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スサ
2024-12-04 18:44:20
2648文字
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【ゲタ水】若返りの薬飲む水の話
できてるゲタ水で水が普通に年取ってるけど、なんか相手は若いのに可哀想だな…という負い目から若返りを画策する水の話(の、出だし)です。
見るからに怪しげな薬は、そもそも出自から怪しかった。ねずみ男の紹介だからだ。だが、なぜか今回騙されているとは思わなかった。そもそも何だかんだ、昔(今も時々)奢ってやったのが良かったのか、何か義理立てすると決めた理由でもあるのか、彼は水木にはほとんど嘘をつかないし。鬼太郎が知ったら説教を食らいそうだが。
「
…
よし」
水木はあぐらをかいた姿勢で、男らしい仕草で頷くと、目の前の緑の小瓶をぐいっと飲み干した。
「
……
っ」
独特の味。甘いような苦いような
…
、記憶があったのはそこまでで、空になった瓶が転がる頃には、水木は意識を手放し布団に倒れ込んでいた。
養父は思い切りが良い。時々良すぎるくらいに。すっかり成長し、往時の父に似た灰白の髪をした青年、田中ゲタ吉で通している男は、何やら胸騒ぎを感じ家路を急いでいた。
予感にこれといった明確な理由はない。しかし、朝出掛けに、珍しく養父に帰りの時間を尋ねられた。
そんなことは今までになく(早く帰ってきなさいと言われたことも、片手の指で足りる程度)、時間の経過と共に不安が育っていった。朝の時点ではそこまで気にしていなかったが、ねずみの奴が水木家に立ち入るのを見たという報告が烏から上がるに至り、一気に心配の度合いが増した。ねずみ男が水木に危害を加えるとは思わない。さすがにそれはない。だがトラブルに巻き込まれる可能性は大いにある。
予定を巻きに巻いて「たはだいま戻りましたッ」と帰宅したゲタ吉は、果たして、自分の予感がそう外れていなかったことを知ることとなる。
まだ宵の口だというのに、返事もないどころか、何の生活音もしない。電気はついている。水木の靴もある。
…
そして、微かだが妖気がある。
グッ、と奥歯と拳を固めてゲタ吉は家に上がり、ズンズン妖気の出元である水木の部屋に向かう。水木さんに何かあったら容赦しない、地獄送りも生ぬるい、以下とても外にお出しできないような類の呪詛めいた言葉を並べながらゲタ吉は襖を開けた。襖が悲鳴を上げたが知ったことではない。
「
…………
、みず、き、
…
さん
…
?」
布団の上に人が倒れている。水木で間違いない、はずだ。魂も同じ。
だというのに
…
。
ゲタ吉は水木の隣に膝をついた。呼吸があることにほっとする。ほっとしたが。
水木は、ゆるやかにではあったが年をとった。見た目にもその加齢は明らかで、ジジイになった、と本人もしょっちゅうぼやいている。
それが、どうしたことだろう。
倒れている水木は、若い──幼い鬼太郎を拾った頃の容姿をしているのだ。
妖気の正体はこれしかないだろう。何らかの、若返りに関する妖怪の薬がここで使われた。転がっている緑の小瓶を手に取り、ゲタ吉は鼻の頭にしわを寄せる。
「
…………
」
一体全体、何が
…
、とゲタ吉が小瓶を握る手に力を込める。ビシリと入るヒビに、やり場のない憤りがうかがえる。
だがその音が呼び水になったかのように、う、と小さな声を水木がこぼした。
「水木サン!」
小瓶を放り投げ、ゲタ吉は慌てて水木の肩を掴み、自分の膝に引っ張り上げる。
ぎゅっとつむった後、うすらと瞼が開く。今より少し暗く感じる、青を抱いた瞳が開く。茫洋とした表情はゲタ吉をとらえると、ぱっと変わった。
「鬼太郎!」
「
…
はい」
どうやら自分のことはわかるらしい。ゲタ吉はほっとした。
色々事情があって外ではゲタ吉で通しているが、家の中はその限りではないし、水木が呼ぶならポチにでもタマにでも改名しよう。
「お
…
おかえり」
拍子抜けしてしまったが、ゲタ吉は、上半身を起こしてはにかんだ水木の両肩をしっかり掴んで、努めて冷静な声で尋ねる。
「水木さん。何があったんですか」
「
…
?何が
…
?」
きょとんと首を傾げる水木。
…
普段見ている年齢を重ねて老齢の水木がやってもゲタ吉は可愛いと思うのだ。それをピチピチの若い水木の姿でやられたらひとたまりもなかった。
「ぅぐっ」
「!? ど、どうした
…
?」
水木が慌ててゲタ吉に身を寄せる。すっかりはだけた胸が眼前に迫る。天国
…
、ではなく。
「あ、あの。端的に言いますね、水木さん
…
今若返ってます」
若い、童顔の猛威を容赦なくふるう水木はぽかんとした後、満面に笑みを浮かべ、喜べ鬼太郎!と抱きついてきた。
単純な力の話なら、水木に抱きつかれたくらいでゲタ吉は倒れない。だがウン十年ぶりのピチピチの水木(浴衣はだけまくりの姿)が急に目の前に現れて抱きついてきたのだ。さらに何かいい匂いまでする。効果は抜群すぎた。
布団に押し倒されたような格好のゲタ吉の上に、ニコニコ笑う若い水木が乗り上げる。これは騎
…
、とゲタ吉の喉仏が正直に動く。
水木はますます嬉しそうに笑った。
「おまえはそんなこと言わないけど、俺は気になってたんだ」
にじり寄る水木から逃げることも出来ず、何がです
…
?とゲタ吉は聞き返す。
「ジジイだからあんまり出来ないし、1回で眠くなるし、腹もたるんでる気がするし
…
」
ゲタ吉は
…
ゲタ吉はあまりのことに自分の頬をムギュッとつねる。痛い。つまりこれは
…
現実
…
?
水木は優しく、しかし確かに誘惑もこめて、ゲタ吉の頬を撫でる。
「1回くらい、もうおまえが無理だって言うくらい付き合ってやりたいって思
………
」
水木は最後まで言わせてもらえなかった。
ゲタ吉が腹筋で起き上がり、ギュッと強く水木を抱きしめたから。
「
……
僕ァ、あなたは嫌がりますけど、すべすべして好きですよ、年とったアンタも。神社の玉石みたいにひんやりして、すべすべしててね」
「
…
俺は石かよ」
「何回もできなくたって、付き合ってくれるじゃないですか。無理させてんのはこっちですよ。それでもアンタを離してやれないんだから」
「
……
」
水木は、勢いをそがれて、ぽすっとゲタ吉の肩に額をつけた。すこし、勝手に先走りすぎたかも
…
、と落ち込みかけた意識を、むぎゅっと尻を掴む手に引き戻された。ついでに、無防備だったので高い声が漏れた。恥ずかしかった。
「でも据え膳食わぬは何とやら言いますし」
「
…………
」
水木は恐る恐る、色々あって今は肌を合わせるまでになってしまった青年を見る。
薄い唇が口角を上げるのをまじまじと見つめてしまう。
ぺろり、長い舌がその唇をひとなめ。
ゲタ吉の視線が一気に熱を帯びる。
「ありがたぁく、頂戴いたします」
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