あがれす@ばんちゃ
2021-11-23 00:03:29
4037文字
Public チェスター夫妻
 

いい夫婦の日

いい夫婦の日だったのでエルルとチェスターに馴れ初めを語ってもらいました。それぞれの口調のためちょっと読みにくいです

エルル
 私の家族も元々モードゥナで商いをしていたの。仕事の都合でウルダハに移ったけど、チェスターがジェーンの事を好いてるのは知ってたし、ジェーンの方もまんざらじゃない雰囲気だったからずっと応援してたのよ。ジェーンが冒険者として旅立ったって連絡を受けたときは驚いたけど、彼女の昔からの夢だったから……あぁ、やっぱり行っちゃったのか、って不思議と納得していたわ。二人が別々の生き方を選んでしまったのは、少し寂しかったけどね。

 それからしばらくして、チェスターもウルダハに……体調の都合でね。フロンデール薬学院でしばらく静養してて、その間にも色々と勉強して。私もときどきお見舞いに行ってたけど、伏せっていない時はほとんど書物に齧り付いて、お医者さまと話し込んだり、ご両親とも独立の話をしたりしていて……それを見てるうちにこう、「私が支えてあげなきゃ!」ってなっちゃって……。でも、チェスターがどうしてそこまで頑張ろうとしてるのか分かってたから……だから結局、私はそのとき、何も言えなかったの。

 体調が安定して仕事に復帰してからも、チェスターは独立するための勉強と、周りの説得を続けていたわ。二年ぐらい経って、ようやく頑張りが認められて……さぁこれからだ!ってタイミングで、また体調を崩しちゃって……恥ずかしい話だけど、「ようやく認められたのに!」って、チェスターよりも私の方が悔しくなって泣いちゃったの。チェスター、すごく驚いてたわ。どうして僕のことでエルルが泣くんだ、って。だって、ずっと頑張ってたのに。そう言ったら、目を丸くして押し黙って……ずっと傍で支えてくれてたんだねって、屈んでくれたの。
 私たちララフェル族にとって、相手のために目線を合わせるというのはとても……とても大切な意味を持つ行為なの。付き合いも長くて、ザナラーンで商人をしてるチェスターがそれを知らない訳がなかった。だから本当にびっくりして……涙も引っ込んじゃうぐらいだったわ。

「僕はジェーンや君みたいに走れない。自分の道ですら、ゆっくりとしか歩めないんだ。それでもそれでもいいなら、僕と一緒になってくれないかな、エルル」



チェスター
 身体に違和感を感じたのは……十二歳の頃だったかな。小さい頃から病弱ではあったんだけど、一緒にかけっこをしていたジェーンとエルルに、どう頑張っても追いつけなくてね。その頃は単純に、二人と性別も種族も違うからだと思ってた。でも、それから頻繁に熱が出るようになったり、逆に体温が下がったり、思うように身体が動かなくて寝たきりになる日が増えていってね……
 ベッドの上でも本を読んだり勉強したりは出来たけど、やんちゃな二人が僕の知らないところで怪我をして帰ってくるのをただ待っている事しか出来ないのが、すごく嫌で……一度無理をして、早霜峠まで行く二人に着いていこうとしたことがあったんだけど、途中で動けなくなってしまって……二人からも、大人たちからもひどく叱られたよ。

 エルルがウルダハに移ってから、ジェーンの怪我は増えていった。今思えば、あの頃からモードゥナを訪れてる冒険者たちに稽古をつけてもらっていたんだろうね。僕の体調は相変わらずだったけど、お医者さんや薬を届けてくる行商人たちにも色々と教えてもらって、傷だらけで帰ってくるジェーンの手当をしたりしていた。……僕には本当に、それぐらいしか出来なかったから。だからもっと手軽に、誰でも気兼ねなく“治療”が行えるような……そんな世の中にならないかなって、そう思ってたんだ。

 傷だらけで帰ってくるジェーンを手当する日々も、そう長くは続かなかった。……今でもはっきり覚えているよ。体調が少しマシになって、ジェーンに付き添われて散歩に出た日。彼女の口から「冒険者として旅に出る」と告げられたんだ。……いつかそう言われる日が来るのは分かりきっていたし、覚悟もしていた……そのつもりだったんだけどね……

 ……僕の病状に興味を持った錬金術ギルドのヒトが来たのは、ジェーンが旅立った後だった。あれこれ質問されて、よく判らない機械で何かの計測もされて……そうしたら、どうやら僕のこの症状は病気なんかじゃなくて「他のヒトよりも体内エーテルが少なくて、周囲の環境エーテルの影響を受けやすいのが原因じゃないか?」って言われたんだ。
 今でもピンと来てない話だけど、早霜峠に向かう途中で動けなくなったのを思い出してからは何となく合点がいったよ。体温の上がり下がりも、身体が思うように動かなくなったのも……氷の環境エーテルの影響を受けていたんだって。

