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有🍙
2024-12-05 13:42:06
5010文字
Public
ARGN|ふうあお
[ふうあお] 14時半の羞恥と寄り道
おふとんの上のふうあお。
※やらしいことしようとしてますがR-18にするほどでもなければ具体的な描写もありません
※レックスっぽいあの子とサクタ口ーがちょっとだけ出てきます
【読了目安:約10分】
カーテンをひいただけの風太の部屋は、うすぐらくてうすあかるくてなんとなく心許ない。くっついたりじゃれつかれたりまさぐりあったりして俺も風太も目の前のお互いにだけ集中してるけど、カーテンだけじゃ昼間のひかりのすべては遮れないし、ときどき階下の駄菓子屋に遊びに来てる子たちのはしゃいだ声なんか聞こえてくるもんだから、俺たち昼間っからはしたないことしてるよなあなんて羞恥がこみあげてきたりもする。それでもこの時間はみんなのスケジュールを突きあわせたすえに捻り出した貴重なもので、この部屋はそのほんの数時間をふたりのあいだだけの密かごとに費やすための、せいいっぱいの隠れ家だった。
「あおい、まくら」
俺は枕じゃないぞ、なんて返すのはさすがに無粋だしそもそも返す余裕もなく、俺は息を詰めてただ風太を見あげた。
腿の内側も立てたひざもぶるぶる震えて、シーツに突っ張った足の裏にも力が入らない。かろうじてだらしなく脚を開いてしまわなかったのは、風太が俺のひざがしらをがっちり掴んでるからってだけ。恥ずかしいことに俺は、俺をほぐす風太の指の動きだけでだいぶだめになってしまい、もう大丈夫だから次に進むよう何度も促したのに「ちゃんとせんばいかんばい」って風太が言い張ってやめようとしないから「ばか! しつこい! いーかげんにしろ!」って半泣きで訴えてようやく指を引かせるなんてことになってしまった。くやしいけど風太がくれる快楽の前で俺はとんでもなくはしたなくてだらしなくなってしまう。
俺の脚のあいだを陣取ってじっと見おろしてくる風太の目は、すっかり亢奮に潤んでいた。かすかに眉を寄せてくちびるをむっととがらせていて、顔だけ見たら不機嫌なのかなって思っちゃうかも。でもこれは、たぶん俺だけが知ってるんだけど、いろいろと我慢してるときの顔。こういうときの風太は意外とちゃんと「待て」ができる奴だから。
とりあえず枕を要求されたから頭の下からずるずると引っ張り出す。頭を浮かす程度のことすらいまの俺にはひと苦労だって風太はちゃんと理解していて、俺の脚のあいだから体を乗りだして枕を掴みあげてくれた。
「うさちゃんのタオル
……
」
続く要求に頭の横のタオルを掴んで差し出した。口がばってんになってる有名なうさぎのキャラクターの織模様が入った、ふっかふかのフェイスタオルだ。
枕は俺の腰の下に入れるとすこしは楽だから使うことにしていて、最初にそうしたときに枕を汚してしまった(風太がローションの量を加減できなかったから!)ので、タオルを巻くことにした。
上京するときにかあさんが持たせてくれた新品のタオルをまさかこんなふうに使うことになるなんて、って変な罪悪感がよぎらなくもない。かあさんには絶対言えない、墓まで持っていこうといつも思う。
風太が枕にタオルを巻きつけてるあいだに俺はさらに頭のむこうに手を伸ばし、ゴムの箱を探り当て、中身をひとつ取り出した。
「風太、
……
ん」
まるいブリスターを差し出すと、うん、ってききわけよく頷いて受け取ってくれた。それだけのことで風太のことかわいくていとおしく思えるんだから俺って結構、いや相当、もしかしてかなり、ばかなんだと思う。
「ちょっと待っとって」
風太はタオルを巻きつけた枕をシーツにそっと置き、ゴムを装着するべく俺から体を離した。
