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しゃどやま
2024-12-03 20:57:05
1369文字
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【モブ戴】宝石
アラビアン戴天の足を舐めさせていただくだけの小説
「山賊から宝石を取り戻したそうですね」
香の焚かれた部屋の中で、彼は足を組み直す。長い手足を投げ出しているというのに、だらしない印象はない。花が自然と蔦を伸ばすように、ありのままで美しい。
白く細長い指先が、大ぶりな宝石のついた首飾りを確認するように撫でる。真珠の腕輪を手首に絡める。赤子の頭ほどある紅玉を持ち上げた。
「素晴らしい働きでした。褒美を取らせましょう」
切れ長な目を細める。金の装飾のついた髪が揺れる。髪はしなやかに柔らかく、金に負けない輝きを持っていた。
それは彼の髪だからだろう。外国の彫像のようになめらかな肌と、微かに笑みを浮かべた唇。押し倒せば容易に組み敷けそうな儚さと、視線一つで自分を殺せそうな強さを持っている佳人だ。
驚いたように目を開く。穏やかな眉を微かにひそめた。
「おや
……
? 私を物欲しそうに見つめて
……
」
自分の視線を察した彼は、ふふ、と笑う。紅玉を宝石箱に戻すと、ゆっくりと歌うように言った。わざと焦らしている。一番の褒美を知りながら。
「きみの望みは海を渡った珍しい宝石でしょうか? それとも王侯貴族の味わう美酒?
……
それとも」
小さく囁く。
「私
――
でしょうか」
聞き取るために必死になる自分を、嗤うように。肩をびくんと震わせた自分に対し、慈悲深くも感じさせる微笑みを浮かべる。
「
……
フフ。素直で可愛らしいですね」
指先で己を愛撫するように、胸元を撫でる。目線を支配することを楽しむように、喉に指を当てた。
「金銀財宝より私の肌を求めるとは
……
嫌いではありませんよ」
彼は宝石箱から宝飾に飾られた小さな砂時計を取り出す。さらさらと砂が動くそれを見せつけた。
「では、この砂時計の砂が落ちきるまでの間。私の足を好きにしてかまいませんよ」
つい、と足を見せつける。裸足の白い肌が、裸より艶めかしく見えた。
「撫でるも
……
擦り付けるも、あなたの自由。いいですね?」
自由。唾液を飲んだのを、彼は楽しげに笑う。彼の手の中で、砂時計が傾く。
「さぁ
……
どうぞ」
砂時計の天地が返った。飢えた獣のように足首へ飛びつく。両手で宝物のように支え、震える唇を寄せた。
「おや? 口づけをするのですか?」
ちゅ、と唇で爪先に口づける。他人の足だというのに、嫌悪感がわかない。まるで食べ物のようにさえ見える。
「ふふ。くすぐったいですね」
口づけを繰り返す。親指に。足の裏に。土踏まずに。肌はすべて白く、皮膚はなめらかだ。
肉は地上を歩いたことがないのかと思うほど柔らかい。この人は天上の存在なのかとさえ思えた。
「あぁ
……
喜んで貰えて嬉しいですよ」
はむ、と唇で土踏まずを噛む。痛みを決して与えないように、ゆっくりと舐めしゃぶる。瞬間、熟れた果実のような甘い香りが漂った。多幸感に吸い付くと、くすぐったそうな笑いが聞こえる。
「ふふっ
……
そこまで」
冷酷に、砂時計の砂が落ちた。優雅に足が引かれ、小さな絹の布で拭われる。彼は再び、何事もなかったかのように見下ろす。
「これ以上の願いを叶えたければ、私に尽くしなさい。いいですね」
深く頷いた。彼は、嬉しそうに微笑む。その蠱惑は自覚的か、無自覚か。
「一途な人は好きですよ」
唇から覗く舌が、紅玉のように赤かった。
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