いさき
2024-12-07 13:30:46
1067文字
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20241207

あの屋上の、後の話。
コナン俳優パロ。

 「カット! オッケーです! 諸伏さんクランクアップです!」
 監督の声が通ると、先ほどまでしんとしていた現場がざわざわと動き出す。12月の夜、ビルの屋上には冷えた空気が風に運ばれて、体温を奪っていく。
「お疲れ、ヒロ」
「ありがとう。 あっ、これ血糊つかないかな」
「洗えば落ちるから構わないってさ」
 スタッフさんから受け取ったブランケットを、ゼロと二人それぞれで羽織って、拍手に導かれる形で移動すると、その先に赤井さんが大きな花束を持って立っている。
「景光くん、クランクアップおめでとう」
「ありがとうございます、赤井さん」
「君のいる現場は雰囲気が良くてやりやすいから好きだったんだが、寂しくなるね」
「そんなふうに言ってもらえると嬉しいです」
 渡された大きな花束は十二月だというのに、色鮮やかな花々で彩られ、その大きさは両手で抱えなければいけないほどだった。
「ヒロ、花束に埋もれてるじゃないか」
「ね、すごいね」
 たくさんの人から声を掛けられながら歩くのは、ちょっと照れくさく、そしてなんだかちょっと、寂しくもある。
 そんなオレのことを察してか、ゼロが肩を引き寄せるようにグッと肩を組んできた。
「実は今日のご飯会は萩原、松田、伊達班長にも声を掛けてある」
「えっみんなで集まれるの久しぶりじゃない?」
「誰かが仕事で抜けてたりするからな、今日は大丈夫だ」
「嬉しいね」
「ちなみにあと」
「私もお邪魔させてもらう予定なんだ」
「赤井さん!」
「赤井さんも今日は“たまたま”暇だって言うから」
「誘って断られるより、先の予定に乗る方がいいかなと思ってね」
「えーすごいね! 豪華メンバーだ!」
 楽しみに顔がにこにこしてしまうオレに、ゼロがこそっと耳打ちする。
「二次会は僕の家でやろう。 良い食材を用意してあるんだ」
「ゼロ、料理上手くなったもんね」
「明日の朝の味噌汁まで考えてあるから、今日は遠慮なく飲んで潰れていいぞ」
「至れり尽せりだ!」
 着替えてから迎えにくるよ、と手をあげるゼロに手を振り返して、またあとで、と微笑む赤井さんに軽く頭を下げた。
 一人になるとなんだか急に寂しい気持ちはするけれど、無事に迎えられたクランクアップにひとまず安心の息を吐いた。空気を吸うと、抱えた花の香りが甘く胸に広がる。
 包み込まれるような優しい香りに、そういえばまだ着替えていない血糊の匂いがほんのり混ざって、なんだか妙な気分だ。

 お疲れさま、スコッチ。
 君のその勇気が、世界を変える力にならんことを。