ぶっきらぼうに渡されたそれは星空を模した包装紙で丁寧にラッピングされていた。うーちゃんはいつものように余ったやつだと言っていたけれど僕のために用意してくれたのは明らかで、その不器用な優しさがとても嬉しい。
「ありがとう。うーちゃん」
思いのままに伝えると、照れ臭いのかうーちゃんは短く「別に」とだけ返した。態度とは反対に頬が赤く染まっているからわかりやすい。
早速包装紙を慎重に剥がして中の小箱を取り出す。視線を感じながらそれを開けると中には生チョコが入っていた。専門店で売っていそうなほど完璧なチョコに感心する。うーちゃんはやっぱりすごい。
「うーちゃん。食べてもいいだろうか」
「どーぞ」
弾む声色を隠せずに問うと、呆れと優しさを滲ませた声でうーちゃんが答えた。手に取った生チョコを口に運ぶ。一番始めに感じたのはココアパウダーのほのかな苦味。そしてその直後に口内でとろけたチョコの甘みが口いっぱいに広がった。まるで魔法みたいだ。
気分が高揚してすぐ近くにいるのに前のめりになりながらうーちゃんに感想を伝える。
「とても美味しい……!」
「当たり前でしょ」
ふふんと満足気にしているうーちゃんにありがとう、とハグしたくてたまらなかった。けれどそれが出来ないのを僕は知っているから、どうしたものかと思案する。
顎に手を添えて動かなくなった僕を不思議に思ったのか、うーちゃんが心配そうに見つめていた。一つだけ、名案が浮かぶ。
「潮。こっちを向け」
「へ?」
間抜けな声を出してこちらへ向くうーちゃんの唇に、手に取った生チョコをそっと押し付ける。ぽかんとした顔のまま僕の一挙一動を見つめるうーちゃんの目の前で、僕はそのチョコを自分の口に放り込んだ。うーちゃんに触れた大好きなチョコを食べたら、大好きなうーちゃんに少しだけ触れられた気がした。
「えちょ、むーちゃ!?」
「すまない。唇にココアパウダーがついてしまっているな」
ウエットティッシュを手渡そうとしたけれど、うーちゃんの声に遮られる。
「そうじゃなくて!!」
そこで耳まで真っ赤にしたうーちゃんに気づいて、はたと思い当たった。
「……もしや気恥ずかしかったか。そこまで気が回らなくてすまない。だが、この感情をうーちゃんに共有する術がこれしか思いつかなかった」
わざと目を合わせない。目線をやや下に向けて、申し訳なさそうな顔をする。
「べ、別に怒ってはないけど……」
さっきまでの勢いが尻すぼみになっていって、僕の思った通りになった。潮は僕のこういう顔に弱いのだ。
手渡そうと持ったままだったウエットティッシュで口元を拭ってやる。まだまだ頬の赤みが引いていないうーちゃんは目を合わせようとした僕から目を逸らした。それを見て、思わず少し笑ってしまう。
「……なに笑ってんのさ」
「いや…………なんでもない」
「なに今の間。なんでもなくはないでしょ」
「気にするな」
うーちゃんがかわいくて。本当はさっきそう言おうとしたけれど、さすがに怒られそうだったから口に出すのをやめた。
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