あがれす@ばんちゃ
2021-11-08 05:27:15
889文字
Public 一縷の光
 

一縷の光 序

ウルダハで起こったある騒動。その序章。

 色褪せたレンガの壁に、覗き窓のついた簡素な扉。明かり取りの窓などは一切ない薄暗い室内に、三人の人影がうずくまっています。
 長身の女性は長い足を抱え込むように、ウサギのような耳を生やしたヒトは崩した胡座に頬杖をついて、角としっぽのある少女は、どこか、ぼぅっとした様子で虚空を眺めておりました。
 部屋の中は埃っぽく、かすかに鉄サビのような匂いがします。

 時折、部屋の外から話し声が聞こえてくることがありました。木製の扉についた覗き窓越しに、誰かと目が合ったような気がした事もあります。それでも三人は声も出さず、身じろぎもしませんでした。
 三人とも、いつからそうしていたのか、自分たちがどこから来たのか、どうにも分からなくなってしまっていたのです。

 ある日、今まで聞こえてきた中でもひときわ上機嫌な声が、少しずつ大きくなって近付いてきました。
 声は扉の前で止まり、覗き窓からの光が遮られます。何やら大きな影が、部屋の中の三人をじっくりと見定めているようでした。
「御眼鏡にかなえば」「では三人とも」扉の向こうから二人分の声が聞こえ、何やらガチャガチャと音がしました。それでも三人は動くどころか、扉の方に視線をやる事すらしません。

 扉が開き、埃っぽい鉄サビのような匂いが薄れていきます。差し込むはずの光が届かないのは、扉の前に大柄な男性がいるからでしょう。
「今は三人ともこんな調子ですが、旦那様の元ならすぐにでも働けるようになりますよ」
 大柄な男性の足元をすり抜け、髭をたくわえた小柄な男性が近付いてきます。手には清潔そうな白い布と、湯気の立つマグカップを持っていました。
 小柄な男性は、扉に一番近かった角としっぽのある少女にマグカップを差し出し、一口飲みなさい、と声を掛けます。やや間を置いて少女が一向に動かないのを確認してから、小柄な男性はマグカップを置き、布を握った手で丁寧に角と顔の鱗を拭いていきます。最初から、反応がない事は承知の上だったのでしょう。

 そこでようやく、少女はゆるゆると視線を上げ、薄青色の瞳を


扉の方へと向けました。