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ぽふむん
2024-12-07 22:00:00
1316文字
Public
ワンドロ
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突発性難聴
#童しの版深夜の真剣物書き60分一本勝負
「耳鳴り」「筆跡」「熱燗」
柱if
風邪の流行るこの時期に、過労から表題の症状を起こしたしのぶちゃんの恩返しです。
まだ治療法は確立していなくても、何となく「こんな症状がある」という認知は医療関係者の間にはあったと思います。
ちなみに……極楽教は、元施薬院(雑な説明、病院)であり悲田院(身よりのない老人や孤児のための場所)であり癲狂院(精神病院)でもあり御救小屋(災害時の避難所)であり、投げ込み寺(身請け人のいない遊女の埋葬地)でもあり……というイメージで書いてます。
ぎこちなく薪を割る音が山中に響く。
極楽教筆頭補佐官 神山が何気なくそちらに視線をよこし、視界に入ったものに、驚きのあまり目を見開いた。
「し
……
しのぶ様。何を」
あたふたと止めに入るが、当の本人は何処吹く風。
額に滲む汗を拭いながら
「何を
……
って、薪割りですが?」
しれっと、事も無げに応えた 。
「そんなことは他のものにおまかせあれ」
神山は慌てふためいている。
それは、しのぶを絶対安静にさせるよう、童磨から言い含められているから。
「あら、いくら童磨がそう言ったとはいえ、甘えている訳にはまいりません。私が無理を言ったといえば良いではありませんか」
薪割りはともかく、家事の手伝いすらさせて貰えない。
一宿一飯所では無い恩義を返したいだけなのだが
……
「いえいえ、そんな訳にはまいりません。ささ、あちらでごゆるりとご養生を」
しのぶはぷぅっと頬を膨らませた。
医者の不養生とはよく言ったもの。
過労から来るのだろう。
ある日突然、めまいとともに、キーンと右耳に耳鳴りがした。
と思えば、ボンっと言う音とともに耳の聞こえが悪くなり
……
働きすぎを心配していた童磨によって無理やり転地療養。
強制安静を強いられてしまった。
この症状
まだメジャーではないが、医療の心得のあるしのぶは知っていた。
童磨も、こんな症状の信者の話を聞いたことがあるから知っていた。
過労から来る、急性難聴があることを。
十分な栄養を取り、ゆっくり休めばあわよくば
……
だが、そうしないで無理を重ねれば、予後は最悪。
本当に聴力を失う。
そんなわけで、童磨はしのぶに極楽教で絶対安静するよう申し付けた。
三食昼寝付き
天国だ
……
と言いたいが、居心地が悪い。
おかげで、かなり予後も良い。
恩返しに風呂くらい用意してやろうと思ったのに。
任務が終わって今から帰ると知らせる手紙の筆は、指が悴むからか、元の癖のある字が震えていた。
「今朝現地を出立したとして、着くのはどんなに急いだとしても、夜でしょう。風呂は我々で用意いたします。その後に呑む熱燗でもつけてあげてくださいませ」
神山にそう言われ、しのぶは渋々指示に従った。
あまり無理を言っては、神山の面目を潰すから。
元気になったお礼のつもりだったのに。
🪷🪷🪷🪷🪷🪷🪷🪷🪷🪷🪷🪷
囲炉裏で鍋の湯がグツグツ言いだした。
部屋の中がいい感じに温まっている。
しのぶは鍋の湯に徳利をつけた。
数分ほどで程よく熱燗になった。実にタイミングよく、湯上りの童磨がやってきた。
「ああいい湯だった。寒くて大変だったから生き返ったよ」
「それは何よりです」
しのぶはにっこり笑って出迎える。
ぽぉっと童磨の頬が染まり、慌てて首を振った。
「そんなことより、ろくさんを困らせたんだって?」
昼間の薪割りのことを聞きおよび、咎めてきた。
「あら、私はあなたにお礼がしたかっただけなんですが?」
どっかりと隣に腰を下ろした童磨の太ももに、しのぶは手を置いた。
甘えたようにしなだれかかると「ひゃぁ!」
悲鳴が上がった。
そこに居るのは、今にも火を噴きそうな、真っ赤な筋肉ダルマ。
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