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アイリス
2024-12-08 01:55:55
3235文字
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デート
大穢 大崎×船野 大船?
現パロです
デートする話。
大穢 大崎×船野 大船
現パロにございます。
年の差というのは、大抵目上の人が心を痛める。自分は船野さんさえ居ればそれでいいのに、彼はいつも怯えていた。人の目だったり、世間体だったり、自分の気持ちですら怯えているのだ。どのように伝えれば彼に伝わるのか。
昨今、同性婚が認められ、同性同士であることが特別なことではなくなった。それでもまとわりつくのは年の差の問題。好きで後から生まれたわけではない。年上だから心惹かれたのではない。彼だからこそ惹かれたのだ。
「お、大崎さん、こちらです」
「船野さん」
ベンチに座った彼が大きな手を、小さく振ってくれた。自分もそれなりに身長はある方だが船野さんは188㎝もあるので、立ったまま待っていると目立ってしまう。目立つことを嫌う彼は、近くのベンチで身体を小さくしながら待ってくれていた。それが可愛らしくて見つけることが楽しみになっている。
「お待たせしてしまいましたか?」
「いいえ、それほど待っておりません。貴方こそ、走ってこられたのではありませんか?息が、切れております」
「あなたに早く会いたかったので」
「そ、そうですか」
「船野さん、手を繋いでもいいですか?」
「
……
はい」
照れながらも自分の手に応えてくれた猫背の彼と並んで歩く。アプリで通話や文字でのやりとりはしていても、会えない時間が寂しいと思うのは自分だけなのだろうか。ぽつりぽつりと話す彼の声は心地よく、いつまでもこの時間が続けばいいと考えていた。
電車を乗り継いで、彼が仕事で携わった植物園へ向かう。
彼は植物園の職員として働いている。自然を愛する彼には天職だろう。同僚との仲も良好で働きやすい職場だと教えてくれた。
○○植物園は彼が過去に働いていた植物園で、鳥たちと自然の写真を求める人たちに好かれる場所だ。
「ここは温室が大きくて、管理が大変だったんです」
「そうですね、かなり広く感じます」
「はい。数十人で作業しているはずなのに終わりが見えず、職員たちは頭を抱えたものです」
「苦労されたんですね。嫌になったりしなかったんですか?」
「はい。大変ではありましたが、わたくしたちの手で美しく育つ植物を見れば、疲れなど飛ぶものです」
へにゃりと笑った顔が可愛らしい。彼と共に植物園をゆっくりと鑑賞する。歩き疲れると備え付けられたベンチに腰を下ろし、談笑してからまた次のエリアへと歩を進めた。丸まった背を少しだけ伸ばし、植物の説明をする彼が愛おしい。自分たちにはこのようなデートが合っていた。知人にデートならもっと他の所に行けばいいだろうと言われたが、彼の滲み出る柔らかな笑顔を隣で見られることが何よりも楽しいのだ。
「お、大崎さん。お腹は、空きませんか?」
「すこしだけ」
「
……
お弁当を作ってきましたので、お昼にしませんか」
「船野さんの手作りですか?」
「はい」
「では、いただきます」
「よよよかった
…
あなたに食べていただきたくて、心を込めて作りました」
いつもより大きな荷物を持っているとは思ってたが、まさか自分のためのお弁当とは。適当にカフェにでも入ろうと考えていた自分を恥じる。せめて、飲み物だけでも用意するべきだろう。
「飲み物を買ってきます。何がいいですか?」
「
……
珈琲を、おねがいします」
「珍しいですね?」
「わたくしも、あなたと同じものを口にしたいと、そう思ったのです」
心臓を射抜かれた錯覚に陥る。船野さんがここまで気持ちを言葉に出してくれるのは初めてだった。お弁当の入っている鞄を抱え、彼が頬を染め上げる。
「なるべく早く戻ってきます。どこで食べますか?」
「で、では
…
あちらで」
そう指差された場所は満開の桜の木の下だった。
