あがれす@ばんちゃ
2021-12-19 22:06:14
6445文字
Public ティアとヌン
 

なぜなに?チャ・ヴァノ・ヌン!

【野良猫と山猫】の補足と備考のはずが異様に長くなってしまった物。時系列や各場面での補足、チャ族という氏族の捏造設定などなど。正直盛りすぎた

・【野良猫と山猫】の時間軸ってどうなってるの?

スタート時点で【一縷の光】の約1ヶ月後を想定していました。
①【一縷の光】でジェーン一行がウルダハからリムサに高飛び。
②海都での生活のためのギルド登録やその他諸々の手続きをヴァノ一行が手伝う(※有事の際に拠点に出来るよう、どうせなら知ってる人にという理由から、ヴァノ一行の使っていたFCハウスをジェーン一行が譲り受けています)
③ヴァノ一行、リムサを出発。海を渡ってベスパーベイに到着後、東ザナラーンにあるチャ族の集落拠点を目指す。
④集落には到着したものの当代ヌンと折り合いつかず。衝突を避けるため西ザナラーンに集落拠点を構えることを決意。
⑤ノフィカの井戸まわりがウルダハの王立菜園予定地になっているため、開拓・開墾の手伝いや周辺街道の護衛・魔物退治をする代わりに入植出来ないか打診。
⑥当初“ミコッテ族の縄張り”という排他的実力主義なイメージから難色を示されたが、ギルドリーヴや行き交う商人たちを相手に地道に依頼をこなし「他種族や周辺住民とも共生しようとしている少人数コミュニティである」とアピール。これが功を奏しすみっこ暮らしの許可が下りる。
【ここまでで約1ヶ月】
そんでもって
⑦チェルノ君、ノフィカの井戸に転落。【野良猫と山猫】本編へ。という流れになります。
 ここからさらにチェルノ君の打ち身の治療と静養が2週間ほど、恩返しの期間が1週間ほどあったため、海都でチェルノ君と出会ったジェーンが「あいつ変わらないなぁ〜!」「久しぶりにヴァノ達のことが聞けて嬉しかった」と言ったのは「ヌンとして呼ばれたからザナラーンの故郷に里帰りするぜ!じゃあな!って1ヶ月半音沙汰なかったチャ・ヴァノが辺鄙な崖下でヌンやってる」と聞いて「あいつどこ行っても破天荒じゃん!」と笑ったわけですね。
 たった1ヶ月半でも“久しぶり”という表現になったのは、ヴァノ一行というか、チャ・ヴァノという人物が良い意味で騒々しいヒトだったため。ジェーンに限らず「なんか静かすぎて逆に落ち着かない。あいつどうしてるかな」と思い出される事がある程度には、彼は海都の住人たちに親しまれていました。


・病み上がりのチェルノ君がいきなりウォーターシャードの砕岩に連れていかれたのはなんで?

「ファイアシャードが加熱や発火、アイスシャードが冷蔵冷凍に使われてるなら、飲水や生活用水の濾過のためにウォーターシャードが使われているのでは?」という筆者の世界観解釈があったためです。大変申し訳ない。
 シャードやクリスタルがクラフターの製作で使われるのはもちろんですが、あの辺の河川から取れるなら生活用水の濾過に使っていても支障はないかな……?と考えたため「水瓶の底に沈めておいて濾過に使い、ある程度使ったら新しいものを採取する。使っていた分は川に還して環境エーテルを補充させ、時間が経てば再び使えるようになる」という用途を想定しています。捏造にはなりますが、生水は怖いって認識があの世界でもポピュラーだといいな……と思ったので。さらに言えば、急に人数が増えた分とチェルノ君も怪我してた分とで水とかお湯いっぱい使っただろうな……と。


・砕岩後、チャ・ヴァノ、チェルノ君、オド君が三人きりで喋ってたのはどういう状況?