風太が俺の傍に戻ってくるまでのこの「間」が、いつも気恥ずかしくてたまらない。どんなふうに待ってるのが正解なんだろ、とか。風太の脚のあいだでこわいくらいに臨戦態勢になってるそこについ目がいっちゃったりするけど、じっとそこばっか見てたらあんまりにも俺ががっついてるみたいだし、いや実際俺だってこのあとのことに期待くらいはしてるんだけど、相当してるんだけど、なんかもうそわそわしちゃってるんだけど、そういう自分のあさましさもいたたまれない。すぐ戻ってくるってわかってるのに汗ばんだ体がちょっと離れただけで気化熱で肌がすっと冷える感覚がなんとなくさびしかったりして、俺はいつも、胸を高鳴らせながらひざを擦りあわせるなどしてふらふらと視線をさまよわせるしかなくなってしまう。
カーテンを透かすひかりがいまの俺にはまぶしすぎるから反対側へ首をめぐらせたら、すこし離れたローテーブルの上でふと目が止まってしまった。そこには風太の誕生日の締め括りにおとなった遊園地で入手したあのぬいぐるみが、寸詰まりのみじかい両腕を掲げて凛々しくも愛らしい目遣いで佇んでいた。彼(?)としばし見つめあい、ちょっとだけ考えてから、俺は視線を風太に戻した。
「ねえ
……
あの子、見守ってなくない? ばっちり目があっちゃったんだけど」
見守り、というワードに風太は過剰に反応した。俺が指すほうに目を遣るなり「ひゃあ」と裏返った声をあげてゴムの個包装(まだ開封すらしてなかったんだけど⁈)を放り出し、飛び跳ねるようにベッドを降りてローテーブルに駆け寄ってゆく。俺はのろのろと体を起こしながら風太の背を目で追い、こればっかりは仕方ないよなあ、なんて思った。だって、あの子のすぐ傍には、サクタローが横たえられているんだから。
風太は片時もサクタローを離そうとしないけど、どうしても目の行き届かない状況になるときは『見守り係』をだれかにたのむのが常で、シェアハウスで生活をともにする全員が風太の入浴中にそれを担ったことがある。あたりまえだけど俺と風太がこういうことするときはだれかにたのむわけにはいかないから、上着やタオルをかけて目隠しをしたり、風太の好物に顔と手足がついたマスコットストラップを傍に置いて『見守り係』をしてもらったりもした。今日はレックスのケージの傍に定位置の決まったあの子に『見守り係』をしてもらおうと、風太がわざわざ部屋に連れてきていたのだ。
「なしてこっち見とったと
……
」
いや風太が自分で置いてただろ。
そう思って笑っちゃいそうになったけど、テーブルの傍に屈み込んだ風太がぬいぐるみを両手で掴みあげてちいさく揺さぶって、恥ずかしそうな、粗相を咎めるような物言いをするもんだから、俺は懸命に笑いを堪えた。風太にはゆゆしきことで笑いごとじゃないはずだし。
風太はぬいぐるみを後ろ向きにし、うまいことサクタローに寄り添うよう丁寧にポジションを整えながら、ごにょごにょとなにごとかつぶやいている。あーこれ時間かかるやつかなあ、なんて俺は、ふわふわのタオルを巻きつけた枕を体の前に抱えて頬をつけ、じっと風太を待った。
事の最中に、しかもこれからいよいよ体をつなげようかってときに、相手をほっぽってまっぱだかでおしりまるだしでぬいぐるみを宥めすかしてる大学生男子。どんな感情を抱いていいかわかんなくなりそう。でも俺は、べつに腹もたたないしあきれてもいないしからかう気にもならないし、ああ風太だなあって思うだけ。これが風太には必要なことで、いまふたりきりで風太と向きあっている俺にも必要なことだと思うから。
ちゃんとサクタローば見とってな、だいじな役目ばい、たのんだけんね
――
なんて、年下のきょうだいに言い含めてるみたいな声が聞こえてくる。フウライの末っ子みたいな風太が絋にいの次に誕生日が早いのはなんかのバグだと思うんだけど、実のところ風太はちいさい子にはちゃんとお兄ちゃん然とした態度で接している。駄菓子屋に遊びに来る男の子たちと一緒になってはしゃいだり、キャッチボールしたいってせがまれてつきあってあげたり、無理にそうしてるようには見えないから、風太って案外おとななところもあるのかもとか、そもそも風太がこどもっぽいからちいさい子の気持ちに寄り添えるのかもとか、考えることはいろいろだ。でもたぶん風太自身が、年上の、年の離れた人にそういうふうに接してもらってきたから、無意識にそうしてるんだろうな。いまの風太がそれを覚えているかどうかはともかく
――
「ただいま!」
不意にベッドがはずみ、風太がベッドに飛び乗るように戻ってきた。おかえり、と枕を傍らに置くとすぐさま頬にキスがおっこちてきた。