少し離れた場所にあるカフェで二人分の珈琲を購入して船野さんの元へ急ぐ。ベンチに座った彼の周りには鳥たちが集まっており、少ない人数ではあるがカメラで撮影している者がいるほどだった。肖像権の問題などはきっと頭から抜けているのであろう。しかしカメラを構えたくなる気持ちが理解できてしまった。彼の周りだけが異質だった。俗世から切り離された絵画のような、物語の中から出てきた人物のような、彼だけがこの植物園で浮き出て見えた。
「お待たせしました」
「い、ぃいいえ。鳥たちが集まっていたので、待ってなど」
「よかったです。砂糖とミルクは一つでよかったですか?」
「お砂糖とミルク、ですか?」
「もしかして初めて飲むんですか?」
「え、ええ
……
」
「飲めなければ自分が飲むので無理せず残してください」
「ぁ、あ、ありがとうございます」
船野さんがお弁当を取り出して、中身を見せてくれる。色とりどりの野菜と一口サイズのおかず、紙に包まれた食べやすくカットされているサンドウィッチ。彼はこの太い指で何でも器用に作り上げてしまう。何度か家で食事を頂いたが、その時は和食が中心でどれも本当に美味しかった。食に興味のない自分ですら、もう少し食べたいと思わせるのだから、植物園の職員にならなかったら料理人になっていたかもしれない。
「綺麗ですね、美味しそうです」
「えっ、そ、そのように言っていただけると嬉しいです。初めて作りました」
「初めてですか?」
「は、はい。普段、洋食は食べませんので、あなたに初めてお出しします。これも大崎さんが飲んでいたので、飲んでみたくなったのです」
「そう、ですか」
「はい。ど、どうぞお食べください」
船野さんに促され、サンドウィッチを頬張る。挟まれた野菜がシャキリと音を立て、肉と共に咀嚼する。じゅわりと広がるタレのうまみと野菜のみずみずしさに食が進んだ。おかずも何種類かあり、刺されている爪楊枝で口に運ぶ。食べやすいように工夫された気遣いが、彼自身を表しているようだった。濡れティッシュも用意してくれているが出番が回ってくることはないだろう。
「とても美味しいです」
「よ、よよかった
…
あの」
「なんですか」
「わ、わたくしは手が塞がっております
…
そ、その大崎さんがお嫌でなければた、た食べさせていただけませんか」
少しずつ治っていた吃音癖が再発し、言葉を詰まらせながら“おねだり”をされる。彼が甘えてくれるのはベッドの上だけだと思っていた。外に出れば自分から距離を取って歩こうとし、人の目に触れることを避けていた彼が“食べさせて”と上目遣いで伝えてくる。
「はい。どうぞ」
「ぁ、ああありがとうございます」
焦りを隠しつつ口に入れやすいおかずを手に取り、彼の口に運ぶ。差し出したおかずをパクリと食べ、次をねだる。小鳥に餌を運ぶ親鳥のようだと思った。サンドウィッチを差し出せば大きな口を開け、一口で食べてしまう。可愛い。
「船野さん。あなたにキスしたいのです」
「
……
どうぞ」
「
……
」
まさか承諾されるとは思わず硬直してしまう。人目に触れる所でキスなんて許されたことなかった。彼を見つめる。顔を真っ赤に染め、自分の渡した珈琲の入ったカップを両手で包んで目を閉じていた。
「本当にしますよ?」
「か、かか構いません」
緊張からか横に広がる一文字の唇を噛みしめている。ふっと悪戯心が刺激されてしまった。噛みしめている彼の唇を舐める。
「ぁ
…
」
薄く開かれた瞬間舌をいれ、彼の口内を舐め、後頭部を手で固定する。珈琲を持っているせいで、ろくに抵抗できないことを良いことに口づけを深め、唾液を混じらせる。薄く開かれた瞼に涙がにじんでいた。彼の分厚い舌が自分を押し出そうとするので、突き出された舌を吸い上げる。
「んっ
……
ぉおしゃひしゃんっ」
懸命にしゃべろうとする姿に下半身が重くなる。こんなところでする気はないが少しならいいだろう。口づけを深めるとくぐもった声が上がる。外だというのに彼との口づけを止められる気がしなかった。
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