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ちよど
2024-12-09 00:00:00
3896文字
Public
カルヨダ
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カルヨダ式シュークリームの食べ方
カルヨダ。シュークリームが食べたい。pixivからの再掲
立香です。
女の子だからと大きなシュークリームをふたつ貰いました。
いつもおやつどきの食堂は子供系サーヴァントと保護者が多いのですが。その中で私が座る四人席は少し雰囲気が違っています。
だって、そこにいるのは私。そして向かいのカルナさんと、その隣のドゥリーヨダナと、私の隣のアシュヴァッターマン。どう見ても子供枠は私です。
そこに提供されたのは五つのシュークリーム。
ひとつでもドゥリーヨダナさんの拳ほどはありそうなそれは見るからにたっぷりのカスタードが入っていてカロリーを想像するだけで倒れそうです。
なんで五つ持ってきた!?ビーマさん!!!
心の中で叫んではいますが予想は付きます。ビーマさんは五人兄弟。
そしてこのテーブルにいる男どもは全て男所帯住みだということを!ドゥリーヨダナなんて百王子。そんなんじゃ女の子の繊細な気持ちなんて
……
あれ?
「ドゥリーヨダナ、妹さんいなかった?」
「おったぞ。一番下に」
「一番下かぁ」
だったら永遠に子供扱いだろうなぁ。その子とだったらこのデリカシーがない所業について語り明かせそう。
私は目の前のふたつのシュークリームを見つめた。
いくら見つめてもカロリーが減ってくれるわけではないが、誰かが気づいてスマートに解決してくれるかもしれない。
善意で私の分を多くしてくれたのは分かっている。だから断りにくいし。多分、ダイエットしていると言ってもこのメンバーは理解出来ないだろう。
ドゥリーヨダナは置いておいて、アシュヴァッターマンの細マッチョ、カルナさんの食べているか心配なくらいの細さはダイエットとは縁遠い。羨ましい。
しかも古代インドは食糧事情が厳しかったと聞く、それを考慮するといつもわがままなドゥリーヨダナが私の皿に余ったシュークリームを乗せてくれた善意を無下には出来ないのだ。
苦悩する私の顔を心配そうなアシュヴァッターマンが覗き込んだ。
「俺の分も食べるか?」
違うそうじゃない!!
「大丈夫。ありがとう」
断って私はシュークリームと向き合った。
その向こう。
「まさか、もう食べたの?」
空になった皿の前でカルナさんがぺろりと唇を舐めた。
「ひと口で食べたぞ。わし様があれほど王族は控えめに上品に食べろと口を酸っぱくして
……
」
「今の俺に王族としての勤めはない」
カルナさんの返答にドゥリーヨダナは大きなため息をついた。
その向かいでアシュヴァッターマンは器用にカスタードを舐めとりながらシュークリームを食べている。
やばい、こんな大きなシュークリーム。カスタードを零さずに行儀よく食べられる自信がない。
アシュヴァッターマンはバラモンで、ドゥリーヨダナは王族だ。上層階級にはちゃんと上品な食べ方があるのだと、ついさっきドゥリーヨダナがカルナさんに言ったばかり。
これは、ひとりだけ醜態を晒す未来しか見えない。
「マスター、食べないのか?」
「うん、今食べるよ」
言いながらもドゥリーヨダナの動きを見守る。かくなる上は王族のドゥリーヨダナの食べ方を真似するしかない。
私が一挙一動を見守るなか、ドゥリーヨダナは両手でシュークリームを持ち、口を開けた。
はむ。
「!!!!!」
シュークリームの穴から溢れ出したカスタードクリームにアシュヴァッターマンが下に皿を差し出す。
「ドゥリーヨダナ!穴から食べるの!」
「ううう」
私の言葉にシュークリームの食べ方を知らなかったドゥリーヨダナがうめき声をあげる。
口を離してもそこからカスタードクリームが溢れそうなのだろう。にっちもさっちもいかなくなったドゥリーヨダナの肩を、隣にいたカルナさんが引き寄せた。
白皙の美貌が無表情にドゥリーヨダナに近づく。カルナさんは軽く口を開けるとドゥリーヨダナのシュークリームに噛みついた。
「ん」
カルナさんの促しに天啓を得た!とばかりにドゥリーヨダナの顔が輝く。
嬉しそうにもぐもぐとシュークリームを食べ始めたドゥリーヨダナに、私とアシュヴァッターマンは顔を見合わせた。
確かに誰かがカスタードクリームが吹き出ないように穴を押さえていれば、あの状態からでもきれいに食べれるよね。
カルナさん、たぶん舌で穴を押さえているよね。
これだと手も汚れないので衛生的。
だけど!だけど!確かに手段としては正しいのかもしれないけど!!
だからと言ってやっていいことかというとそうじゃないよね!?
少なくとも私が同じことをされたら恥ずか死ぬんですが!!!
