雪洞
2024-12-07 22:25:16
988文字
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【マレ監♀】監♀受けワンドロお題「デトックス」

未来設定・結婚後。お疲れな王様、妻に癒される。

 相変わらずの煩さを誇る元老院。実情を鑑みずに家の利を主張する貴族たち。能力ある者の位が低いという不均衡を是正すべく取り立てれば贔屓だ何だと噴出する文句……
 おばあさまはこのような環境で数百年もの間治世を行ってきたのか。その辣腕に頭が上がらないと同時に、政の難しさが自身の肩にのしかかる。
 本日の会合を終え、真っ先に私室へ向かう。侍女が頭を垂れて扉を開けるや、すぐにも中へ足を踏み入れた。
「おかえり!」
 すぐにも飛び込んできた笑顔を前に、気付けばほっと息をついていた。肩肘張った感覚が抜け落ち、花の咲きほころぶような妻の笑みに何もかも浄化されてしまうようで――ただいま、と返した唇はいつしか弧を描いていた。
……疲れた」
 ソファに腰掛け、隣の彼女を抱きながら背にもたれかかると、優しい声がお疲れさまと耳朶を撫でる。
「お話、進んだ?」
……一進一退だ」
「でも、この前抜擢した文官の方が力になってくれそうなんでしょう?」
「そうだが、人事にまだ文句を言う奴がいる……
 語尾が窄むままに顔を彼女の髪に埋めると、柔らかい香油の匂いがした。そのままじっとしていると、細い指が髪を撫でてくれる。これが、癒されるということか。こうする度に思い知っている気がする。かつての在学中、オンボロ寮と呼んだあの愛すべき館で初めて肩を寄せ合ったのと同じ感覚。ただひとつの存在としての僕が、ただ自然とそこにある感覚。
 今はそのときよりずっと距離も肌も近く、僕たちの関係には名前が付いた。その分だけ彼女の肩にかかる荷も増やしてしまったが、彼女は持ち前の強さで懸命に責務を全うし、僕を支えてくれる。
「お前がいてくれて、よかった」
 こうして触れ合うたび、そう思い知るたび、愛おしさも深くなる。
「本当に……
 そうでなければ、きっと心はもっと擦り切れて荒涼としていたに違いない。彼女はまるで、深い森で湧き出る泉のような、高原に吹く清らかな風のような。その笑顔があるから何があろうと頑張れる――心の底から強く思う。
「今度、森林浴に行こう? 前に見せてくれた花畑、そろそろ咲く頃じゃないかな」
「ああ、それはいいな……。羽を伸ばしに行きたい」
 もう一度「お疲れさま、ツノ太郎」と囁いてくれる声がくすぐるように優しくて、彼女が腕の中にいてくれる今が、苦しいほど愛おしかった。