 ヴァノが夜間の見張りに立っていたところに、チェルノ君とオド君が晩ごはん(串に具材を刺して、あとは好きな火加減で炙るだけ!)を届けに訪れていました。
 チャ・ダナから「ルノが無自覚力持ちだった!」と聞いたルヒティロナが(自覚がない?そういえばあの子、ヴァノと違って兄弟とか男友達とかいないのか?)と気付いて「これを届けるついでに色々話を聞いておいで」と送り出したのです。
 ヴァノとの付き合いも長く、海都での生活も長かったルヒティロナは、“ヌン”と“ティア”というミコッテ族サンシーカーの苛烈な競争を強いられる境遇と、そこに生まれたがゆえの苦悩をよく見聞きし、理解も示していました。彼女が海都で出会ってきたティアは、何もチャ・ヴァノ・ティアのように正面からぶつかっていくタイプだけではなかったのです。
 ルヒティロナ自身にも兄と弟がいた経験から、物静かに寄り添うだけのオド君とは全く違う……もっと気さくで、無遠慮で、真っ向から接してくるヴァノのような、兄貴のような存在がいた方が良い。チェルノ君の、“ヌン”に対してどこか引け目を感じているような、萎縮するような態度の理由は詳しくは分からないけれど、この二人はきちんと引き合わせておいた方が、今後のチェルノ少年の為になるんじゃないかという彼女なりの考えと気遣いがありました。


・銀髪の女性?マリベルって誰?

 まったくと言っていいほど出番がなかったけど、れっきとしたヴァノの彼女です。メインヒーラーの幻術士ルヒティロナ、戦闘はからっきしな職人のチャ・ダナと違い、冒険者としてヴァノやジェーンとも肩を並べた事のあるヴァノ一行の貴重な戦闘要員のミッドランダー女性。
 実力こそありますが戦闘自体は好きではなく、どちらかというと日がな一日寝ていたい人。護衛や魔物退治の依頼も正直あまり乗り気ではありませんが「生活のためには仕方ない。お金大事」と考え渋々でも働きにいける、ヴァノ一行の財布を握る経理担当が彼女です。
 今回は日頃からお世話になっているチェスター&エルル夫妻から直接護衛の依頼をされたこともあって重い腰を上げて同行し、ちょうどチェルノ君たちがお世話になっていた3週間ほど出払っていました。
 もともと無気力な人ですが、護衛として気を張り続けている状態が3週間も続いたため、チェルノ君とオド君に挨拶をしたり会話をする余裕もなくさっさと帰ってしまいました。そもそも彼らが居た事に気付いていたかすらも怪しい。つかれた。
 無愛想なわけでも何でもなく、今回はただひたすらにタイミングが悪くて印象に残りづらかった人ですが、3週間もの間チェスター&エルル夫妻にしっかり付き添い、護衛という依頼には含まれていない荷卸や荷運びの手伝いなどもきっちりしていたため、エルルの口から直接「マリベルが手を貸してくれて助かった」と名前を出された上で好評されていました。


