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ろころころ
2024-12-06 16:18:10
2776文字
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よそ様交流小説(うにねうさん宅、ミナトちゃん)
事前設定:ウェンはミナトちゃんの護衛として出張任務中
「今回の護衛さん
……
ですよね。ミナトといいます。この家の巫女見習いをさせていただいています。
……
ご迷惑をお掛けしますが、よろしくお願いします」
少女はおずおずと頭を下げた。何故、主人であるはずの彼女が自分に頭を下げるのか?アムリタは疑問に思ったが、口には出さなかった。これが少々前ならば、容赦無く尋ねていたかもしれない。
アムリタは棺桶から予め出しておいた一匹の猫を、少女の顔前に運ぶ。
「よろしくにゃん」
「えっ?あっ、ええと
…
?」
少女は明らかに慌てていた。救助隊の仲間に”子供と接する時はもう少し愛想良くしろ”だなんて言われ、猫のモノマネでもすれば良いのではという結論に至ったのだが。この反応を見るに、失敗か?
仕方ないので、切り替えることにしよう。
「アムリタ────いや、ウェン・バラタだ。貴方の安心と安全を守ることを約束しよう」
肩膝を立てるようにしゃがみ、少女の小さな片手に忠誠を誓う。少女が頭を下げるというのなら、此方もそれに見合う態度を示さねばならない。
固まる少女を他所に、アムリタは立ち上がり棺桶の下がるショルダーベルトを背負い直した。
「俺が与えられた命は貴方を守ることだが、俺の手が必要であれば護衛に無関係な内容であっても呼んでくれて構わない。召使の経験は無いが、まぁどうにか──────ふむ?どうした?」
「えっ?い、いえ、なんでもありません
…
!」
「
………
?そうか」
我に返った少女は、控えめに言葉を紡ぐ。
「あ、あの
…
お願いを聞いていただけるのなら
…
少し外に出ませんか?」
*********
穏やかな風が、自然の香りを運ぶ。森を少し抜けた先の柔らかな緑が広がる草原が、二人の足元を優しくくすぐった。
「このお花
……
ウェンさんは、なんて言うか知っていますか?」
「
………
花?」
小さな少女の小さな手元で、小さな花が色を咲かせていた。
「なまえ
……
赤い花」
「えっ?あ、赤い花ですね、確かに赤いです
…
え、えっと
…
」
「
……
七色の薔薇を見たことがあるか?」
「えっ?」
少女は唐突な薔薇の話に戸惑いつつも、素直に七色の薔薇を想像してみる。見たことは無いが、きっととても綺麗なのだろう。
「白いバラに専用の着色料を接種させて花弁を染色しているらしい」
アムリタは赤い花をじっと見つめながら言葉を続ける。
「貴方はサクラ、という花を知っているか?春になると主に東洋の島国に咲き誇る花、らしい。サクラの木の下には、死体が埋まっていると言われているんだ」
「し、死体
…
!?」
「サクラは死体から養分を得て成長する。その過程で、花弁を薄桃色に変化させるのだろう」
アムリタは赤い花を手に取る。
「さて、この花の
赤
とは果たして何であろうか?」
「え
…………
?」
少女は手元の赤い花をみる。その紅は、まるでどろどろとして禍々しい──────
「ふむ、不死者ジョークだ。面白くなかったか?」
「えっ?あ、じょ、ジョークですか
…
!?
…
よ、良かった
…
」
少女の安堵したような反応を見て、アムリタはまたもや失敗したことを悟る。やはり、幼い少女を笑わせるというのは難しいものだ。
「ふむ
…
ならば何が良いだろうか?
…
ならばこういうのはどうだ?」
アムリタは細長い植物を一本、手に取る。その植物は小さなハート型の葉を無造作に散らし、てっぺんには白い小さな花々を咲かせている。
アムリタはそのハート型の葉を少しだけ裂き、ハートを力なくぶらぶらと垂れ下がさせるその植物の茎を手のひらの間に挟むと、クルクルと回して見せた。
ぺちぺちぺち、柔い植物からはあまり想像できないような乾いた音が鳴る。
「なずな
……
所謂、ペンペン草というやつだ」
「ペンペン?
……
あ、もしかしてこの音のことを
…
」
少女はそれを受け取り、同じようにくるくると回す。ぺちぺちと、軽やかな心地よい音が聞こえる。
「ふふ、ちょっと面白いですね。トキにも教えてあげたいなぁ」
「
…
トキ?それは、友人か?」
「はい。こういうの、好きな子なんです」
「そうか。
……
これで遊ぶには少々工夫が必要な気もするが」
友人と遊ぶのであれば、もう少しほかの手が必要であろう。そうして思いついたのは
…
「
………………
」
「今度は何を作っているのですか?」
「花で編んだ輪。ここには白詰草が沢山あるからな」
「あ、花冠ですか
…
!それなら私もわかります
…
!」
少女の答えに、アムリタは首を傾げた。
「花冠?なんだそれは」
「えっ?」
今度は少女が首を傾げる番であった。花冠を知らない?作り方を知っているのに、完成品を知らないだなんてそんなことが有り得るのだろうか?
「さて、彼処に1本だけ長く伸びた太い草があるだろう?あれに
冠
これ
を投げて入れるんだ」
「
…
あ、輪投げですか?なるほど
…
」
アムリタは輪っかを軽く投げて長く伸びた草に入れてみせる。そして少女にも輪っかを渡した。
「輪自体が軽いからな、思ったよりも難しいんだ」
「確かに
……
は、入るかなぁ
…
?」
「入らなくても笑ったりしないぞ。案ずるな」
少女はその言葉を聞いて、輪っかを投げる。
1つ、2つ、3つ──────思ったよりも届かなくて、最後の方はもっと遠くへ飛ぶようにぴょんぴょん跳ねながら投げていた。
「っふふ」
「い、今笑いましたか
…
!?」
「笑ってない
…
笑ってないぞ。猫じゃらしを追う猫みたいで面白くて」
「わ、笑ってるじゃないですか
…
!」
少女の抗議が昼下がりの草原に響いた。
******************
「ところで、先程言っていた花冠
…
というのは何だったんだ?」
日が暮れ始め、辺りの緑が朱色に染まり始めた頃。
アムリタは少女に1つの問いを投げかける。
「ええと
…
花冠というのは
…
先程の輪っかを、頭にかぶせて冠に見立てるもの、なんです。ウェンさん、先程みたいにしゃがんで貰えませんか?」
「?
…
わかった」
アムリタは少女の前に、膝を立ててしゃがみ込む。
少女は、騎士の頭に冠をそっとかぶせた。
「
………
これが、その花冠というやつか?」
「はい、そうです。今日一日、一緒に遊んでくださったお礼になればなぁと」
「
……
そうか、嬉しいぞ。ありがとう」
アムリタは、少女が嬉しそうに顔をほころばせたのを見た。何となく、正解がわかってきた気がする。
「ふむ、これ
……
天使の輪っかにも見えないか?見てくれ。実は俺は死んでいるんだ。あぁ、今のは不死者ジョーク444なんだが」
「えっと
………
お、面白いと、思います
…
?」
「
…………………
」
前言撤回。まだ理解したとは言い難いな。
アムリタはそう思った。
𝐹𝑖𝑛.
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