ヴィクターが息子を作った理由を「後継者を作るため」という淡白なものにしてたんですが、最初の子は違った経緯だったらいいなという話。
⚠だいぶ倫理観がないので注意
ヴィクターの養父は、彼の家族を殺したにも関わらず彼に愛情と金を注いで育てた人間(サイコパス)だった。
ヴィクターが養父をボスとして仰ぎ、若きアンダーボスとして奔走していた18の頃、彼は養父こそが復讐すべき相手だと知る。
その当時、ヴィクターがよく通っていた娼館の中に美しく聡明な娼婦の女がいた。
ヴィクターは最初、その女のことをただ見た目が好みで体の相性がいいと思っている程度だった。しかし、その女は頭が良く気品があり、チェスゲームをしかけれは対等に勝負ができた。そうして、だんだんと娼館に通う回数が増え、セックスをしないで酒を交わす夜さえある、というほど親密な仲になっていった。嫌なことがあればその女に会いに行き、くだらない話と酒で日常の不満を忘れ、また次の日を迎える。そんな日が続き、ヴィクターと女は娼婦と客という関係よりは悪友に近い存在になった。
ヴィクターはその日も女に会いに行った──身寄りのない自分を拾ってくれた養父こそが、両親の仇であったという事実を知った日。
自分の養父に裏切られたという絶望を、女と過ごす時間で忘れようとした。しかし運悪く、今夜は”いつものよう”にはならなかった。
酒を呑み、女と話しているうちに、その心の内を吐き出してしまいたくなった。その女が記憶の母のように優しく美しく微笑むから。まるで自分のすべて受け止めてくれるような気がしてしまった。
だからつい、ほんの気の迷いで、ヴィクターは女に弱音を吐き出した。「今だけは誰でもいいから傍にいてほしい」そんな、子供のような癇癪を吐き出して、縋るように女を抱いた。
それから数ヶ月後、女のいた娼館から電話が来た。内容は「女が子を孕んで死んだ」というものだった。
その知らせを受けたヴィクターの頭には、誰の子だ?という疑問が真っ先によぎる。
心当たりがあったからだ。しかし、あの日、確かにあの女を抱いたとはいえ、そんなことはありえない。
──あの女が自分の子を孕んだなんて。
そう思いながらもヴィクターの足はすでに娼館へと向かっていた。
後からわかったことだが、女はヴィクターを愛していた。
しかし病を患っていて寿命が長くなかった。そんな彼女は大胆な手段に出た、──彼との子供を作ろう。
その為に女はヴィクターの過去を調べ、彼の故郷のことと両親の死を知り、その全貌を調べていくうちに養父にたどり着いた。ヴィクターの養父こそが彼の仇だと知った彼女は、その事実をヴィクターに伝わるように仕向けた。自分の排卵時期に合わせて。彼がそのことを知れば、自分のところに来ると信じて。
そして彼女の計画は成功し、彼の種子を己の腹に宿らせたのだ。この計画は子を殺されてしまえばそれまでだったが、女は成功を確信していた。
なぜなら、彼がその子を殺さないことを知っていたから。「生まれたものに罪は無い」という男だったから。
ヴィクターは心の底から、その女を恐ろしいと思った。美しく微笑む優しさが、ますます嫌になった。
そうして、ヴィクターの記憶にはその女のことが深く刻まれた。
その後、生まれた赤子は父親が秘匿されたまま立派な教会の孤児院に預けられる。
現在、その子供はヴィクターの養子ということになっているが、正真正銘の息子である。
それがJr、ことヴィンス・A・ダイヤモンド。
ヴィンスは自分の出生歴こそ知らないものの、血の繋がりは勘づいている。そして父親に隠していることがあることも。
ただ、マフィアのドンである彼を問い詰める無謀はまだしたことがない。
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.