・チェスター&エルル夫妻との関係

 夫妻は普通の行商人としての仕事ももちろんやっていますが、配置薬というやや特殊な仕事をしている関係でザナラーン各地の村落を自分たちの足で定期訪問しています。
 道中ではアマルジャ族やそのテンパードによる人攫いの危険性はもちろん、錬金薬という比較的高価な商材を取り扱う関係で銅刃団による賄賂の請求や、野盗に襲撃されるリスクを考えて腕の立つ護衛の存在が必須であり、戦闘の出来るチャ・ヴァノやマリベルに護衛の依頼をして着いてきてもらう事もしばしば。
 身体の弱いチェスターは基本的にウルダハに居ますが、重要な商談や薬の相談があれば多少無茶をしてでも赴き、真摯に相談に乗ろうとします……本当によっぽどの事でなければ、エルルが制止して彼女一人で訪問していますが。
 普段であればチェスターが同行できる範囲は西ザナラーンのスコーピオン交易所〜ベスパーベイ、中央ザナラーンのブラックブラッシュ停留所あたりが限界ですが、今回はたまたま体調が良かったため、アラミゴの薬膳や薬茶のことを聞くために南ザナラーンのリトルアラミゴまで赴いていました。体調に考慮してゆったりと余裕を持った旅程を取ったおかげか、長旅のあとでも比較的元気。代わりに、護衛として付き添っていたマリベルの方が疲れきってしまいました。
 配置薬業をはじめた当初に雇っていた護衛が諸事情でやめてしまい、その後の護衛依頼は冒険者ギルドや互助会を通して斡旋してもらってその都度雇っていましたが、「身体の弱いヒューラン男性とララフェル女性の夫婦」「割高な商材を扱っている」「同じルートを定期的に回っている」などの点から他の商人たちより懸念すべき点やリスクが多く人選が難航。
 どうしたものかと頭を悩ませていたところに現れたのが「護衛するから東ザナラーンまで乗せてってくれないか?」と頼んできたヴァノ一行でした。ヴァノ一行がザナラーンに渡ってきて最初に受けた仕事が、チェスター&エルル夫妻の護衛だったのです。
 西から東へ、東から西へ。
「往復で護衛してもらったけど、腕も立ち人柄も良いのでは?」となったチェスター&エルル夫妻。「金払いも申し分ないし、人の良いご夫妻だから放っておけないぞ?」となったヴァノ一行。
 利害の一致以上の不思議な信頼感を試すため「今後のお互いの良好な関係のために、一つ難しい依頼を引き受けてもらえないか」と打診されたのが、“チェスターの体調を鑑みながらのリトルアラミゴまでの護衛”でした。
 優しいけれど強かで、協力を惜しまないけれど抜け目なく打算的。ウルダハで行商を営むチェスター&エルル夫妻には、そういう“商人らしいちゃっかりした一面”も確かに存在するのです。
 この時点でのヴァノ一行とチェスター&エルル夫妻の間柄に、ジェーンという存在は一切関係していません。いつか知る日が来るかもしれませんが、今日の彼らは他でもない、彼ら自身が結んだ縁で繋がっています。


・チェスターがチェルノ君に頼んだ届け物って?

 薬瓶がいくつかと手紙らしき封筒が入った木箱、と書きましたね。薬瓶の中身は蜂蜜を薬湯で伸ばしたシロップが入っています。【一縷の光】からすでに1ヶ月半が経っていますが、ニアちゃんの喉の火傷はまだ完治していません。
 経過は良好ですが、チェスターが直接ニアちゃんを診に行けないため念には念を入れて、2週間に一度の薬の処方と、手紙のやりとりが続いています。チェスターが少しばかり困った様子でチェルノ君に届け物を頼んだのは、リトルアラミゴに出掛けていた関係で薬を送るタイミングがずれてしまったからでした。
 手紙はチェスターからではなく、エルルからジェーンに宛てたもの。詳しい内容は省きますが、「最近よく護衛を引き受けてくれる人達」について書かれています。



・“チャ氏族”についての設定と解釈(※めちゃくちゃに捏造していますのでそういうNPC居そう〜!ぐらいの流れで読み飛ばしてください)

 チャ・ヴァノはミコッテ族サンシーカーの命名規則に則り、チャ氏族というコンドルを戴く氏族の出身になっています。
 出生地は東ザナラーンのバーニングウォールがある辺り。ダラガブの破片が落ちるまでは標高の高い断崖絶壁に居住地が点在し、三人のヌンがそれぞれ山頂付近・中腹部・山麓と担当地帯を分担して取りまとめる形でコミュニティを形成する一族でした。

 山頂付近を担当するヌンは天候を見定め山を知り尽くし、異変があれば中腹部や山麓まで忠告に駆けられる力ある者。
 中腹部を担当するヌンは山頂と山麓のヌンの仲立ちとなり、両者の子を預かり育てられる度量ある者。
 山麓を担当するヌンは一族のコミュニティだけに依らず、外部との交流や交渉を担当しティアを送り出せる理知的な者。

 集落外の者や子ども達からも分かりやすいよう、それぞれが第1ヌン、第2ヌン、第3ヌンと呼称されています。役割は代々親子や兄弟で継承され、ヌンが誰か一人欠けても他のヌンが繰り上がりで役割を継承し担当するか、役割に相応しいと判断されたティアが呼び戻され据えられるという一族でした。
 生活環境が過酷なだけに、たった一人に一族の命運が背負わされ責が問われる事がないよう、ここに居を構えた初代のチャ氏族長とその兄弟たちがそれぞれヌンを名乗り、役割と責任を分担するようになった、と伝えられています。