 そのヒトが随分親身になってくれて、少しずつだけど症状は軽くなっていった。そうして、他にも色々と話をしているうちに僕の中で「“治療”は出来ないかもしれないけど、“医療”を広めることは出来るんじゃないか」って思いが強くなっていったんだ。僕自身、症状は改善できても、完治するわけじゃなかったからね……でも、ジェーンのように怪我の絶えないヒトや、僕と似たような症状のヒトがどこかにいるかもしれない。そういう人達が、少しでも楽になれたら。
 そのためにも、まずは自分の体調を安定させて、行商をしていた両親とも話をしなきゃいけない……モードゥナを離れて、治療に専念しないといけなかった。

 僕がフロンデール薬学院で静養していた話と、二年ほどかけて商談がまとまった矢先に倒れた話は、エルルには聞いたかな……彼女にはずいぶん迷惑と心配を掛けてしまって。本当に、自分のことでいっぱいいっぱいだったんだ。彼女はこんな僕を、ずっと気にかけてくれていたのに……。僕の方はもう一生この体質と付き合っていかなきゃならないって割り切っていたんだけど、彼女の方が急に泣き始めて「ずっと頑張ってたのにようやく認められたのに!」って言われてね。情けない話だけど、そこではじめてエルルの気持ちに気付いたんだ。
 ずっと傍で見てきた誰かを支えたくて、でも思うようにならなくて、すごく悔しい思いをする……エルルは僕と同じ想いを持ってて、それを僕に向けてくれてるんだって。その時になってはじめて気付いただなんて、本当に情けない話なんだけど。
 好意を寄せてくれたエルルの想いに、僕も答えたいと思ったんだ。

「私とジェーンが走れたのは、待っていてくれる貴方がいたおかげよ。チェスター、今度は私に、貴方の歩みを支えさせて」












【チェスターの体質と症状についての補足】
「病弱だから体内エーテルが少ない」のではなく、「体内エーテルが少ないから病弱」になってしまっている。
 ある錬金術師の推測通り、環境エーテルの影響を極端に受けやすい体質のために、モードゥナに在住していた幼少期は氷の環境エーテルで体温が下がって動きが鈍くなり、雷の環境エーテルで痺れが出て動けなくなってしまっていた。
 エーテルの伝導率を上げる水薬(※魔導書用のインクの作成技術を流用したもの)を服用する事で問題なく動けるようになり、ウルダハに移り住んだことで症状が一時的に改善されたが、時間軸が漆黒に近づいていく毎に【第一世界の統合】が始まりつつある影響で体調が悪化する。
 新生時間軸でジェーンが海都へと高飛びしたときは杖をついてどうにか歩ける程度だったが、蒼天〜紅蓮ではベッドから起き上がれなくなり、漆黒では再びフロンデール薬学院へと入院してしまう。
 頬にある白いそばかすは薬疹のように見えるが、実態としては第一世界の旅立ちの宿の人達に見られる「罪喰い化」の兆候のそれ。第一世界のハルリクほどではないが、反応が鈍くなりベッドの上で微睡んでいる事が増える。



※漆黒のストーリー上で明かされた「統合された世界の分だけ魂も統合されている」=「魂のエーテルが濃くなる」が、ヒカセン以外のNPCや原初世界に生きるヒト達にも適用されているのでは?と考えたためこのような設定に。
 何らかの要因で統合された魂が平均よりも少ないために体内エーテルが少なく、環境エーテルの属性バランスが偏ってても体調を崩しやすいのに、第一世界の光のエーテルが徐々に統合されかけていたため身体が動かなくなっていく。という設定でした。

 容態が不安定な日々が続き、エルルがジェーンに「チェスターが危ないかもしれない」と涙ながらに連絡を取っていた頃、見知らぬ赤毛のロスガル族が見舞いに訪れ、その後チェスターの容態が急変。今までの日々が嘘のように体調が安定し、ジェーンが慌てて見舞いに訪れた時には日常会話ができるほど回復している。というストーリーが存在します。

  漆黒本編で光のエーテルを吸収しすぎて魂が崩壊しかけ、罪喰いのような化け物に成り果てる可能性を示唆されたアガレスが「せめて何か残してやりたい。あいつのために、何か……」と考えた末に、誰にも告げす無理を押して一時的に原初世界へと帰還。チェスターの体内で偏ってしまっていた光のエーテルを大罪喰い討伐時のように吸収し、容態が安定したのを見届けてから誰とも会わずに再び第一世界へ戻っていく。という草案がありました。(メイン上隙間時間がないので草案として供養)
 過去視で見ていたジェーンの幼馴染に、彼女の今後を託したい……今の自分で叶うのならば、最後に何か、ジェーンの大切なものを守ってやりたいと考えたのです。






※この下は暁月で追記した小ネタです。メインのネタバレも含んでるよ






「絶望すると終末の獣に成り果て、その絶望は連鎖する」まではうちに絶望する人たちなんか居ねぇし!!!!!!となってましたが、「エーテルが薄いほど星外からの負のデュナミスの影響を受けやすく終末現象が発現しやすくなる」が出てきた瞬間に発狂しかけた。おおよそ察してくれ。