かぁびぃ@駄作者
2024-12-02 19:06:53
1649文字
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吾輩は幽霊、あるいは(バンダースナッチ)

バンダースナッチとモブくんの話。
なんで同種(トランスフォーマー)である事に拘るのに、名乗りあげる時は幽霊なの?と言うだけの話。空白も余白も文法も捨てた。

小話が通りゃんせ

「やれ同種だ、やれ変形だって。やたらトランスフォーマーかどうかを気にするのに、なんで名乗り上げる時は”幽霊”なの?」

名前がその様なものゆえに、遊び心を優先しているのか?
それともその経緯から『トランスフォーマーの幽霊』として通しているのか?

彼は機嫌よく歌っていた鼻歌をぴたりと止めると、質問してきた者の方を見やる。その後手にしていた普段は飲まないような極めて高そうな酒のラベルを見て、ふふんと鼻を鳴らす。

「今日は気分が良い!そう、気分が!──であれば、付いてくるがいい」

なら着いて来いってどういうことさ。
なんて、そうして連れてられた先はこれまた暗い夜の海。本当に幽霊が出そうだと言えば「安心するのである、横に本物がいるのでな」と相手はさくさく砂浜の際を進んでいく。
少し荒れた波が足を持っていきそうで恐ろしい。思わず数回止まるが、海に愛された鳥の容姿を持つ存在は構うこと無く潮風に紛れていた。

「見よ、あれこそが吾輩である」
「え……?!」

吹き付ける風の溜まる場所。岩と岩の隙間。その一角。
よくよく注意してみれば、海の上のあらゆる場所から巻き上げてきたであろう何かしらのエネルギーの痕跡──と呼べるほどもあるかは分からないが、あった。
「まあ、流石に吾輩らはもう少し規模が大きかったが」幽霊は顎に手を当てしみじみと呟く。

「え、え???」
あれ何?と言えば「残りカスの掃き溜めだ、見て分からんか?」と、そうなのだがそうじゃない返事が返ってくる。

「あれが貴方なわけ?」
「そうである」
スパークというこの世で最も輝くエネルギーが、行ける所まで行った後に残した最後のゴミ。恨み辛み。悪意。憎悪。そういうものがたまたまよく溜まる角の岩部屋。並々ならぬ悪意はいつしか複合したひとつの塊となり、それはいつしか暗黒の星の奇跡を享受した。

「スパークに残った強い記憶があたりに薄ら写されるみたいな現象とか、聞いたことあるもんなあ」
それの上位互換かあと思った。有機生命体は魂のエネルギーを残すのが難しいらしいが、その辺は我々機械生命体ならではの文化や感覚に寄るところが大きいとも思う。

「あれを見て、お前は”同種に会った”と思うか?」
まあ別に、幽霊に会ったと言うことにしてもいい。と意味があるのかないのか分からない質問の妥協を提案。

「思わないね」
「であろう。では」次は高い酒瓶をぷらぷらと見せ付けた。この男、まだこの酒を握っていたのかとここに来て苦笑いを漏らす。

「これを渡した男のことを、同種と思うか?」

うーん。少し難しい質問だ。だが同じトランスフォーマーだと言うことにすれば、というか趣旨としては間違いなくそうだろう。なので答えはこうなる。──「思うね」。

「そんでもうわかった。あんたは思わないんだろ?」
「その通りである」

なら今の自分たちと幽霊を分けないものは何があるか。考える。──変形(トランスフォーム)。なるほど単純だ。

「まあ構わんがな、必要とされているのは幽霊。もっと言えば霧の怪物の逸話である。吾輩は固有のイメージをとりあえず形にして動き回る物の怪。戦闘の際はそりゃあ幽霊を名乗る方が気合いが入るというものよ」

えらく相反したものを持つと思うが、なら逆に何故トランスフォーマーにこだわるのだろう。言おうとしたけど、やめた。
だって、彼らは”そうだった”んだから。

未練、後悔、悲観。
これらも悪意と同等に、海を渡れず、空を飛べず、いつかはあの掃き溜めに流れ着いてしまうのだろうか?

何気無しに彼の、分かりやすく言うなら『コンプレックス』の部分に触れてしまったな。と思った。高い酒とはおそろしい。

「帰るぞ、スナーク」
「いやスナークって何?」

それも幽霊に関係してるの?
そう聞けば、目の前の海鳥はおかしそうに笑った。

ああ、うん。こうして見れば、俺たちを分けるものなどここには無いと思うのにな。