はむはむぺろぺろしながらシュークリームを堪能している成人男性を見る。
カルナさんが口でシュークリームを持っているので、溢れたカスタードクリームをぺろぺろするのも楽そうだ。そこに恥ずかしさとかは欠片も見つからない。
アシュヴァッターマンを見る。アシュヴァッターマンは慌てて首を振った。
あれが、古代インドの普通というわけではないらしい。
視線を戻す。ほとんど無くなったシュークリームの代わりにドゥリーヨダナはカルナさんの頬を舐めていた。
アシュヴァッターマンを見る。
真面目なバラモンは頭を抱えていた。
食堂中の視線が集まっているなか、ドゥリーヨダナは満足そうにカルナさんから離れた。
「あまくてうまーい」
それだけ?言うべきことはそれだけ?
横のカルナさんも黙ってないでもうちょっとこう何かあるでしょ!なにか!!
「子供の教育に悪い!!」
私の叫びにドゥリーヨダナは唇を尖らせた。
「わし様がわいせつ行為を働いたように言うな!」
「確かに子供には難しい食べ方だが。大人なら問題ない」
やめてカルナさん!保護者の何人かがその手があったか!って顔した!
後で良識派から苦情を言われるのは私ーーー!
視界の端で何人かのサーヴァントがカウンターに行くのが見える。彼らの注文はもしかしなくてもシュークリームなのだろうか。
うう、せめてこの食べ方が流行りませんように!
祈る私に構わずドゥリーヨダナがうんうんと頷く。
「うむ。最初はどうなるかと思ったが意外と食べやすいものだな」
そんなドゥリーヨダナはシュークリームを食べる度にカルナさんを呼ぶつもりだろうか。
呼びそう。
そしてカルナさんも来そう。
ため息をついた私の横で、ため息がひとつ。そのアシュヴァッターマンと目が合う。
私達、今同じことを考えているよね?
目と目で通じ合う私達。こんな状況でさえなければ恋と勘違いしそうな深い共感に浸っていると
「すまない、マスター」
呼ばれて見上げると横にジークフリートが立っていた。
「どうしたの?」
さっきまで食堂の片隅でジークくんと食事をしていたはずの彼に問いかけると、彼は珍しく口ごもった。
「本当にすまない。
……
こんな事を願うのはサーヴァント失格だと思うのだが」
嫌な予感に私は身構えた。
真面目筆頭のジークフリートがサーヴァント失格だと思うような願い。それは
「
……
マスターの、そのシュークリームをひとつ分けてもらえないだろうか」
「え?」
驚く私にジークフリートは言い募る。
「妻に食べさせてあげようと思ったのだが、もう売り切れていて
……
残るはそのふたつだけなんだ」
それ、奥さんに食べさせたいではなく、カルナさんみたいなことを奥さんとしたい、が本音ですよね。
「うまかったぞ」
「カルナさん煽らない!
……
いいですよ。食べ切れるか分からなかったので」
空いている皿にひとつ乗せて渡すとジークフリートさんは律儀に頭を下げて去って行った。
そのどこか嬉しそうな背中を見送っていると、頭にぼよんとした感触が乗る。
ペロッ、これはおっぱい。
舐めるまでもなく慣れた感触。重み的に
……
。
「ミドキャス?」
「正解です。マスター」
楽しそうな声が降ってくる。
「さてさて、なんの変哲もないもの価値が突然高騰する時があります。それが今!!残りのシュークリームはマスターのひとつだけ。新しく焼き上げるには時間がかかります。
みなさま、QPのご用意は?意中の人とあまあまなひと時を過ごす覚悟は出来てます?今なら実演付きでこの価格から
……
」
「ちょっと待ったぁ!!!」
ミドキャスの口上を遮ってドゥリーヨダナが立ち上がった。
「実演とはもしかしてわし様たちの事か?何故わし様がおまえの商売に協力してやらねばならない!」
ドゥリーヨダナのもっともな苦情にミドキャスはころころと笑った。
「一回の出演料はこのお値段でいかがですか?ふたりでシュークリームを食べるだけ。もちろんシュークリーム代はわたくしが払いますわ」
眉間にしわを寄せてミドキャスの手元を覗き込んだドゥリーヨダナは、そこの何かをちょこちょこと直した。
「高貴なるわし様を見世物にしようとするならこのくらいは」
「あらあら、それはちょっと強気すぎでは?」
「早く決めんと聴衆が飽きるぞ」
「仕方ないですねぇ。ではこれで」
「乗った!」
人の頭の上で勝手に行われた商談が勝手に終わった。
「ミドキャス。私がこのシュークリームを食べたいと言ったらどうするの?」
「優しいマスターはそんな事を言わないですよ。定期検診も近いですし」
定期検診!!忘れてた!!
私はそっとシュークリームが乗った皿を押し出した。
かくして、シュークリームの新しい食べ方はカルヨダ式と呼ばれ実演付きでカルデア中に広まったのである。
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読んでくださってありがとうございます。
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