何故かブロッケンと「どれくらいラーメンマンが好きか」で競り合う事になって、偶々近くを通ったラーメンマンを捕まえて告白合戦に発展したあの日。
1週間経っても鮮明に思い浮かぶラーメンマンの赤面姿。
実のところ、初めて見たわけではない。
一度半ば強引に関係を迫って蹴りを食らわせられた時に茹でダコみたいになっていた。
「ん〜〜」
腰掛ける座椅子に背中を預けて天井を見上げると、ギシギシと座椅子が悲鳴を上げた。
よくある事だからあまり気にしないでいると、頭を軽く叩かれた。
「おい、壊すなよ」
頭上から聞こえた声を辿ると、険しい顔をしたラーメンマンと目が合う。
「そう言うなら俺基準の丈夫な家具を置いてくれよ」
カッカッカッと笑うと再び頭を叩かれた。
今度はまぁまぁ強め。
「人の家に転がり込んできて、その態度は褒めれたものではないな」
テーブルに小洒落た茶器とやらを並べながら淡々と話すラーメンマンをジッと見つめると「なんだ」と睨まれた。
「悪かったよ。大人しくしてるからピリピリすんな」
目の前に並べられる小さい食器を目で追いながら、暫くの沈黙を楽しむ。
「この前のアレ、答えは出たのか?」
器に湯を注いでいるラーメンマンに問いかけると、ビクッとしてお湯をこぼしてしまった。
「あーなんか悪いな、声かけて」
「い、いや
…構わない」
布巾で拭き上げると再び茶を淹れ始める。
「答えは出していない」
「そうか」
面倒くさそうな工程を慣れた手つきで進めていく姿は、まるで舞っているようで美しいなと感じた。
「きれいだな」
「
……茶器か?茶葉か?」
「いや、あんただよ」
「寝言は寝てから言え」
俺の愛の言葉はいつもこうやってあしらわれる。
真剣に伝えてるつもりなんだが
…どうにもラーメンマンには届かない。
そうこうしていると手元に小さいカップに小さいカップを被せたものが置かれる。
「覚えてるぜ、これをひっくり返すんだろ」
記憶を頼りにカップを指で挟んでひっくり返し、被った側のカップを外すと澄んだ茶が現れる。
「上手いものだな。一度見ただけだと言うのに」
穏やかな笑みを向けられ気持ちが昂った。
「これも愛だな。あんたとの記憶は何ひとつ忘れてないぜ?」
「そう言うのを情熱
…というのだっけ?」
「ああ、そうだ」
カップを手に取り、グッと飲み干す。
茶は腹ん中に落ちていくのに、香りは上って鼻を抜けて頭ん中を華やかにする。
「相変わらず不思議な飲み物だ」
このなんとも表現し難い感覚に顔を顰めていると、向かいに座るラーメンマンから熱い視線を感じた。
「そんな顔をしてまで、何故わたしの茶が飲みたいとやってくるのだ?」
「ああ?あー
…好きだから」
そう答えると腑に落ちたのか、パッと表情が明るくなり「なるほど、好奇心だな」と頷いた。
どうも俺の気持ちとズレが生じているように感じてため息をついた。
おそらくラーメンマンは俺に「茶への好奇心」があると感じたのだろう。
まったく
…どこまで鈍感なんだか。
よっこいしょと座椅子から立ち上がる。
「どうした、帰るのか?」
見上げる顔がどこか寂しげに見えた。
いつも俺をぞんざいに扱うくせに、離れようとすると寂しそうにする
…内心でどう思ってんのかわからないな。
「
……あんた、それ無意識か?」
「それ?無意識?」
理解ができないのか俺から目を外して俯き、うーむと考え出す。
テーブルを回り込んでラーメンマンの側にしゃがみ、顎を掴み上げこちらを向かせる。
「本心を見せろ」
動揺で震える薄い唇を頬張るように口付け、舌先で唇を割り開いて歯並びをなぞる。
「っ!
…ん
…」
しなやかに鍛えられた腕が俺を押しのけようと力を込める。
仕方なく口を離してやると、肌は火照り、目は虚んでいる。
「品行が悪いぞ
…バッファロー
…」
「嬉しいくせに」
「は!?」
グッと眉間に力が入り、今にも技をかけてきそうにも見えたが、下唇を噛み締めてふいっと顔を逸らされてしまった。
「お前みたいな
…強引なやつは好かん」
普通なら嫌われたと思う状況だが、俺には脈アリにしか感じなかった。
何故なら
…
「好かないって言ってる割には、指を絡めてくるんだな」
無防備だった手を握ってやると、応えるように指を絡めてきたんだ。これが脈ナシなわけない。
「
…………」
ラーメンマンは黙り込んだが、否定はしていないから確定だな。
いわゆるツンデレってやつだ。
「アモーレ、言葉にするのが苦手なら行動で示してくれてもいいんだぜ?」
できる限り品が残る表現で誘ってはみたが、繋いでいた手を振り解かれた。
「
……考えておく」
そっぽ向かれたままだが、後頭部まで真っ赤にしたその姿はあまりに愛おしかった。
また1週間は脳裏から離れないんだろうな。
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