はじまりは黄昏時から

MHRウ教×ハ♀。相思相愛。
ウ視点。

休みが連日重なって、お互いに見慣れた装備品ではない、浴衣姿になって。

お互いに休日が、しかも連日重なることはとても珍しくて、年甲斐もなく、つい興奮してしまった。


──俺の家に泊まりに来ない?


俺の提案に、まるで幼い頃のように「ぜひ!」と無邪気に笑顔を咲かせて喜んでくれたキミは、今や俺の可愛い愛弟子、将来を誓い合った最愛の人。

休日の間、お互いのオトモたちは気を利かせてくれたようで、オトモ広場で過ごしている。

恋人同士水入らずで、昼は連日を共に過ごすための買い物を。

そして黄昏時、一緒に帰宅して、お互いに動きやすい浴衣に着替えた。

俺は愛用の 朝緑色 あさみどりいろ の浴衣。
そしてキミは、里に気高く愛らしく咲き誇る桜と同色の浴衣。

帰宅して、俺の家で浴衣を着た途端、恥ずかしそうに俺に横顔を向けて座ったままの、愛しいキミ。

「ねえ、どうしたの愛弟子? こっちにおいでよ、一緒に休憩しよう?」

ふすま に寄りかかって、片手を伸ばして、キミに手招きをする。
夕陽に照らされる愛しいキミは、ちらりと俺を見やって、ますます頬を染めて。

……あの、ウツシ教官」
「ん? 何だい?」
「その……

また、キミがちらりと、視線だけを俺に向ける。
初恋を知ったばかりのような、熱っぽく、夕陽に映える照れを帯びた眼差し。

「ゆ、浴衣着る時、いつも、そんなに広めに、胸元、開けてるんですか……!?」
「──え?」

予想外の言葉。

俺は拍子抜けしたように大きく目を瞬かせた後、我慢できなくて、思わず「ふっ!」と吐息と 笑声 しょうせい を噴き出してしまった。

ちらりと自分の胸元を確認すると、確かに、いつもよりは開いている気がする。

普段に比べて帯の締め方が甘かったようで、寄りかかった時に全体がずれてしまったのだろう、けれど。

(……そんなに、意識するほどかなぁ?)

愛しいキミは、俺のことをとてもよく見て、そして意識してくれているらしい。

可愛くて、嬉しくて、愛おしくて、抱きしめて撫でたくなるような温かい感覚が全身駆け抜けて、心は鞠のように弾みながら、きゅんと不思議なほど甘やかに締まる。

……いつも、じゃないよ? キミと過ごせると思ったから……つい、意識しちゃったのかも」
「! い、意識、って……?」

声を上擦らせ、妙に緊張したキミに、俺はまた、ゆっくりと手を差し伸べる。

「さあほら、早くおいで、愛弟子。久しぶりに、恋人水入らずで……ね?」
「ッ、う……! ま、まだ、夕方、ですよ……!」
「んん? そう、だけど、んふふふっ……

どうにかなってしまいそうなほど、可愛い。

俺の家で、俺の用意した浴衣を纏って、俺の前に座って、俺にちらちらと視線を送りながら夕陽を浴びるキミ。

掴んでこちらに引き寄せたくても、俺の間合いを熟知したキミには、絶妙に手が届かない。

「ふふふっ、ねえ、まだ何もしないから。おいでよ愛弟子。せっかく一緒にいるんだから、ね?」
……んん。…………はい」

観念したように、桜色の浴衣を纏ったキミが、四つん這いになって移動しながら、俺の傍にゆっくりとやって来る。

その移動の仕方が『何もしない』と言った俺の雄の本能を煽り、理性の柱をぐらぐら揺らしているのだと、可愛いキミは分かっていないだろう。

外にはまだ、鮮烈な橙色の夕陽。

甘い恋人同士として愛し合って過ごすのは、もう少ししてから。

黄昏時でもキミとの別れを気にしなくていいのが、本当に幸せだ。


──愛弟子、可愛い……だぁいすき……


胸の奥から溢れるキミへの想いと言葉が、俺の笑顔を穏やかに彩る。

これからゆっくり共に過ごせる、愛しいキミを一刻も早く撫でたくて、俺は気付けばまた、片手を伸ばしていた。





@acadine