放った。「拳の方が、口より分かりやすいだろ」
 確かに。ブロリーは思って瞬く間に悟空と共に住処である洞穴を飛び出した。
 バンパの荒々しい砂の吹き荒れる空中に飛び出していったところで、あっけに取られていたチライとレモが慌てて駆け出し「ブロリー!」と叫ぶ。叫んだときには、既に一発、悟空の拳がブロリーの頬を掠めていた。「ブロリー、修行はいいけど怪我だけはしないでくれよ!」「そうだぞ、ここじゃあ充分な治療はできないからな!」悟空が力の制御の仕方を教えに何度もバンパに訪れていた故の、聞きなれた台詞だった。そのよく通る声を聞いてブロリーは、あ、と思った。悟空の蹴りを躱しながら、思いついたままに言う。「悟空、その星じゃチライとレモの声はよく聞こえるか?」「声?」「そうだ。聞こえないと、困る」ブロリーは気弾を放とうとして、やめた。悟空も攻撃をやめ、「もうお終いか?」と言ったわりには何だか穏やかに腰に手を当てている。ブロリーは頷いた。「ああ。悟空、俺はチライとレモがいいと言うならどこへでも行く」
「そっか。んじゃ決まりだな」
「だが、二人が俺を呼ぶ声が聞こえないと、安全でも、安全じゃなくても、俺は二人のとこへ飛んで行けない」
 ブロリー、と呼ぶ声がしたら、何を置いても飛んで行かなければならない。
 お父さんとの決まり事は、チライとレモにも、勝手に継続している。
 呼ばれたら行かなきゃいけない。
 ちがう。
 行きたいんだ。どこへでも。俺が助けに行きたい。
「だから、二人の声が聞こえないようなところは、困る」
「安心しろって。静かなとこだからさ」
「じゃあ、行く。……ここにもまた、戻れるか?」
「ったりめえだろ。そんときは、オラを呼べ。ドラゴンボールでも瞬間移動でも、三人まとめて帰してやる」
「そうか。……悟空も呼ばれたらすぐ行くのか?」
「ん? いや、ハハ、そーだったらチチにあんなどやされてねえって!」
 笑う悟空の下、訝しんだチライとレモがブロリー! と名前を呼んでくる。ああ、やっぱり、そうなんだ。砂のざらつくこの惑星で、いいや、ブロリーが聞いてきたどんな呼びかけよりも、そばにいたいと思うものだった。