 生まれたときは男女問わず中腹部の第2ヌンの元で育てられますが、男児はある程度まで育つと山頂の第1ヌンの元でスパルタ教育を受け、第3ヌンに認められてようやくティアとして旅立っていきます。
 チャ・ヴァノ・ティアも例に漏れず、それぞれのヌンに叩き上げられて育ちました。父親は当時の第3ヌン。ヴァノは今でも「どこまでも高く広い空を知ってこい」と冒険の旅に送り出してくれた父を尊敬しています。

 海都で名を挙げたチャ・ヴァノ・ティアがヌンとして呼び戻された理由はただ一つ。ダラガブの破片の落下によって生活環境が激変し、壊滅的な被害を受けてしまった一族を立て直すためでした。
 第1ヌンはこのダラガブ片落下の折に死亡しており、その役割を引き継いで五年もの間コミュニティを存続させていた第2ヌン……ヴァノの父親が病に倒れ、急遽、第3ヌンを担当していたヴァノの歳の離れた兄……ダナの父親が一族の舵取りを一手に引き受けなければならなくなったのです。

 一族の存亡がかかった一大事と聞いて飛んで帰ったヴァノでしたが、第3ヌンを任されながらも元々保守的な思想が強く、外部とも最低限の交流しかしてこなかった兄からは「一族よりも他種族にうつつを抜かした冒険者風情が」と冷たくあしらわれ、取り付く島もありませんでした。
 突然の環境変化と、それに伴うコミュニティの崩壊。軋轢は誰のせいでもなかったけれど、誰にも止められなかった。ならばせめて、どんな形でもいいから一族を存続させる方法を模索しよう。
 チャ・ヴァノは一人のヌンとして、無理に迎合するよりも距離を取る道を選びました。それが将来的に、一族のためになるはずだと信じて。

 最後に会えた父は、ルヒティロナの青い髪を見て「あぁそのヒトがお前の見た空なんだな」と溢し、チャ・ヴァノ・ヌンの覚悟と旅立ちを祝福してくれました。ヴァノにはただ、その言葉だけで充分だったのです。













 これはあくまで、新生時点でのお話。時勢の移り変わりと共に、事態は刻一刻と変わっていきます。
 ヴァノがチェスター達と親しくなったことで、父親の病に特効薬がある事が判明。兄に叱責され罵倒されるのも辞さない覚悟で薬を届け、父親は一命を取り留めました。第2ヌンの病状が快方に向かっていくにつれ、頑なだった兄の思考や態度も軟化。本来の第3ヌンとしての役割を全うしようとするようになります。
 また、この一件から一族全体でコミュニティの在り方を見直そうという声が多数上がり、チャ・ヴァノ・ヌンの元を訪れる者が増えました。第2ヌンの病だけに限らず、集落外とのコミュニケーションが活発になれば解決できることが増えるのだと、一族の認識が高まったためです。同時に、第3ヌンだった兄を第1ヌンに、ヴァノを第3ヌンに据えようという声も高まっていきました。
 居住地はバーニングウォールからドライボーン方面へ。錐峰ヶ原を居住地にする案も出たようですが、コミュニティが半壊した状態のままでは危険すぎるという判断がなされ、チャ族の現在の集落拠点はゴールドバザーになっています。
 一族に訪れた大きな転機がそのまま、ヴァノの在り方の証明になりました。彼が一族に、新しい風を運んだのです。

 ヴァノは今でも父兄や一族とは合流しないまま、それでもチャ族の第3ヌンとして東西に別れてコミュニティを運営しています。ヴァノも、ヴァノの兄も、一族の未来を大切に考えていたのはまごうことなき事実であったし、その想いは一族の誰の目から見ても明らかだった、という事でしょう。
 たとえコミュニティの形が変わり、遠く離れてしまったとしても、同じ空を目指し飛ぶことは出来るのだと。チャ・ヴァノ・ヌンはその生き様で確かに証明してみせたのです。
 彼は父兄にも歴代のチャ族長たちにも決して劣らない、一族を運ぶ大きな翼となりました。