あがれす@ばんちゃ
2022-07-10 15:05:15
1080文字
Public アガレスとジェーン
 

小さな夏の話

短編も短編な山なしオチなしの雰囲気もの。

……エオルゼアでは雪を食うのか?」
「んあっ?どしたの急に」
 どこか不思議そうに見つめて呟いたアガレスの一言に、氷を掬って口に運ぼうとしたジェーンのスプーンが止まる。……食や料理に頓着がないのは知っていたが、もしやシャーベットも知らないのだろうか。
(暑そうなのに)
 じっと見つめたまま動かないアガレスに「よかったら食べてみない?」と一言添えて、ジェーンがシロップと一緒に掬い上げた氷を口先へと差し出す。急かすつもりもないけれど「溶けちゃうよ?」と付け足したところで、アガレスはようやく口を開いて差し出された一匙を食んだ。
「どう?」
……あまい」
「やっぱり?シロップかけすぎたかな〜。でも冷たくて美味しいでしょ?」
あぁ、涼を取るためのものなのか」
「そうそう、悪くないでしょ」
 そうはにかんで一匙掬い、ジェーンは再びアガレスの口先へとスプーンを差し出す。訝しむように眉根を寄せたアガレスに、ジェーンは億面もなく「だって暑そうだし」と言い放った。
「暑そうに見えるのか?」
「うん。毛色のせいだと思うけどもしかして平気?」
「少しは暑いが、お前が思ってるほどじゃない。暑いのはお前の方だろう」
 アガレスはそれきり、ふいと視線を逸してしまった。機嫌を損ねたわけではない。口にこそ出さなかったが、ジェーンが自身のためにわざわざ買ったシャーベットをアガレスにも分ける気遣いを見せた事に対して、暗に「お前が食いたくて買ったんだからお前が食え」と示す態度をとったのだ。ジェーンの方も、アガレスのそんな態度に気を悪くするような事はなかった。
「平気ならよかった!食べたくなったら言ってね」
 そう言いながらジェーンはシャーベットを口に運び、そのあとも時折戯れるようにアガレスの口先にスプーンを差し出した。アガレスの方も怪訝な顔をしはしたが、それがジェーンの無理強いや押しつけなどではない事など分かりきっていた。何も言わずに薄く口を開いて差し出された氷を食んでいくうち、シロップのかかった氷は溶けるよりも早く二人の口へ運ばれては消えていく。
 彼女の買った小さな氷山はあっという間になくなって、二人に束の間の涼をもたらしたのだった。

……ハリエット、どっちが甘いと思う?」
「何なのよあの二人は本当に!ジェーンが当然のように甘っちょろいのは知ってるわよ!!?だけどほんっっっと何なのよアイツは!」
「あれで付き合ってるわけじゃないし好き合ってるわけでもないって言うんだからすごいよねどう見ても
「いちゃついてんでしょうが……!!!」