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残りの夜が来た
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スラダン
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フレンズ
仙越
初出・多分旧苦行クラブ内のブログ 2006
金曜日の夜なので、越野は仙道のうちに泊まった。越野のうちより仙道のうちのほうが学校に近いからだ。そう親には言っている。
「ビールだろ」
「寒いよ」
「でも鍋ならビールだろ!」
「そうか?何だってビールじゃん越野は」
俺ビールあんま好きじゃない、太るしとかなんとか仙道が言っている。仙道曰く彼は太り易い体質なんだそうだ。将来が楽しみ。
越野は、このあいだ目がテンでやっていたのだが、ビール自体のカロリーは発熱に使われてしまってたいした問題ではなく問題は発泡によって大きくなる胃なのである、ということを言いながら、ビールをぽんぽんとかごに入れた。仙道は所さんの言うことを全面的に信用しているので、とりあえず目がテンといっておけば納得する。
納得はしてもやはりビールは飲まないらしい仙道も、その他適当な酒を放り込む。絶対こんなに飲まない。絶対こんなに飲まないが、二人はそのことに関しては何も言わずに会計をした。
大量の缶をリュックに詰め込んだため不恰好に膨らんだリュックで、二人はだらだらと階段を登った。越野はちょうど仙道の靴を見ながら歩く位置にいる。仙道は足を引きずって歩くから、靴のかかとが磨り減っている。体育館で使った後外履きに下ろしたバッシュは大きくてぼろぼろで、なんだかもうかわいそう。それがなんとなくおかしくて、越野は真顔とにやりとした顔の間、中途半端な表情でしばらく歩いた。それから小走りで駆け上がり、並んだ仙道の大きいリュックをばんばん叩いて急かした。
「お前がだらだら歩くから、靴がかわいそう」
「なんで」
「磨り減って」
「いや、俺の靴はこういうのに喜びを感じるタイプ」
「
…
くだらん」
どっちがだよー、と仙道が言ったところでちょうど部屋についた。ドアを開けても誰もいない、一人暮らしの部屋は薄暗い。
越野は金属的な音を立ててリュックを床に投げた。投げてからビールが吹き出てしまう、とぼんやり思った。仙道はきちんと冷蔵庫の前までリュックを背負っていき、しゃがんで、リュックを下ろして、ひとつひとつ缶を出して、入れる。冷蔵庫のオレンジの光が仙道の顔の前面だけを照らしている。
動きを目で追いながら、仙道といると楽しいと思った。誰と一緒にいたいかときかれたら、越野はできれば仙道といたい。他の友達ではなく仙道と、できれば自分とふたりがいい。でもそれは、放課後すぐに向かった西日の眩しい部室で、仙道がひとりで漫画を読んでいたときの、くすぐったいような嬉しさの延長線上の気持ちにすぎない。だから、
冷蔵庫をしめた仙道と目が合った。彼がちょっと眉を上げてちょっと笑ったのが、薄暗い部屋の中でも見えた。
越野も自分の荷物を引きずって行く。嬉しかった気持ちが一歩進むごとに仄暗い欲望にすり替えられていく。それはいい。それは多分いいのだ。だからキスをした。
ではなぜこの部屋はこんなに薄暗いのだろう。
仙道が越野の髪をかきあげる。汗臭いと仙道は言う。越野はうっせー、腹減った、と吐きそうになりながら言った。空腹で吐きそうだったのがひとつ。ふたつめはどうしてこれを恋愛にしなければならないのかわからない、逃げ場のない気持ちが、きっと胃の中で腐っているのだった。
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