「もうだいじょぶばい!」
「
……
うん、そっか。よかった」
「なんも見とらんって言うとったけん安心せんね!」
「ちょ、だれがなにを⁈」
「あおいのやらしかとこ見てよかとはオレだけやけんね!」
高らかな独占の宣言とともにぎゅうぎゅうに抱き締められ、その勢いのままにふたりしてベッドに倒れ込んだ。スプリングをはずませながら風太がさもうれしそうに笑っているので俺もついうれしくなってしまう。首筋へのキスと頬ずりが交互にやってきてくすぐったさに笑いが零れた。ころころとじゃれついてくるくせに扱いがむずかしいいきものを手懐けたような、奇妙な安堵が胸に満ちてゆく。
風太の背に腕をまわしてぎゅっと抱き締め返して
――
そして俺は気がついてしまった。密着した体の、腿の前面あたりにたいそう硬い感触が押しつけられていることに。
……
あの、想定外の寄り道をしてきたというのにたいへん威勢がよいままなのですがそれは。
風太は前髪をくしゃくしゃにしてとんでもなくいい笑顔のまま体を起こし、ゴムのブリスターを勇んで拾いあげて開封し、装着を開始した。俺はその手つきを、ゴムが巻きおろされてゆくその本体を、茫然と凝視する。
萎えてない。すこしも。
あの状況でも身体的亢奮を維持していたことに純粋に感心してしまった。風太ってすごい。ある意味すごい
……
「なんねあおい
……
」
やけに恥じ入ったような風太の声で心臓が跳ねあがるように我に返った。自分の手許に集中しているとばかり思っていた風太が上目にこちらを窺っている。
「あんま見んで
……
」
しまった。やってしまった。いつも意図的に視界に入れないようにしていた場面を結果的にじっくり堪能してしまった挙句にそれを風太に見られ、「あおい、やらしかぁ
……
」なんて言われてしまい、俺はおおいに動揺した。
「な、や、やらしくない!」
「えー、いつもこがんじっと見てこんやろー?」
「ちょうど視界に入っただけだし!」
「いっつもはそっぽむいて待ちきれんって顔しとっとに」
「
…………
そんな顔してない」
「なしてそがんうそつくと? さっきもやっちゃそわそわしとったばい?」
「見てたの⁈」
「んにゃ、ちょうど視界に入っただけやけん」
風太は口許に得意げな笑みを広げ、揚々と俺の脚のあいだに戻ってきた。裸の胸と胸をくっつけるようにのしかかられ、動揺と羞恥に熱くなった頬を両手で包まれてしまえば、顔をそむけたくても逃げ場がない。
「まっかっかになってしもうたねえ」
「うるさいなあもう
……
」
「オレはうれしかばい? オレも早うあおいとしたかし」
「
……
そう思うんなら早くしなよ」
風太が『見守り係』を整えるために俺から離れたことは俺も納得しているし一切責めるつもりもないけれど、中途半端に火照った体を放っておかれたことには違いなく、多少なりともうらみがましい気持ちになるのは仕方ないと思う。
傍らの枕を掴んで風太のよこっつらにやわらかく叩きつけてやったら、風太はにっと口角をあげて体を起こした。
「ごめんなあ、待たせてしもうて」
謝罪を口にしながらいたずらっ子みたいな顔してる。こどもじみててなまいきでちょっとむかつくけど、劣情が入り混じったこの顔は俺しか知らない顔で、きらいじゃないから困る。仕方ないからすこしだけ腰を浮かせたら、風太はよいしょって気の抜けたような掛け声とともにシーツと俺の体のあいだに枕を押し込んだ。
こうされるとこのあと腰は楽だけどいろいろまるみえになっちゃう、なんていまさらな事実にじりじりと炙られ、ひざが胸につくまで脚を折り曲げられ、もうとっくにやわらかくぬかるんでるそこにかたくてまあるいものが押し当てられて、勝手に呼吸が荒く早くなる。
やだな。がっついてるみたいでやだ。あさましい。はしたない。早く。やだ。はずかしい。はやく。
体じゅうをめぐるくらくらするような羞恥は、ゆっくりと侵入してきた風太に押し潰されて期待とないまぜになり、不埒な動きであっという間にかきまぜられてしまった。
<了>
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