三毛田
2024-12-06 22:42:53
1627文字
Public アドベント24
 

06. 腕にしがみついたら


嫉妬する姿も可愛い

「た、丹恒先生?」
……
 ブスッと、どこか不機嫌そうな表情で俺の腕にしがみついている丹恒。
 どうしたのだろうか。
「お腹痛い?」
「いや。それはない」
「そっか。それならよかった」
 機嫌が悪い? なんて聞いたら、ますます表情が険しくなりそうで。
 感情の機微にはそれなりに鋭く反応できるはずなのに、今日は丹恒のことがわからない。
「丹恒?」
……お前が悪いんだ」
「ええ~? 俺、何したっけ?」
 覚えてない。後頭部をかくけど、本当にわからないのだ。
「俺以外に、でれでれしていたじゃないか」
 額をぐりぐりと二の腕に額を押し付けてきて。
「あれ、デレデレに入るの?」
 問いかけたら、腕を噛まれた。手負いの獣みたいで可愛かったけど、地味に痛いのでやめて欲しい。
 まあ、『世を濯がん』をされるよりはマシだ。
「じゃあ、帰ろうか?」
「せっかく出てきたんだ。見て回るのもいいだろう」
 腕に頬をくっつけ、唇を軽く尖らせて。
 若干見上げてくるような感じなのが、可愛くて仕方ない。
「じゃあ、デートだ。ほら、手を繋ごう」
 肩をポンポン叩くと、ため息をついた後指を絡めてきて。
「お前が言うからどうしてもだからな」
「はいはい。わかってます」
「はい。は一回だ」
「はーい」
 デートをすることで、少しでも機嫌が治ってくれればいいな。
 手を繋いで、街を歩いていく。
 少しだけ表情が和らいだ気も。
「丹恒、あーん」
 口元へおやつを差し出すと、小さく口を開けて。
 いつもは、結構大きく口を開けるのになと思いつつ、次々に食べさせる。
「ひゅう」
「ごめんごめん。丹恒が次々食べる姿が可愛くて、つい」
 口をもごもご動かして、しっかりと咀嚼していく。
 嚥下する時に動く喉が艶めかしく。夜のあれそれを思い出してしまって、思わずじっと見てしまう。
「水」
「はい」
 口の中が乾いてしまったのだろう。ボトルを渡すと俺を睨みながら飲んでいく。
 やっぱり上下に動く喉がエッチ。
「穹」
「わかってます。はい」
 ボトルを受け取り、開いた口へ別の食事を入れる。
 こうやって甘やかされるのが好きなところ、可愛すぎるでしょ。
「次はどれ食べたい?」
 問いかけると、どれにしようかと目があちこちに向かって。
 ああもう。
 丹恒に色々なものを、もっともっとたくさん食べさせたい。
 そんな欲望ばかりが溢れてきて。
「た、丹恒先生」
「どうした」
 声が上ずった俺を見る彼の唇には、タレがついている。
「キスしていい?」
「外だ」
「でも、丹恒の唇が食べてくれって」
 そう告げると、丹恒は慌てて自分の唇を舌で舐めて。
「き、穹。そういうのは、きちんと教えてくれっ」
 舐めてタレがついていることに気づいたようで、頬を赤らめて俺のわき腹をつつく。
 というか、丹恒の〝つつく〟は強すぎるんだよ。
 普段はもうちょっと力加減してくれるのにな。
 まあ、それはそれで可愛いんだけどね。
 丹恒のせいでダメージを喰らいつつ、今日のデートを終える。
「ただいま~」
「おかえり~! お土産は?」
 列車に帰ると、なのが両手を差し出してきて。
「あれ?」
 俺と丹恒が顔を見合わせていると、きらきらしていた目をいつもの色に戻し不思議そうに俺たちを交互に見る。
「ごめん、忘れてた」
「も~! まあ、二人のデートだからそうだと思った」
 文句ありげに見てきたものの、一人納得した表情を浮かべ。
……資料室に戻る」
「はーい」
「ねえ、なの」
 資料室へと戻っていく背中を見送ってから、なのを呼ぶ。
「俺、他の人にデレデレしてる?」
「うーん。お姉さんタイプの前だと、若干鼻の下伸びてるよ」
「えっ。マジ?」
「丹恒の前だと、伸びまくってるけどね」
「ああ、よかった」
「穹って、年上に弱いよね。黒髪だと特に」
「丹恒が俺の好みだからね!」
「はいはい。惚気」