酷く動揺した。自死を試みるのを諦めたかと思えばこれだった。血濡れの制服に似合わないほどの満面の笑みを浮かべるその顔を一発殴ってやれたら。そう思ったけれど握り締めた拳は自らの手のひらに爪が食い込んだ跡を残すだけだった。
カッと沸いた怒りがみるみる内に静まっていくのを感じながら、今自分が何をすべきか考える。これ、染み抜きコースで落とせるのだろうか。いくら家の洗濯機が優秀とはいえさすがに予洗いが必要だろう。それと、このまま上がらせるわけにはいかない。両親の目に付かないように今ここで脱がせて……。
そこまで考えていたところで、來人が我慢できない、という風に瞳を輝かせて事の一部始終を語り出した。息もつかずにベラベラと、それはそれは楽しそうに話すものだから、俺は悲しいんだか煩わしいんだかよくわからなくて、ただ一言、「やめてください」と言った。素直に來人が黙るとそれはそれで気まずくて、視線を足元に落とす。革靴にも血がこびりついていた。
「ごめんな生行。そんな顔しないでくれ」
申し訳なさそうな顔でもしてくれていればまだよかった。けれどそう言った來人は俺を窘める時のいつもの兄の顔をしていて、心底辟易する。きっと何を言っても無駄なんだろう。けれどまだ諦めたくはなくて、何も言わず來人のシャツを剥ぎ取った。
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